トランプ氏の「チップ無税」計画がもたらす波紋:ポッドキャスターやインフルエンサーにも拡大
2025年9月、アメリカのドナルド・トランプ元大統領が発表した「チップに対する課税廃止」政策案が、多方面で大きな注目を集めています。
この計画は従来の飲食業界やサービス業だけでなく、ポッドキャスターやインフルエンサー、ゴルフキャディーといった多岐にわたる職種にまで対象が広がる見込みで、その影響や課題について多くの議論が巻き起こっています。
トランプ氏の「チップ無税」構想とは
今回発表された構想の要点は、従業員が受け取る「チップ(心付け)」を非課税とし、最大で年間25,000ドル(日本円で約370万円)までが対象になるというものです。
この措置によって、サービス業の労働者にとってはかなりの減税効果が期待され、新たに68種類の職種が適用対象と見込まれています。
- 従来対象だったレストランやホテルの従業員のみならず、ゴルフキャディー、UberやLyftなどの配車サービスのドライバー、さらにはデジタル分野のポッドキャスターやインフルエンサーにも適用
- 上限額は年間25,000ドル
- 現金だけでなく、アプリ経由やオンラインで受け取る「デジタルチップ」もカバーされる見込み
なぜ今「チップ無税」なのか?
アメリカではチップ文化が根強く、コロナ禍以降、キャッシュレス化や配達サービスの普及を背景に、チップの種類や受け取り方が多様化しています。新しい働き方として、ポッドキャストやSNSで活躍するクリエイターも、リスナーやフォロワーから「投げ銭」形式で収入を得るケースが増加しています。
また、インフレや賃金上昇の遅れによる生活の厳しさを訴える声に対し、現場の勤労者支援の色合いが強い政策でもあります。一方で減税財源の問題や、公平性をめぐる懸念も指摘されています。
68職種に及ぶ広範な適用範囲
この政策の大きな特徴は、伝統的なサービス業だけでなく、デジタル経済やパートタイム・副業層にも波及することです。代表的な該当職種には次のようなものがあります。
- レストランやカフェのウエイター、バーテンダー、ホテルスタッフ
- ゴルフキャディーなど接客・スポーツ関連の現場職
- 配車アプリ運転手や宅配サービスの配達員
- 美容師、ネイリスト、マッサージセラピスト
- ポッドキャスター・YouTuber・インフルエンサー
┗ SNSやブログを通じて投げ銭、サブスク、提携企業からのギフト等を受け取るケースも増加
なぜポッドキャスターやインフルエンサーも対象に?
従来のチップは店舗やサービス現場で対面でもらうものでしたが、昨今ではデジタル経由の「チップ」や「応援金」が一般化しつつあります。
- リスナー・視聴者から直接支払われる応援金や投げ銭
- ファンコミュニティでのサブスクリプション収入の一部
- ライブ配信やポッドキャスト番組内でのギフト
こうした形の収入が、恣意的な評価や税務申告の複雑さで課題となる中、チップの定義が現代的に拡大していることが背景にあります。
また、正式に職種として認知されることで、ポッドキャスターやインフルエンサーの社会的地位の向上にもつながると期待する声もあります。
日本のポッドキャスター・インフルエンサーにも波及する?
日本国内でも、SNSや音声配信サービス経由で「おひねり」「スーパーチャット」などのチップ文化は普及しつつあり、米国での動向は高い関心を集めています。
特に海外リスナー、ファンを多く持つ日本のクリエイターにとって、現地法や税制変更への対応が必要となる場面も増えてくるでしょう。
課題と論点:公平性や税収減への懸念も
今回の政策案については、期待の一方で以下のような懸念も指摘されています。
- 職種ごとの「チップ」収入の線引きが難しく、抜け道や不公平感が生じる可能性
- 実質上「副業」や「インフルエンサー活動」全般が中途半端に恩恵を受け、既存のサラリーマンや固定給労働者と「税の公平性」を損なう
- 年間最大25,000ドルまでの無税化により、連邦税の税収減が懸念される
また、「チップ」と「営業収入」や「報酬」の区分をどう公的に定義し審査するか、税務ガバナンスの仕組み作りも急務と考えられています。
ポッドキャスト・インフルエンサーマーケットの最新動向
アメリカでは既に数千万人規模のポッドキャストリスナーが存在し、多くの人々がクリエイター活動を通じて副収入を得ています。2022年時点で成人の約8割がポッドキャストを認識しているというデータもあり、今や「インフルエンサー」は単なる芸能人の枠を超え、一般人が日常の中で情報発信し報酬を得る時代となりました。
- 従来のラジオ・テレビに比べ、配信や課金のハードルが下がり、誰でも手軽にスタートできる
- フォロワー数1,000人程度の「ナノインフルエンサー」から、10万人超の「トップインフルエンサー」まで、多彩なクリエイターが活躍
- 企業によるポッドキャストブランド番組やプロモーション活用も拡大しつつある
まとめ:新しい潮流と日本への示唆
ドナルド・トランプ氏の「チップ無税」政策は、デジタル時代にふさわしい新しい経済活動のあり方や、副業・パラレルキャリアの多様性を強調するものとして国際的にも注目されています。
日本でも、ポッドキャストやSNSを使う人にとって「チップ=投げ銭」文化はより身近なものとなってきており、今後はこうした動きから目を離せません。
米国では今、68もの職種にわたって、ポッドキャスターやインフルエンサーを含む「現代のチップ収入労働者」が政策の恩恵にどうアクセスするのか、その実効性や平等性が問われています。
デジタル経済と税制の新たな接点を探る上で、日本社会にも参考となる先進事例となることでしょう。