トヨタ「GR GT」と「GRヤリス MORIZO RR」登場 東京オートサロンで見えたGRブランドの新たな一歩
トヨタのスポーツブランド「TOYOTA GAZOO Racing(以下TGR)」が、2026年の東京オートサロンで大きな話題を集めています。新開発V型8気筒4.0リッターツインターボエンジンと1モーターハイブリッド8速ATを搭載した新型スポーツカー「GR GT」の一般初公開に加え、ニュルブルクリンクで鍛えられたこだわりの装備をまとう「GRヤリス MORIZO RR」が発表される見込みで、GRブランドの“今”と“これから”を象徴するイベントになっています。
新フラッグシップ「GR GT」 4.0L V8ツインターボ+ハイブリッドという新時代の心臓
まず注目したいのが、TGRの新たなフラッグシップモデルとなる「GR GT」です。既に2025年12月5日に世界初公開されたこのモデルは、「2000GT」や「LFA」の系譜を継ぐ、トヨタスポーツの頂点に位置づけられる1台として開発が進められています。
ボンネットの下に収まるパワートレーンは、トヨタが新開発した4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンと、1モーターのハイブリッドシステムを組み合わせたものです。システム全体で最高出力650ps以上、最大トルク850Nm以上という圧倒的なスペック(いずれも開発目標値)を誇り、最高速度は320km/h以上に達するとされています。FR(フロントエンジン・リヤドライブ)レイアウトを採用し、「公道を走るレーシングカー」をコンセプトに開発が進められています。
エンジン本体や骨格にはオールアルミ構造が採用され、軽量かつ高剛性なシャシーと高出力パワートレーンの組み合わせにより、サーキット走行からワインディングまで高いポテンシャルを発揮することが期待されます。ボディサイズは全長4,820mm×全幅2,000mm×全高1,195mmのワイド&ローなプロポーションで、乗車定員は2名というピュアスポーツらしい構成です。
東京オートサロン2026で一般初公開 「GR GT3」とあわせて展示
このGR GTは、2026年1月9日から11日まで幕張メッセで開催される「東京オートサロン2026」で、一般向けに初めて公開されました。TGRのブースでは、同車をベースとしたGT3規格のレーシングカー「GR GT3」も同時に展示され、いわば「市販モデル」と「レーシングモデル」が並ぶ形で、GRブランドの頂点を一般来場者が間近に見ることができる場となっています。
ブースでは、GR GTとGR GT3に共通するオールアルミ骨格や4.0リッターV8ツインターボエンジンのカットモデルも展示され、パワートレーンやシャシー構造を“中身まで”見られるのも大きな見どころです。さらに、会期中にはGR GTとGR GT3によるデモランも予定されており、静態展示にとどまらず、「走り」を通じてその実力をアピールする場も用意されています。
GR GTおよびGR GT3については、TGRが「走る・壊す・直す」を繰り返しながら2027年頃の発売を目指して開発を続けていると公表しており、今回のオートサロンでの一般公開は、そのプロセスの一段階として位置づけられています。
ホットハッチの極致「GRヤリス」に超特別仕様「MORIZO RR」登場へ
一方、同じTGRブースで強い注目を集めているのが、「GRヤリス MORIZO RR(モリゾウ・ダブルアール)」です。既にGRヤリスは、WRC(世界ラリー選手権)で培った技術をフィードバックしたホットハッチとして高い評価を得ていますが、その中でもMORIZO RRは、さらに特別な位置づけのモデルとして企画されています。
「MORIZO」とは、トヨタ自動車会長・豊田章男氏がドライバーとしてレースに参戦する際に使用してきたニックネームであり、TGRの活動を象徴する名前でもあります。MORIZO RRは、その豊田会長自らのこだわりが込められた装備を多数採用し、「自分が本当に欲しいGRヤリス」を形にしたようなコンセプトで開発された“超特別仕様車”です。
このモデルは、ニュルブルクリンクなど世界中のサーキットや公道でのテストを通じて鍛え上げられており、標準のGRヤリスよりもさらに高い走行性能と、ドライバーとの一体感を追求したセッティングが施されているとされています。
「モリゾウモード」を備えたドライビングモード? 特別な走りの味つけ
MORIZO RRで特に話題になっているのが、ドライビングモードに「モリゾウ」モードとも呼ばれる特別なセッティングが用意される、という点です。詳細な制御内容は順次明らかになっていく段階ですが、加速レスポンスやステアリングフィール、4WD制御、トラクションコントロールなどが、豊田会長の好みに合わせてきめ細かくチューニングされているとみられています。
標準モードやスポーツモードに加えて、よりアグレッシブかつ、サーキット走行を意識した特別モードが「モリゾウモード」として設定されることで、同じGRヤリスでも、より「人とクルマが一体になって走る楽しさ」を味わえる方向性が打ち出されています。
「MORIZO」ブランドはこれまでもGRヤリスの特別仕様やコンセプトカーなどで何度か用いられてきましたが、今回のMORIZO RRは、ニュルで鍛えられた実戦的なフィードバックと、豊田会長自身の強いこだわりを結実させた、ひとつの集大成的な存在と言えるでしょう。
ニュルブルクリンクで鍛えた「こだわり装備」の数々
GRヤリス MORIZO RRには、ニュルブルクリンクでの走行テストを通じて磨き上げられた専用装備が多数盛り込まれるとされています。具体的な装備の内容は、軽量化されたホイールやハイグリップタイヤ、専用チューニングのサスペンション、補強が施されたボディ剛性向上パーツ、専用のブレーキシステム、そして走行時のフィードバックを高めるためのシートやステアリングなどが想定されます。
ニュルブルクリンクは、長い直線、高速コーナー、路面のうねりやバンピーな区間など、さまざまな状況が複雑に入り交じる世界でも屈指の難コースとして知られています。ここで鍛えられたクルマは、「限界性能」だけでなく「安心して攻められる領域」の広さにも優れていることが多く、MORIZO RRもまた、そうした“扱いやすさと速さの両立”を目指して仕上げられていると考えられます。
豊田会長はこれまで、「クルマはスペックだけで語れない。ドライバーが楽しいと思えるかどうかが大切だ」というメッセージを繰り返し発信してきました。MORIZO RRのこだわり装備は、まさにその思想を体現するものと言え、数値上の性能だけでは測りきれない“味”や“楽しさ”を求めるファンにとって魅力的な一台となりそうです。
東京オートサロンで「GR GT」と「GRヤリス MORIZO RR」が共演する意味
今回の東京オートサロンでは、TGRブースにGR GTとGR GT3、そしてGRヤリス MORIZO RRをはじめとする特別なGRモデルが一堂に会しています。これは、トヨタのモータースポーツとスポーツカーづくりの“現在地”を分かりやすく示す構成とも言えます。
- GR GT/GR GT3:V8ツインターボ+ハイブリッドという最新テクノロジーを注ぎ込み、トヨタスポーツの頂点を担うフラッグシップ
- GRヤリス MORIZO RR:WRCで鍛えたホットハッチを、ニュルと豊田会長のこだわりでさらに磨き上げた「人馬一体」志向の特別仕様
この2つのモデルは、性格も価格帯も大きく異なりますが、「モータースポーツで鍛えた技術を市販車にフィードバックし、クルマ好きに“走る楽しさ”を届ける」という点では共通しています。大排気量V8+ハイブリッドのスーパースポーツから、コンパクトな四輪駆動ホットハッチまで、幅広いアプローチでクルマ好きのニーズに応えようとしているのが、現在のGRブランドの特徴とも言えるでしょう。
「GR GT」と「GRヤリス MORIZO RR」が示すGRブランドのこれから
環境性能や電動化が自動車業界全体の大きなテーマとなる中で、TGRは「走る楽しさ」を決して手放さない姿勢を鮮明にしています。GR GTが採用する4.0リッターV8ツインターボ+1モーターハイブリッドという構成は、単にパワーを追求しただけのシステムではなく、ハイブリッド技術を駆使してレスポンスやトルク特性をきめ細かく制御し、「運転して楽しい」特性を実現しようとする試みです。
一方、GRヤリス MORIZO RRのような特別仕様は、既存の車種に対しても、ニュルでのテストやドライバー目線のフィードバックを通じて「走る楽しさ」をさらに高めていけることを示しています。これは、GRブランドのユーザーにとって、「これからも進化し続ける余地がある」という安心感にもつながる取り組みと言えるでしょう。
東京オートサロンというカスタムカーとモータースポーツの祭典の場で、GR GTとGRヤリス MORIZO RRが同時に披露されることは、「トヨタはこれからもクルマ好きのためのクルマをつくり続ける」という強いメッセージとも受け取れます。スペックシートの数字だけではなく、サーキットやワインディングで感じる一体感や楽しさを大切にする姿勢こそが、TGRの“らしさ”であり、今回の2台はその象徴的な存在になっています。
今後、GR GTの市販仕様やGRヤリス MORIZO RRの詳細スペック、販売方法などが段階的に明らかになっていくとみられます。クルマ好きにとって、しばらくはTGRから目が離せない状況が続きそうです。




