トヨタ「ウーブン・シティ」ついに開業!実証都市が拓く未来のまちづくり

1.ウーブン・シティが静岡県裾野市で正式開業

2025年9月25日、トヨタ自動車が手掛ける実証都市「ウーブン・シティ(Woven City)」が静岡県裾野市で開業しました。富士山のふもと、トヨタ自動車東日本・東富士工場の跡地に生まれた全く新しい街です。

ウーブン・シティは「モビリティのハック」や様々な先端技術の実証実験を通じて、社会課題を解決し未来の豊かな都市を目指します。豊田章男会長の強いリーダーシップのもと、長年にわたって準備されてきたプロジェクトです。
2020年のCES(世界最大級のIT家電見本市)でその構想が発表され、2021年に起工式、2024年秋には第一段階(Phase1)の街区が完成。2025年秋より正式な住民受け入れが始まりました

2.なぜウーブン・シティを作るのか

ウーブン・シティは「あらゆる新しいプロダクトやアイデアを発明・開発できる場」として設計されています。単なる新しい住宅地やオフィスビル群ではなく、

  • 自動運転車両や次世代モビリティ(移動手段)の実証
  • ロボット、AI(人工知能)、スマートホーム技術など生活・産業を革新するアイデアの実験
  • エネルギー、物流、防災、医療、教育といった社会インフラの新しい形の探求

を主な目的に掲げています。これらの新技術を現実の街で検証し、社会課題を解決するソリューションにつなげることが目標です。

3.街の構造と“モビリティ”の実証実験

第一段階(Phase1)で公開されるエリアは約4万7,000平方メートル。今後拡張され、フルサイズでは約70万8,000平方メートルという国内最大級の実証都市になります。

街の構成は特徴的です。例えば道は用途別に「人専用」「モビリティ専用」「配送・物流専用」と多層構造になっており、自動運転車両や物流ロボットが安全に実験できる都市設計となっています。建物は最新鋭のデジタルテクノロジーで管理され、環境配慮や防災にも力が入っています。

このような複合的な仕組みを一つの街としてリアルに組み上げ、「理想の都市の在り方」を世界に先駆けて模索しているのがウーブン・シティの最大の特徴です。

4.どんな人たちが住み、関わるのか?

開業当初の住民はトヨタ及び関係者とその家族、およそ100名程度でスタートし、今後は最終的に第1フェーズだけで約360名、全体で2,000名規模に拡大する計画です。将来的には多様なバックグラウンドを持つ

  • スタートアップ企業
  • 起業家・研究者
  • 大手企業のプロジェクトチーム
  • 大学・研究機関
  • 様々な「発明家(Inventors)」

が街の一員となることを想定しています。

住民や企業は実証実験に参加し、生活者目線でのフィードバックを提供。これが“リアルな社会実験”を支えるエコシステムとなっています。「1つの都市そのものが巨大な実験場」というビジョンがここに表れています。

5.どんな実証やプロジェクトが計画されているか

ウーブン・シティでは、既に日本を代表する企業やスタートアップの参加が発表されています。たとえば、

  • ダイキン工業や日清食品、ENEOS、日本電信電話、UCCジャパン、リンナイなど、生活インフラやエネルギー、食品、流通業界の企業
  • 将来的には住民自身も実証実験や新サービス開発に関わる

といったかたちです。

具体的なプロジェクト例は以下のとおりです。

  • 自動運転車両の走行データ取得と安全性検証
  • 物流ロボットによる宅配サービスの効率化・無人化の実験
  • スマートホーム技術を用いた省エネルギー住宅・高齢者見守りシステム実装
  • AI活用による都市のエネルギーマネジメント、緊急対応力の向上
  • デジタル通貨やキャッシュレスシステムの試験運用
  • 医療支援ロボットや在宅医療高度化の検証

これらすべてが“ただのオフィスや実験室の中での実験”ではなく、「街」というリアルな生活空間のなかで、住民を巻き込んで進行していくことが大きな特徴です。

6.「ウーブン・シティ・チャレンジ」とは?

ウーブン・シティでは、「モビリティを“Hack”せよ」という合言葉のもと、スタートアップや個人、研究者が自由に発想を持ち寄るオープンな実証プラットフォームもスタートします。これが「ウーブン・シティ・チャレンジ」と呼ばれる取り組みです。

  • 2025年夏にはアクセラレータープログラムを募集
  • 選ばれたチームはウーブン・シティで自らの技術やビジネスの実証を行える
  • トヨタや多様な大企業との連携も目指せる

この制度を通じて、未知の事業・社会変革の芽がウーブン・シティから次々誕生することが期待されています。

7.未来都市への挑戦と今後の展望

ウーブン・シティは「都市のインフラと社会システムそのものを根本から変える壮大な実験」だと言えます。巨大な自動車メーカーであるトヨタが、人・車・街の関わり方をゼロベースで再設計し、

  • CO₂削減や防災力向上
  • 超高齢社会問題への対応
  • 人の暮らしの質向上・ウェルビーイングの探求

など、現代社会が抱える様々な課題へのリアルな解決策を提示しようとしています。

「ものづくりの会社から、社会をつくる会社へ」。トヨタによるこの大胆な挑戦は、企業単体の事業枠を超えて、日本発の未来都市、日本型スマートシティの代表例として国内外で注目を集めています。

ウーブン・シティの時折の出来事・実証プロジェクトは、今後日本中、世界中の都市計画やまちづくりプロジェクトへ波及していくことでしょう。

ビジター受け入れは2026年度から順次開始され、さらに多くの人・企業・研究者が現地を体験できる環境になる予定です。

8.まとめ:ウーブン・シティは“都市の未来そのもの”を問い直す

ウーブン・シティの開業は「モビリティ」や「テクノロジー」の実証だけではなく、人々の暮らし方や、都市の将来像そのものを再考する壮大な社会実験です。都市スケールでの様々な“チャレンジ”を推進し、新たな未来づくりの場となっていくことが期待されています。

トヨタ発の“次世代都市づくり”はまだ始まったばかり。これからのウーブン・シティとそこに住む人々の実験的挑戦に、ぜひご注目ください。

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