東京科学大学 雨宮智宏准教授が「GTIE GAPファンドエクスプロールコース」に採択 — 次世代光電融合技術で未来を切り拓く
2025年10月29日、東京科学大学 工学院 電気電子系の雨宮智宏准教授の研究テーマが、Greater Tokyo Innovation Ecosystem(GTIE)「GAPファンド エクスプロールコース」第3回(2025年2期)に採択されたことが発表されました。このプログラムの事業化推進機関にはみらい創造インベストメンツが指定され、今後は研究成果の社会実装とスタートアップ創業に向けた支援が本格化します。
採択された研究テーマの概要
雨宮准教授が挑戦するのは、「マルチコアファイバとフォトニックワイヤボンディングを基盤とした次世代光電融合パッケージ技術(Next-CPO)の開発と事業化」です。このテーマは、通信・データセンター分野における高速化・超省電力化を実現する鍵技術と位置づけられており、今後の情報社会を支えるイノベーション創出の核となることが期待されています。
- マルチコアファイバ:1本の光ファイバの中に複数の独立した光の通路(コア)を持たせることで、飛躍的な大容量伝送を可能とする次世代通信インフラ構造
- フォトニックワイヤボンディング:光回路同士を直接・高精度につなぐことで、電気信号では実現し得ない帯域と低遅延を提供する最先端技術
- 光電融合パッケージ(Next-CPO):電子回路と光回路を集積し、微細な配線や複雑な光デバイスを一体化することで、システム全体のパフォーマンスを一新
GTIE GAPファンドエクスプロールコースとは
GTIE GAPファンド エクスプロールコースは、大学の先端技術や独創的な研究シーズを、実社会での事業化へと橋渡しするための成長支援プログラムです。研究者や学生が起業を目指す際に直面する「死の谷」(研究開発と事業の間に存在する資金や人材、ノウハウの不足等のギャップ)を埋め、概念実証(PoC=Proof of Concept)や市場性評価を行うための研究開発費(GAPファンド)が提供されます。
更に、ビジネス化を支援するためのメンターや事業化推進機関が一体となって支える体制が特徴です。最終的には、投資家による判断レベルにまで事業計画を磨き上げ、スタートアップ創業やベンチャーキャピタルからの投資呼び込みを目指します。
みらい創造インベストメンツとの連携
事業化推進機関として採択されたみらい創造インベストメンツは、技術系大学発スタートアップ支援に実績のあるベンチャーキャピタルです。雨宮研究チームと共に、下記のような対応を進めていきます。
- 知的財産権の取得・活用戦略策定
- 特許出願や研究成果の社会実装方法の検討
- 連携先産業界・パートナー企業との橋渡し
- プレゼンテーション・資金調達スキルの強化支援
- 実証実験や事業計画立案
キックオフイベントでは、採択研究者同士やスポンサー、メンターとの交流も行われ、ネットワーク形成と切磋琢磨の場が提供されました。
本研究テーマの社会的意義と期待
近年、AI、ビッグデータ、IoT等の進展により、世界中でデータトラフィックがかつてない勢いで増大しています。こうした中、従来型の電気配線主体のデータ伝送では限界があり、高効率かつ高速処理を担う光インタコネクト技術への期待が高まっています。
雨宮准教授の「次世代光電融合パッケージ技術(Next-CPO)」は、次のような社会的利点をもたらします。
- データセンター等の大規模演算施設での省エネルギー化・省スペース化
- 次世代通信インフラ(6GやBeyond 5G)のコア技術としての発展
- 様々な産業分野で求められるリアルタイム・高速データ処理基盤への応用
- 日本発の先端技術による国際的な産業競争力強化
採択された他大学の注目研究と大学間連携
今回のGTIE GAPファンド エクスプロールコース第3回(2025年2期)では、雨宮准教授のほか、横浜市立大学 梅村将就准教授による「交流磁場で治す脳腫瘍治療装置の開発」など、各分野の注目研究が同時に採択されています。
多様な大学や研究所による技術が同じGAPファンドで育成されることで、横断的な連携・知見の共有も進み、イノベーション・エコシステム全体の底上げに寄与しています。
研究代表者プロフィール
- 氏名:雨宮 智宏(あめみや ともひろ)
- 所属:国立大学法人 東京科学大学 工学院 電気電子系 准教授
- 専門領域:光通信、集積光電子デバイス、超高速伝送技術 など
- 主な研究テーマ:光電融合パッケージ技術、マルチコアファイバ、フォトニック集積回路
今後の流れと展望
本格的な事業化検討はこれからが本番です。今後は、研究開発の概念実証(PoC)やパイロットスケールでの試作品製作、市場・産業界との連携検討など、実社会への実装に向けた取り組みが進められます。また、GAPファンド終了後はベンチャーキャピタルによる評価・資本投入を受けて、本格的なスタートアップ創業や事業展開へとつなげていく計画です。
技術革新を通じて、研究成果を社会に還元していく東京科学大学および研究チームの動向から、今後も目が離せません。
関連:GTIE GAPファンド エクスプロールコース第3回(2025年2期)採択テーマ一覧
- 次世代透析治療に向けたインプラント人工腎臓の実用化と国際展開(慶應義塾大学)
- ミトコンドリア内翻訳賦活化創薬(理化学研究所)
- マルチコアファイバとフォトニックワイヤボンディングを基盤とした次世代光電融合パッケージ技術(Next-CPO)の開発と事業化(東京科学大学)
- 指定難病である心筋症の新規治療薬の提供に向けて(東海大学)
- “燃えず、劣化せず、応える電池” 革新的な均衡点(=libra)を実現する水系固体電池「LiBra」(東京科学大学)
- “交流磁場で治す”脳腫瘍治療装置の開発(横浜市立大学)
おわりに
今回の採択は、国内の研究者・技術者が持つ高い潜在力を社会に結びつけ、世界を変える起業家精神・技術開発のロールモデルとなるものです。東京科学大学と雨宮智宏准教授の挑戦が、新たな社会インフラ・産業の創出へどのように貢献するのか、引き続き大きな注目が集まります。




