古河電気工業、2025年上期決算―8%増益達成も予想下回る進捗率

2025年11月10日、古河電気工業株式会社(古河電工)は、2026年3月期第2四半期(2025年4~9月)までの連結決算を発表しました。報告によると、経常利益は前年同期比で8.0%増の205億円を記録。着実な増益を果たしたものの、アナリスト予想や通期目標との進捗には課題も残る結果となりました

決算の主なポイント

  • 2025年上期(4~9月)経常利益:205億円(前年同期比8.0%増)
  • 通期予想経常利益:520億円(上期進捗率39.4%、5年平均54.7%と比較して未達)
  • 直近3ヵ月(7~9月)経常利益:127億円(前年同期比6.6%増)
  • 売上営業利益率は前年同期の4.7%から3.4%へ悪化
  • 当期純利益は33,366百万円(2025年3月期実績、前年比+7.9%増)

部門別・事業別の動向

古河電工は、電線・ケーブル事業を中心に、エレクトロニクス関連自動車部品エネルギー分野など多岐にわたり事業を展開しています。本上期もインフラ需要やEVシフトの追い風を受けて、売上・利益ともに安定した推移となりました。しかし中核の電線事業においては、コスト増や素材価格の影響、円安や海外市況の変動も懸念材料となりました。

とくに営業利益率の低下(前年同期4.7%→3.4%)は、原材料コストの上昇や値決め交渉の難航、また一部ラインの歩留まり低下など複合的要因によるものです。このため、「増益着地」の一方で「利益率改善」が今後の重点課題として浮上しています

業績進捗と今後の見通し

  • 通期(2026年3月期)の経常利益予想:520億円
  • 上期終了時点での進捗率は39.4%。過去5年平均進捗率(54.7%)を大きく下回る
  • 会社側は通期予想据え置き、下期(10~3月)連結経常利益は前年同期比6.5%増・314億円の試算
  • 営業利益、純利益ともに前期比増益予想。研究開発投資や設備投資も積極路線

将来の業績については、原材料市況や半導体サプライチェーン、国内建設需要の状況が左右します。古河電工は社会インフラ投資や自動車電装化といった長期テーマへの対応強化を掲げており、AI・IoTなど新規領域への技術開発に資源投入を続けています。一方で資材高騰、世界経済混乱、新規分野への投資負荷といったリスク要因もあります

過去3期の業績推移と財務

決算期 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 1株利益(円) 自己資本比率(%)
2023年3月期 1,066,326 15,441 17,258 15,894 225.80 32.30
2024年3月期 1,056,528 11,171 10,267 6,508 92.40 33.30
2025年3月期 1,201,762 47,097 48,571 33,366 473.49 34.60

この表からも分かるとおり、2025年3月期は売上・利益とも大幅増、財務も安定基調です

株主還元・配当方針

  • 2025年度中間配当:1株あたり60円
  • 2025年度期末配当予想:同じく60円
  • 年間配当予想:120円(安定維持の方針)
  • 純資産・ROEなども上昇傾向、株主還元重視の経営

市場評価とアナリストの見方

古河電工の決算発表後、株式市場やアナリストの反応は複雑でした。増益着地という点では堅実さが評価されましたが、進捗率の低さや利益率悪化に懸念を示す声も見られます。特に、昨今は同業の住友電工フジクラなども業績回復基調を示しており、市場競争の激しさが増しています。

今後、同社が通期増益・目標達成を果たせるかは、コスト管理力新規事業の成長海外展開力にあるとみられています。古河電工自身もこれらの課題認識を明確化し、成長路線と安定収益の両立に積極姿勢を示しています

今後の展望と注目ポイント

  • 下期(10~3月)連結経常利益:前年同期比6.5%増の314億円試算
  • 通期計画(経常利益520億円)達成に向けて、下期の利益率回復が鍵
  • AI・データセンター、EV・エネルギー分野の新規成長が期待される
  • コスト高、市況変動など外部不安定要素へのリスク管理体制の強化も不可欠

投資家・株主へのメッセージ

古河電工は、社会インフラ・グローバルな技術開発で市場を牽引する存在です。本決算では確かな増益を果たしつつも、進捗率や利益率の低下という現実にも正面から向き合い、持続的成長をめざして改革と挑戦を続けています。今後も旺盛な技術開発力を武器に、社会課題解決と企業価値向上に努めていく方針です。

関連情報・参考資料

  • 古河電工公式IR資料(決算短信・プレゼンテーション)
  • 株探・みんかぶ等証券プレス各社による決算速報
  • 同業他社(住友電工、フジクラ等)との比較市場分析

今後も各種発表や業界動向に注目し、詳細は公式IRサイト等をご覧ください。

参考元