テスラ株が1年ぶり高値圏に急伸 ロボタクシー無人走行試験で自動運転期待が再燃
米電気自動車(EV)大手テスラ(Tesla, ティッカー:TSLA)の株価が、ここ数日で急伸し、過去最高値に迫る水準まで上昇しています。
業績面では必ずしも好調とは言えない部分がある中で、市場が強く反応しているのは、同社が進める自動運転技術とロボタクシー(自動運転タクシー)事業への期待です。
テスラ株、業績の伸び悩みをよそに1年ぶり高値水準へ
テスラ株は、2025年12月15日の取引で終値475.31ドルを付け、前日比+3.56%と大きく上昇しました。これは2024年12月以来の高値水準となります。
さらに、16日の取引では、取引時間中に476ドル台まで上昇し、取引時間中の過去最高値を更新する場面もありました。
株価データを見ると、直近のテスラ株は、52週高値488ドル前後に迫る動きを見せており、過去1年のレンジの上限近くで推移しています。
一方で、足元のテスラは車両販売や利益率の面で、市場の期待に届かない四半期が続くなど、本業のEV販売だけを見ると「業績はやや低調」という見方もあります。にもかかわらず株価が最高値圏にあるのは、後述する自動運転・ロボタクシーに対する期待が、それを上回るインパクトを投資家に与えているためと考えられます。
株価上昇の主因は「無人ロボタクシー」試験走行の開始
今回の株価急騰のきっかけとなったのは、テスラのイーロン・マスクCEOによる、ロボタクシーに関する新たな発言です。
マスク氏は週末、米テキサス州オースティンで、安全監視員(セーフティドライバー)を同乗させない完全無人のロボタクシー試験走行を開始したと明らかにしました。
この発言を受け、テスラ株は1日で3%台半ばの上昇となり、投資家の間で「いよいよ本格的な自動運転の実用化が近づいてきたのではないか」との期待が一気に高まりました。
自動運転ソフトウェアを統括するテスラの幹部も、オースティンで運転手のいないテスラ車とみられる動画に反応し、SNS上で「そして始まる!」とコメントするなど、社内外でロボタクシーへの機運が強まっている様子がうかがえます。
自動運転・ロボタクシーへの長期ビジョンが再評価
テスラはこれまでも、「将来的にはテスラ車が完全自動運転のロボタクシーとして稼働する」という構想を繰り返し掲げてきました。マスク氏は、テスラ車が単なるEVではなく、ソフトウェアとAIを活用した自律走行プラットフォームへと進化することで、収益構造が大きく変わると説明してきました。
直近の決算説明会でもマスク氏は、規制当局の承認を前提に「年内に8~10の都市圏でロボタクシーを稼働させる計画」に言及し、さらにオースティンでは「数カ月以内に安全運転手が不要になる」との自信を示しています。
こうした一連の発言や実証実験の進展により、市場では
- EV販売の伸びが鈍化しても、自動運転やロボタクシーが新たな成長源になる
- テスラは「自動車メーカー」から「AI・ロボティクス企業」への変貌を遂げつつある
といった見方が広がっています。これが、直近の株価上昇の原動力となっています。
アナリストも強気レポート 目標株価600ドルの声
今回の株価上昇を後押ししたもう一つの材料が、著名アナリストによる強気なレポートです。
一部アナリストは、自動運転やロボット工学の進展によって、2026年がテスラにとって極めて重要な年になると指摘し、テスラ株の目標株価を600ドルに設定した上で、「買い」評価を維持しています。
また、投資情報サイトの試算では、2025年12月15日時点でテスラ株価は475ドル、52週高値は488ドルとされており、足元の株価は目標株価(391ドル)を上回りつつも、実際の株価は史上最高値近辺にある、といった評価も紹介されています。
こうした強気の将来予測や目標株価が、個人投資家を含む市場参加者の心理を押し上げており、株価の上昇基調を支える要因となっています。
市場は「足元の業績」より「将来の成長余地」に注目
一方で、テスラの足元の業績を冷静に見ると、EV市場全体の競争激化や値下げの影響などから、利益率の低下や成長ペースの鈍化を懸念する声もあります。
しかし、現在の株式市場では、
- 短期的な利益の伸び悩みよりも、ロボタクシー事業が実現した場合の巨大な市場規模
- 自動運転ソフトウェアやAI関連サービスによる、サブスクリプション型ビジネスの可能性
などに目を向ける投資家が増えています。
テスラ株は2024年12月に付けた史上最高値をわずかに下回る水準まで戻してきており、年初来で約18%上昇AIや自動運転のプラットフォーム企業としての期待が株価に織り込まれつつあることを示していると言えます。
無人走行はまだ「試験段階」 安全性や規制リスクも
もっとも、テスラのロボタクシー構想が、すぐに収益に結びつく段階に来ているわけではありません。
現在オースティンで行われている無人走行はあくまで試験走行であり、大規模な商用サービスには、各地域の規制や安全基準のクリアが不可欠です。
また、自動運転を巡っては、世界各国で安全性への懸念や法整備の遅れが指摘されており、テスラも過去に自動運転支援機能を巡る事故や調査を経験してきました。
そのため、市場には
- 自動運転の完全実用化には想定以上の時間がかかる可能性
- 規制強化や事故発生により、計画が遅れるリスク
を意識する慎重な見方も残っています。
今回の株価上昇についても、「期待先行ではないか」「将来の成長がかなり織り込まれているのではないか」との声があり、今後のテスラ株は、ロボタクシーの実用化進捗や規制動向に敏感に反応する展開が続きそうです。
個人投資家にとってのポイント
テスラ株に関心を持つ個人投資家にとって、今回の動きから押さえておきたいポイントは次の通りです。
- 株価は1年ぶりの高値圏:475ドル前後まで回復し、取引時間中の最高値を更新するなど、強い上昇トレンドにあります。
- 主役は自動運転・ロボタクシー期待:オースティンでの無人ロボタクシー試験走行開始が、株価上昇の直接材料となりました。
- アナリストの目標株価はさらに上:一部では600ドルの目標株価も示されており、中長期の成長期待は依然として大きいと評価されています。
- 一方でリスクも存在:ロボタクシーはまだ試験段階で、規制や安全性、技術面のハードルが残っています。
テスラは、世界のEV市場をけん引してきた存在であると同時に、AIと自動運転を組み合わせた次世代モビリティの象徴的な企業でもあります。
足元の株価は、そうした「未来への期待」を大きく反映した水準にあると考えられます。
今後も、オースティンでの試験走行の行方や、他都市へのロボタクシー展開計画、各国の規制当局とのやり取りなどが、テスラ株の動向を占ううえで重要なニュースとなっていきそうです。




