テスラが王座陥落、BYDに世界EV販売首位の座を明け渡す
激震が走る世界のEV市場
米電気自動車大手テスラが、世界EV市場で長年保有してきた首位の座を失った。テスラが2日に発表した2025年の販売実績によると、年間販売台数は前年比8.6%減の164万台となり、中国の比亜迪(BYD)に初めて首位を奪われたのだ。BYDの2025年EV納車台数は226万台で、テスラを大幅に上回っている。
特に打撃となったのが第4四半期(10~12月)の販売動向だ。この期間の販売台数は16%減の41万8227台となり、ブルームバーグとテスラが集計したアナリスト予想を下回った。一方、BYDは同じく10~12月も販売台数を伸ばし続け、勢いの差が鮮明になった形だ。
テスラに何が起きたのか
テスラが販売不振に陥った背景には、複数の要因が考えられる。まず、グローバルなEV市場の競争激化がある。BYDをはじめとした中国メーカーが低価格帯から高級車まで幅広い車種を投入し、テスラの独占的な地位を脅かしている。
さらに、イーロン・マスク会長兼最高経営責任者(CEO)率いるテスラは、販売台数の低迷から市場の関心をそらすため、長年取り組んできたロボタクシー事業の進展を強調している。ただし、無人走行の試験は始まったものの、現時点で利用できるのはオースティンとサンフランシスコ湾岸地域での少数車両に限定されている。さらに、両地域でも前席には安全監視スタッフが同乗しており、完全な自動運転には至っていないのが実情だ。
ウォール街の懐疑的な見方
テスラの経営陣による強気な発表とは裏腹に、ウォール街では同社への見方が大きく変わっている。アナリストによる2026年の販売見通しに対して、懐疑的な見方が強まっているのだ。
具体的には、2年前のこの時期にアナリストが予想していた2026年の納車台数は300万台を超えるというものだった。しかし現在の平均予想は約180万台にまで低下している。この120万台以上の下方修正は、テスラの回復見通しに対する市場信頼の大幅な低下を示唆している。
株価は一時的な上昇も先行きは不透明
テスラが販売実績を発表した2日の米株式市場では、同社株は上昇した。ただし、これは一時的な反発に過ぎないとも考えられる。というのも、2025年の最終取引日までの6営業日、テスラ株は連続で下落していたからだ。
BYD躍進の背景
一方、BYDが首位を獲得できた要因は何か。同社は10~12月も販売台数を伸ばし続けるなど、一貫した成長を遂行している。BYDは中国市場でのシェア拡大に加えて、国際展開も着実に進めている。価格競争力と製品ラインアップの充実が、グローバル市場での競争力を生み出しているといえるだろう。
特に注目すべきは、BYDが電池製造から自動車生産まで一貫生産体制を構築していることだ。この垂直統合戦略により、コスト削減と品質管理の両立が可能になり、テスラより低価格でありながら品質を保つことができている。
日本市場でのBYDの動き
興味深いことに、日本市場ではBYDが着実に存在感を拡大させている。2025年11月の新規登録台数は204台で、日本での本格的な事業展開が進みつつある。同社が日本市場で投入している「BYD Atto 3」などのコンパクトSUV型EV は、実用性を重視したボディサイズと十分な航続距離を備えており、初めてEVを検討する消費者にとっても選択肢になりやすいと評価されている。
加えて、BYD製バスの登録も6台あり、乗用車に限らず公共・業務用途を含めた展開も進められている。販売規模は依然として限定的ではあるが、BYDは日本市場で確実に足がかりを築いている。
グローバルなEV市場の構図変化
テスラのEV首位陥落は、単なる一企業の成績不振ではなく、世界的なEV市場の構図が大きく変わりつつあることを象徴している。テスラが開拓したEV市場は急速に競争化し、資金力に優れた大手自動車メーカーや中国の新興メーカーが参入してきた。
特に中国メーカーは、政府の支援政策、低コストの製造基盤、急速な技術開発を背景に、テスラのアドバンテージを急速に蝕んでいる。テスラが過去数年間で確保していた技術的優位性は、もはや圧倒的なものではなくなりつつある。
テスラの今後の課題
今後、テスラが再び市場における主導的な立場を取り戻すには、いかなる戦略が必要か。ロボタクシー事業への投資は長期的には重要だが、短期的な販売回復には直結しない可能性が高い。むしろ、既存のEV事業における製品力強化と価格競争力の確保が急務だろう。
マスク氏が強調するロボタクシー事業も、現在はオースティンとサンフランシスコ湾岸地域での限定的な試験段階に過ぎず、商用化には相当な時間がかかると予想される。その間にも、テスラは競争相手との差を詰められ続けるのである。
まとめ
テスラが世界EV市場での首位を失ったことは、電動自動車産業の急速な成熟と国際競争の激化を物語っている。今後、テスラが競争力を維持するには、革新的な製品開発と効率的な生産体制の維持が不可欠だ。一方、BYDをはじめとした競争相手の台頭は、消費者にとってはより多くの選択肢と価格競争力をもたらす好材料ともいえる。グローバルなEV市場は、新しい局面へと突入しようとしている。



