2025年「冬のボーナス」はどうなる?増加企業22.7%にとどまり“頭打ち感”も

2025年の冬のボーナスについて、各種調査から「全体としては増加傾向だが、その勢いには頭打ち感が出てきている」という姿が見えてきました。特に、帝国データバンクの最新調査では、「冬のボーナスの支給額が前年より増える」と答えた企業は22.7%にとどまり、「増加一辺倒」とは言い切れない状況が浮かび上がっています。

一方で、広島県内など地域ごとの調査では、冬のボーナスが4年連続で増加するなど、プラスの動きも確認されています。この記事では、最新の「2025年冬季賞与の動向調査」や、広島企業のデータをもとに、今年の冬のボーナスの傾向をわかりやすく整理してお伝えします。

2025年冬季賞与の全体像:支給企業は約8割、増加企業は2割台にとどまる

帝国データバンクがまとめた「2025年冬季賞与の動向調査」によると、今年の冬、ボーナスや一時金などの賞与を「支給する」と答えた企業は80.5%でした。

  • 賞与を支給する企業:80.5%
  • 賞与を支給しない企業:約12%との報道もあり、一定数の企業が「ボーナスなし」となっています

注目されるのは、支給額の「増減」の内訳です。帝国データバンクの調査では、従業員1人あたりの平均支給額が前年より増える企業は22.7%にとどまりました。

  • 「増加」する企業:22.7%
  • 「横ばい」企業:一定程度存在
  • 「減少」企業:増加企業と同程度、もしくはそれ以上の割合という構成

つまり、全体として「ボーナスを出す企業」は8割を超えるものの、「前年から支給額を増やせる企業」は4社に1社にも満たない状況です。ここから、「冬のボーナスの支給額は増加しているものの、その勢いは頭打ちになりつつある」と言えます。

なぜ「頭打ち」なのか?企業の事情と経済環境

この背景には、いくつかの要因が重なっていると考えられます。

  • 人件費の上昇:ここ数年、賃上げや最低賃金の引き上げなどで、人件費が増えています。ベースとなる給与アップに対応しつつ、さらにボーナスを大きく増やすのは難しい企業も多いとみられます。
  • 物価高の一服感と収益のばらつき:物価上昇は落ち着きつつある一方で、業種や企業規模によって業績の回復度合いに差があり、「増やしたくても増やせない」企業も少なくありません。
  • 先行き不透明感:世界経済や為替の動きなど、先の読みにくさから、企業がボーナス増額に慎重になる傾向も影響しているとみられます。

その結果、「ボーナスは出すが、大きくは増やせない」という企業が増え、22.7%という数字に現れていると受け止められます。

広島では2.5%増、4年連続プラス:地域では明るい動きも

全国レベルでは頭打ち感がある一方、地方の一部では堅調な増加も見られます。広島県内の民間企業を対象にした調査では、2025年冬のボーナスについて、正社員1人あたりの支給見込み額は43.8万円で、前年より1.7%増となりました。

また、報道では「広島企業の冬賞与2.5%増、4年連続プラス」とされており、広島では、コロナ禍後の回復が続いていることがうかがえます。

  • 1人あたり支給見込み額:43.8万円(前年比1.7%増)
  • 増加は4年連続で続いている
  • ボーナス支給総額も前年比1.2%増と、全体としてプラス

企業に「増やした理由」を尋ねると、雇用維持人材確保、従業員の生活支援などを挙げるケースが多く、地方でも人口減少や人手不足に対応するため、賞与をある程度厚くして「辞めさせない」「採用したい」という思いが働いていることがうかがえます。

業種別の傾向:製造業がやや優勢、非製造業は横ばい

広島県の調査結果を業種別に見ると、製造業非製造業で明確な差が現れています。

  • 製造業:1人あたり54.8万円で、前年比7.9%増
  • 非製造業:1人あたり41.6万円で、前年比0.1%増とほぼ横ばい

製造業では、円安を背景にした輸出関連企業の好調さや、自動車・機械などの生産回復がボーナスの増額につながったとみられます。一方で、サービス業などを含む非製造業は、物価高や人件費上昇の影響をより強く受け、ボーナスを大きく増やす余力が限られている様子です。

増える企業・横ばい企業・減る企業の割合

広島県の調査では、ボーナス支給見込み額の「増減」について、次のような結果が出ています。

  • 「増加」:47.9%
  • 「横ばい」:29.8%
  • 「減少」:22.3%

半数近い企業が「増加」と答えており、全国平均(増加企業22.7%)と比べると、広島は比較的積極的にボーナスを引き上げている地域と言えます。その一方で、「減少」と答えた企業も2割強おり、すべての企業が順調というわけではありません。

個人から見た「ボーナスの実感」:期待とのギャップも

企業側のデータに対して、個人の感覚はどうでしょうか。転職サービス各社の調査からは、「前年より増えているが、理想には届かない」という本音が見えてきます。

マイナビの「2025年冬ボーナス調査」では、昨年の冬の賞与額の平均は54.3万円、今年予想している冬の賞与額は51.0万円となっており、個人ベースの予想ではやや減少傾向がうかがえます。

  • 前年の冬賞与額(平均):54.3万円
  • 今年予想している冬賞与額(平均):51.0万円
  • 理想の賞与額(平均):81.5万円
  • 理想と予想額とのギャップは30.5万円

このように、企業全体としてはボーナス水準が底堅く推移していても、「もっと欲しい」「物価や税金を考えると足りない」という働く人の実感とのギャップは根強く残っています。

平均支給額の水準:民間データから見たボーナスの現状

民間のキャリアサービス「doda」がまとめた直近1年間(2024年9月〜2025年8月)のボーナス調査では、年間の平均ボーナス支給額は120.7万円とされています。

  • 年間ボーナス平均支給額:120.7万円(前回調査比+14.0万円)
  • 冬のボーナス:56.7万円(+6.3万円)
  • 夏のボーナス:57.7万円(+6.7万円)
  • その他のボーナス:6.3万円(+1.0万円)

このデータは企業規模や年齢、地域によって大きく差があるものの、平均値としては「冬も夏も50万円台半ば」という水準になっています。

企業のねらい:雇用維持と人材確保のためのボーナス

広島県の調査では、ボーナスを増やす理由として、「雇用維持」や「人材確保」といった回答が目立ちます。人手不足が続く中で、

  • 既存の従業員に報いることで、離職を防ぎたい
  • 就職・転職市場で、「ボーナスの出る会社」としてアピールしたい

といった狙いがあります。また、物価高で家計への負担が増す中、生活防衛の意味合いで一時金を厚くしようとする企業もあります。

一方で、業績が伸び悩む企業や、コスト高に苦しむ中小企業では、「ベースアップや手当で対応するのが精一杯で、ボーナスを増やす余裕はない」といった声も少なくありません。このため、「支給はするが、大きな増額は難しい」という慎重なスタンスが、全国データの22.7%という数字につながっていると考えられます。

働く人が意識したいポイント

こうしたデータを踏まえると、働く一人ひとりが意識しておきたいポイントも見えてきます。

  • 「増えているかどうか」だけでなく、「自分の業種・地域・年齢の相場」を知る
    平均値だけではなく、自分が属する業種(製造業・非製造業)、企業規模(大企業・中小企業)、地域によってボーナス水準は大きく違います。
  • 一時金に頼りすぎず、年間の収入全体で考える
    ボーナスは業績次第で増減しやすい性質があります。生活設計では、月給ベースの収入を軸に考え、「ボーナスは余裕資金」として位置づけると、変動にも対応しやすくなります。
  • 会社の業績や方針にも目を向ける
    ボーナスの増減は、業績だけでなく、会社の人事・賃金方針にも左右されます。「なぜ増えたのか・減ったのか」を、決算説明や社内の説明資料で確認しておくと、今後の見通しも立てやすくなります。

「冬のボーナス」をどう受け止めるか

2025年の冬のボーナスは、

  • 賞与を支給する企業は約8割
  • 支給額が増える企業は22.7%にとどまり、頭打ち感
  • 一部地域(広島など)では4年連続の増加といった明るい動きも

という、明暗入り混じった姿となっています。

ボーナスは、企業から見れば「業績の分配」であり、従業員から見れば「一年のがんばりへの評価」であり、同時に「家計を支える大きな収入源」でもあります。金額だけで一喜一憂するのではなく、自分の働き方やキャリア、会社の状況を見つめ直すきっかけとして、今年の「冬のボーナス」を捉えてみるのも良いかもしれません。

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