米国発の原油タンカー急増、日本に向かう船の列現れる-ホルムズ海峡封鎖で代替調達が急速に拡大
ホルムズ海峡の事実上の封鎖により、中東産原油の供給が滞る中、日本の石油会社が代替調達の活路を求めて米国からの原油輸入を大幅に増やしています。ブルームバーグがまとめた船舶追跡データによると、日本向けに航行する米国発のタンカーは計8隻に上り、4月末から5月末にかけて日本に到着する見通しです。
米国産原油輸入が急速に拡大
原油の95%超を中東に依存する日本は、ホルムズ海峡の実質封鎖を受けて、官民挙げて代替調達に奔走してきました。高市早苗首相は7日、5月分の米国からの輸入が前年比で約4倍に達する見込みだと説明しています。
現在、日本向けに航行する米国メキシコ湾岸発のタンカーは太平洋や大西洋、インド洋に点在しており、タンカーの船型を基に試算すると、8隻で運ばれる米国産原油は約1200万バレルに達します。これは経済産業省の統計で示された2月の米国からの原油輸入量287万バレル、2025年の平均月間輸入量316万バレルと比較すると、足元で日本向けの輸送が大きく膨らんでいることがうかがえます。
多様なタンカーの活用が進む
注目すべきは、輸送に使用されるタンカーの種類が多様化している点です。日本向けの米国産原油輸送で主流だったVLCCと呼ばれる超大型タンカーに加え、「スエズマックス」や「アフラマックス」といった中型のタンカーの活用も目立つようになりました。8隻のうち4隻が中型タンカーで、このうち2隻はすでにカリブ海からパナマ運河を抜け太平洋を進んでいます。
具体的な到着予定を見ると、船舶追跡データによると、パナマ運河に向けてカリブ海を航行中の中型タンカー「Seaways Yosemite」の千葉港入港予定日は5月9日となっており、近い海域から喜望峰経由で日本に向かうVLCC「Caspar」は、5月23日に鹿児島県の喜入港に到着する見通しとなっています。
従来の課題を乗り越える試み
これまで、米ガルフ積み原油は日本までの航海距離が長いことがネックとなっていました。米ガルフから日本の航海日数は片道45日前後と、中東積みの約20日の2倍以上かかります。また、中東産とのスペックの違いも課題でした。
日本の2025年原油輸入量約1億1660万トンのうち、米国産は3・8%相当の約440万トンに過ぎず、従来は輸入量が限定的にとどまっていました。日本の石油会社は支配船腹の運航効率の観点から、これまで邦船社からの中長期用船フリートは基本的に中東―日本航路に投入し、米ガルフ積みにはスポット用船を活用してきたのです。
官民を挙げた代替調達への動き
船舶追跡情報大手マリントラフィックによると、邦船社が運航するVLCC6隻が米ガルフに向かっており、既に1隻が同地での荷役を終えて日本に向かっています。米国メキシコ湾岸での積み荷役を終えた1隻は5月上旬をめどに日本到着を予定しており、邦船社もVLCCの米国配船に向け、米連邦法に基づく「COFR」(賠償責任証明書)取得などの準備を進めている様子が見られます。
ナフサなど化学原料の輸入も急増
原油だけでなく、石油化学原料の代替調達も急速に進んでいます。イラン危機で石油化学原料の中東供給が途絶えた後、日本が代替品の確保を急いだことから、米国のナフサ輸出が過去最高を記録しました。
船舶追跡会社Kplerによると、米国からのナフサ輸出は過去最高の日量49万3000バレルに達し、アジア向けは約13万B/Dで過去4年間で最高となっています。日本向けは7万1,000B/Dと、2021年12月以来の高水準となりました。
中東湾岸はアジアのナフサ輸入の60%、月間約3,500万バレルを供給してきたため、その供給途絶は日本の石油化学産業に大きな影響を与えています。アジアの石油化学企業はナフサの調達を急いでおり、価格が急騰している状況です。
運賃高騰による新たな課題
代替調達が進む一方で、新たな課題も浮上しています。米国メキシコ湾岸から日本向けの中型タンカーに積まれたナフサ貨物のフィクスチャ(運賃)は、紛争が始まる前の運賃水準の2倍に跳ね上がっており、960万ドルと報告されています。
これまでの長距離輸送と運賃高騰が続く場合、米国産原油の輸出は限界に近づく可能性も指摘されており、日本のエネルギー確保戦略はなお複雑な局面を迎えようとしています。
今後のエネルギー戦略の展望
ホルムズ海峡の封鎖は、日本のエネルギー供給網の脆弱性を改めて浮き彫りにしました。官民を挙げた米国からの代替調達の拡大は、短期的には乗り切れる対応策ですが、長期的にはエネルギー源の多角化と供給網の強化が急務となります。今後、日本の石油会社や政府がどのような対応を取るのか、注視が必要です。



