サントリー「金麦」がついに本物のビールへ――酒税改革直前、ブランド変えず一新する戦略とは
■ サントリー「金麦」、ビール化を正式発表──家飲みの定番ブランドが生ビールとして再出発
サントリー株式会社は2025年9月29日、長年「新ジャンル(第3のビール)」として親しまれてきた「金麦」を、2026年10月の酒税法改正以降「ビール」としてリニューアルすることを公式に発表しました。金麦は2007年の誕生以来、家飲み需要を牽引し、日本の食卓に定着してきたブランドです。その「金麦」がいよいよ本物の生ビールとなり、さらに「金麦〈糖質75%オフ〉」も同時にビールとして進化します。
■ 酒税法改正がビール市場を大きく動かす──ビール類の税率一本化の衝撃
今回の大きなきっかけとなったのは、「2026年10月の酒税法改正」です。従来、ビール・発泡酒・新ジャンル(第3のビール)などで異なっていた酒税が一本化されます。この結果、発泡酒や新ジャンルは税率が上がり、ビールは減税となり価格差がなくなっていきます。
これまで「安くて飲みやすい」ことが強みだった金麦をはじめとした新ジャンルは、相対的な価格優位性を失います。そのため、ビールメーカー各社は「ビール」本来の価値や飲む楽しさを追求する新たな戦略を模索していました。サントリーは「金麦」をビール化することで価格帯据え置き+より高い品質という新たな価値を打ち出すのです。
■ 金麦「ビール化」の詳細──麦芽比率・味わい・ブランド名はそのまま
- 麦芽比率を50%以上へ:これまで「第3のビール」として販売されてきた金麦は、麦芽比率25~50%未満でしたが、ビール化に伴い50%以上へ大幅アップ。日本の酒税法において「ビール」と認められるための条件をしっかり満たします。
- 味わいも刷新:新しい金麦ビールは「金麦らしい飲みやすさ・親しみやすさ」はそのまま、高い麦のうまみと、アロマホップ由来の甘やかな香り、そしてすっきりした後口が特徴となります。糖質75%オフなどバリエーションもそのまま進化します。
- ブランド名は変えずに刷新:「金麦」という親しみのあるブランド名は維持したまま「新ジャンル」から「ビール」に生まれ変わります。消費者にとって混乱なく、これまでと同じように手に取れる安心も重視されています。
ブランド担当者であるサントリー ビール商品開発研究部 開発主幹・水口伊玖磨氏は、「金麦は“生ビールになります”」と力強く明言し、多くのファンに新たな決意を印象付けました。
■ なぜ今「金麦」をビール化?サントリーの中長期戦略
サントリーはこれからのビール市場を、以下の三本柱で戦う方針です。
- プレモル:プレミアム市場を牽引、贅沢やご褒美のシーン向け
- サントリー生ビール:外食・飲食店市場の定番生ビールとして
- 金麦 生ビール:家飲みや手軽な日常シーンで納得感のある価値を提案
それぞれの役割を明確にし、多様化する消費者のニーズや飲用シーンを網羅し、幅広い層へのアプローチを強めます。特に家飲み市場で不動のシェアをもつ金麦が「本物のビール」に進化することで、それまで「消費税の壁」に悩まされてきた消費者心理も大きく変わることが予想されます。
■ 「ビール減税」の衝撃──他社も動き、激化する競争
ビール類の税率が一本化されるタイミングで多くのメーカーが新たな戦略を打ち出しています。発泡酒や新ジャンルが値上がりし、ビールは値下がりすることで、従来の「価格の壁」が大きく動きます。各社の主力ブランドの立ち位置や開発競争はこれからますます活発化していくでしょう。
サントリーは金麦のビール化によって、これまで「コストパフォーマンス」「飲みやすさ」「家飲み」などの支持基盤を失わない形で、ビール本来の魅力を強く打ち出し、ポスト減税時代のスタンダードを狙います。
■ なぜ消費者は「金麦」に惹かれ続けたのか?ブランドの強さと進化
長年愛されてきた「金麦」は、麦の旨みとすっきりした後味を追求し続けてきました。2007年の発売以来、「毎日の家飲みにぴったり」「コスパが良い」「やさしい味わい」と、普段使いのスタンダードとして定着しています。
2025年時点でも年間3,000万ケース規模(=約2億本以上)の出荷を維持しており、日本の家飲み市場をけん引し続ける存在です。
こうした圧倒的なブランド力があるからこそ、ビール化しても“金麦らしさ”は揺るがない――そうサントリーは考えています。「金麦の味やイメージが好き」というファンの多様な声に支えられた進化が、今回の決断の根底にあります。
■ 金麦「生ビール」――新たな幕開け、消費者にどんな影響?
金麦がビールとして生まれ変わることで、これまでビールにやや距離を感じていた層にも、もっと手軽にビールのおいしさが楽しめるようになります。新ジャンルとの差額が縮小し、「どうせならビールを」という意識の消費者が増えること、そしてその受け皿として金麦ブランドが進化する意義は非常に大きいといえます。
サントリーは今後も、飲みごたえや安心の家飲みブランドでありながら本格的なビールの魅力もしっかり楽しめる商品作りで、ますます多様化するビール市場の最前線に立っていくことでしょう。
■ 金麦、「生ビールになる」
金麦は発売20周年を迎える2026年10月以降、「家飲みのスタンダード」を掲げて本物の生ビールとして新たな歴史を刻みます。サントリーは金麦を通じて、日本のビール市場の“新しいスタンダード”を築こうとしています。
消費者も、これまで通りの価格帯、変わらぬ金麦ブランドで、より本格的な「おいしいビール」を楽しめる――そんな時代が、すぐそこにやってきます。