駿台、「合格実績ビジネス」の終焉──東大合格者数から数字の形骸化、「看板」を捨てる決断と受験界の未来

はじめに

駿台予備学校(以下、駿台)が2026年度入試より、これまで続けてきた大学合格者数の公表を終了すると発表しました。特に「東大合格者数」のような高いブランド力を持つ数字を用いたブランディングは、受験生や保護者の予備校選びに大きな影響力を持ってきました。ところがこの数年、「合格実績」の意義が本質的に揺らぎ始め、駿台は「あえて捨てる」という選択をしました。この記事では、その背景と今後の受験界の課題、そして、より良い予備校選びのポイントまで、分かりやすく丁寧に解説します。

なぜ「東大合格者数」でのブランディングが通用しなくなったのか

  • 合格者数の形骸化:2025年度入試、東京大学の一般選抜前期日程の定員2,997名に対し、主要な塾・予備校が発表する合格者数を合算すると、定員を大きく上回る数字となる問題が起きています。これは、同じ受験生が複数の塾・予備校に在籍し、各校で重複してカウントされるからです。
  • 受験スタイルの多様化:今はオンライン教材や家庭教師の活用、複数予備校の併用が一般的。一つの予備校だけで成果を計ることが困難となっています。
  • 推薦・総合型選抜の拡大:東大でも総合型選抜、推薦枠が拡大し、一般選抜以外の合格も増加。これらは従来型の実績数字に反映されにくく、数字が現実に追い付かなくなっています。

駿台予備学校、公式発表の骨子

  • 合格者数の公表終了:「信頼や実績の象徴」とされた合格者数ですが、「最近は意味が持ちにくくなってきている」と駿台は説明します。
  • 合格実績の信頼性への疑念:「実態に合わない数字を掲載することは誠実ではない」「数字の形骸化が著しい」と正面から問題提起しています。
  • 今後の方針:合格者数の掲載を終了する一方で、受験生支援そのものの質を前面に出す方針に転換します。

あえて捨てる「東大」看板──中堅大志望層へシフト

駿台は従来、「東大合格者数」でトップ実績を競い合い、ブランド強化に努めてきました。しかし、上記のような理由から「数字による競争」は終焉し、むしろ中堅大学志望層のニーズに応える教育方針へと舵を切り始めています。

  • 中堅大学や地方国立・私立大学を目指す層へのフォロー拡大
  • 合格率・学習プロセス・個別指導の質の強化

こうした流れは、単にトップ層に向けた集客競争から、より幅広い多くの受験生へ現実的なサポートを提供することが重要だという認識の高まりを反映しています。

数字の形骸化、その具体的な仕組み

  • 重複カウントの実態:一人の受験生が複数予備校に在籍すれば、各校で「合格者」とカウント。全国展開型の大手予備校は数字が膨らみやすい。
  • 推薦・総合選抜の拡大と誤解:大学入試が多様化し、推薦や総合型選抜が増えてくると、もはや一般選抜合格中心の「合格者数」表示は偏った情報となってしまう。
  • 合格率や教育の質に注目が移る:数字の本来の意味が失われつつある中で、「本当に見るべきは合格率や教育内容の質」と、駿台側はメッセージを送っています。

他の業界や消費者(受験生・保護者)の変化

  • 消費者リテラシーの向上:「数字の信頼性」自体を受験生・保護者が疑問視するようになり、自ら情報を吟味する時代に。
  • 他予備校への波及:駿台が「数字ではなく質」の方向性を明確に打ち出したことで、業界全体に新たな流れが起きる可能性が高まっています。

予備校・塾選びの新基準──これからは「質」と「率」が重要

  • 数字の大小に振り回されない
  • 実際に入学した割合(合格率)や、個別指導の充実度を評価
  • 講師力や学習サポート体制、受験戦略指導の実績を確認
  • 推薦・総合型選抜対策の専門性にも注目

かつては「東大○○人合格!」のような華々しい数字がチラシにも大きく載りましたが、これからは受験生ひとりひとりへの支援や、自分に合った学習環境・サポート体制が、予備校選びの重要なポイントとなります。

受験界の未来と駿台の新しい挑戦

駿台の「合格者数公表終了」は受験界・教育界全体への問題提起でもあり、予備校ブランド競争の根本見直しを促すものです。数字の大小では測れない「質」の時代に入ります。今後、各校がどのような教育サービスを展開し、受験生や家庭がどう選択していくのか──その動向は注目すべきポイントです。

「数値に踊らされることなく、個々の成果とプロセスをより大切にする」。受験生・保護者は、それぞれの目標や状況に応じて、しっかりと情報を取捨選択していきましょう。

まとめ:合格実績から教育の質へ──時代が求める「本当の支援」

  • 駿台は2026年度以降、合格者数の公表を終了し、「質」の高い受験支援へ。
  • 受験界は「数字」から「質・率」へと選び方が変化。
  • 受験生や保護者は、自分の目でサービス内容を見極める意識がより大切になります。

歴史ある予備校が勇気ある決断をした今、私達もその背景をしっかり理解し、未来の受験の姿を一緒に考えていきましょう。

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