米スターバックスが北米で大規模閉鎖とリストラを発表 「くつろげる店」への転換を目指して
アメリカ発のニュースに世界が注目
スターバックスが北米を中心に数百店舗の閉鎖と900人規模のリストラを発表したニュースは、コーヒー業界のみならず世界の注目を集めています。長年「サードプレイス」(自宅や職場とは別の居心地の良い場所)として愛されてきたスタバが、なぜ今このような大きな構造改革に踏み切る必要があったのでしょうか。その背景や今後の見通し、さまざまな影響について、わかりやすく、優しい口調でご説明します。
突然の発表、その規模と背景
- 北米で数百店舗を閉鎖(全体の約1%)
- 従業員約900人のリストラ
- 閉鎖や改装、リストラにかかる費用は約1500億円(10億ドル規模)
もともと世界規模で展開しファンの多いスターバックスですが、アメリカでは近年、集客の減少や収益性の低下が目立ち始めていました。特に、根強いインフレによる物価高や消費者の節約傾向が続くなか、これまでのビジネスモデルだけでは厳しい局面を迎えていたのです。
今回の大規模な再編は、2024年9月に就任した新CEOのブライアン・ニコル氏による「Back to Starbucks(原点回帰)」戦略の一環であることが大きなポイントです。ただやみくもに閉店するわけではなく、「人が集まり・伸びる店舗には投資、伸び悩む店舗は整理」といった“選択と集中”が進められているのです。
「くつろげない店」は閉鎖、代表的店舗も対象に
閉鎖が決まった店舗の中には、シアトルのロースタリーといったコーヒーファンの“聖地”ともいえる象徴的な店舗も含まれています。また、“ただコーヒーを買ってすぐ帰るだけ”の取引き重視型店舗、いわゆる「くつろげない店」も見直しの対象になったと報じられています。
- 「心地よいコーヒーハウス」へと原点回帰
- 一方的な効率化やテイクアウト重視路線からの転換
感染症拡大以降、急増したテイクアウトやドライブスルー専門店は、一時期の売上を下支えしました。しかし「やはりスタバはゆったりくつろげる空間じゃなきゃ」という消費者の声を無視できなくなったことも、大きな理由の一つです。
なぜスターバックスはここまで追い込まれたのか?
問題の本質は、単なる集客数減少だけではありません。
- 物価上昇による消費者の節約志向
- 競合チェーン (中国系ブランドや各地の新興コーヒーショップなど)の台頭
- 「スタバは高い」イメージに対する批判や競争力低下
- “第三の場所”としての居心地や魅力の低下
実際、アメリカでは「スターバックスは高すぎる」「昔ほどワクワク感がなくなった」といった声が増え、特に若い層を中心に他ブランドへの流出も進んでいます。さらに、コロナ禍をきっかけとしたライフスタイルの変化で「自宅やオフィス以外で過ごす時間」そのものが減っている点も大きなハードルとなりました。
業績・雇用・お客様——それぞれの視点で考える「影響」
1. 会社の事業再建への影響
- 店舗数全体からみれば「約1%」の閉店だが、象徴的な店舗や都市部店舗も対象。
- 約900人のリストラは、主に店舗外職種が中心。
- 同時に「質の高い店舗」に刷新するため、1,000店舗以上の大規模な改装投資計画も進行中。
単なるダウンサイジングではなく、“伸びるための選択的投資と集中断行”の性格が強いのが特徴です。
2. 従業員・雇用への影響
- 正式なリストラ対象者には9月末までに通達がされた。
- 2月にも1,000人規模のレイオフが実施済み、すでに一部職種で新規採用中止も続く。
- カフェ現場スタッフへの直接影響は比較的限定的だが、本社やバックオフィス機能の見直しが中心。
3. 利用者・ファンへの影響
- 特定都市や象徴的店舗の閉店は、地元コミュニティやファンにとって大きなショック。
- 混雑緩和や店舗体験の質向上など「いい変化」への期待もあり
- 一方で、「最寄りのスタバがなくなる」という実害も無視できず【注:北米地域中心の動き】。
選択と集中が示す大手チェーンの難しさ
今回の施策は、ただのリストラ・店舗削減と受け取るだけでは表面的です。
- ブランド力に安住せず、消費者体験の本質を再考
- 世代交代によるニーズや価値観の変化へのキャッチアップ
- 効率・業績と、顧客満足や社風維持のバランス
「効率一辺倒」から「心地よさ重視」への軌道修正——これは、世界中で生活や購買行動が大きく変化するいま、グローバルチェーンすべてに共通する課題かもしれません。
今後の展望と日本のスターバックスへの波及は?
- 今回の閉店・リストラ策の対象は主に米国・カナダ。
- アジア(日本やタイ等)では今のところ大規模な閉店計画や人員整理のアナウンスはなし。
- しかし「サードプレイスとしての体験刷新」という流れは、日本のスタバにも各地で波及しうる。
日本の消費者も、「くつろげる空間」「特別な体験」としてのコーヒーショップに高い価値を求めている点は変わりません。今後、日本やアジアでも「質重視リニューアル」「原点回帰」の波が広がる可能性は高まっています。
今、スターバックスが直面する「重大局面」と向き合うために
世界的なコーヒーブランドの代表格であるスターバックスが、今なぜ組織再編、店舗整理、雇用調整という厳しい決断を下したのか。そこには、時代や社会の変化に対応しつつブランド価値を守り、成長のチャンスを再びつかもうという経営陣の強い意思があります。
「くつろげる場」としての原点に立ち返る。そのために一時の痛みや不便を避けず、「選択と集中」を断行し、改装と新たな店舗体験づくりに賭ける――。コーヒーを愛する人々にとっても、今起きている変化をどう受け止め、どう楽しむかが問われる時代と言えそうです。
まとめと今後への展望
- 今回のスターバックス大規模再編は世界的なニュースですが、日本の店舗や雇用には今のところ大きな影響はありません。
- 一方で、「本当に大事な体験とは何か」を問い直し、“くつろげる店”づくりへと価値転換を図る流れは今後も続きそうです。
- 世界を代表するブランドが、逆境下でどのような舵取りをするのか、今後も注目が集まります。