Windows 11の最新アップデートでSSDが消える!? ― PhisonとMicrosoftの対応状況と最新情報
はじめに
最近、Windows 11をご利用の皆さまの中で、「SSDが突然消える」「アップデート後にハードドライブが認識されなくなる」といった深刻なトラブル報告が相次いでいます。本記事では、この問題の詳細と原因、そしてPhison(群聯電子)やMicrosoftの調査状況、ユーザーが取るべき対策について、分かりやすく解説します。
トラブル発生の背景
発端は、2025年8月中旬に配信されたWindows 11の累積更新プログラム(KB5063878)です。この更新を適用した一部ユーザーから、「SSDやHDDがシステムから突然消失した」「ファイル転送中にドライブが認識されなくなった」といった報告がSNSや技術フォーラムで広がりました。
- 大型ファイル(50GB超)を転送中に発生しやすい
- ディスクの残容量が40%以下の場合もリスク増
- Phison製コントローラ搭載のSSDや、DRAMキャッシュのないSSDで特に多発
この現象は家庭や学校、公的機関のPCユーザーだけでなく、ライブ配信やクリエイティブ業務に携わる多くの専門職の間でも被害が報告されています。
実際のトラブル内容
- SSD/HDDが突然システムから認識されなくなる
- ファイル転送が途中で停止し失敗する
- OS再起動後にパーティションが消失、SMART自己診断情報が読み取れなくなる
- 場合によってはデータの復旧が困難になり、フォーマットを求められることも
インターネット上には「SSDやHDDが故障してしまった」「重要なファイルが失われた」といった切実な声が多く寄せられています。特に大容量ファイルを一度にやり取りする場面で発生しやすいため、映像制作や研究現場など、データの移動が頻繁な業務用途では被害が大きくなっています。
Microsoftの対応と見解
Microsoftはこの問題が表面化した直後から調査を開始。社内テストやパートナー企業との協力によって、現象の再現や原因究明に努めています。
- 8月12日のWindows 11更新(KB5063878)以降、「ストレージデバイスが消える」との報告を受け鋭意調査中
- 現在までの内部テスト・遠隔診断(テレメトリーデータ)では、再現性なし・大規模な障害証拠は確認できず
- 公式サポート窓口にも被害報告はほとんど届いていない
- ユーザーからの個別報告やネット上の「症例」収集を継続中
しかし原因の特定には至っておらず、「問題がWindowsの更新そのものに起因するか確証がとれていない」との姿勢を崩していません。加えて、今後の修正プログラムに本件への対応が組み込まれる可能性も示唆されています。
Phison(群聯電子)の公式声明と評価
SSDコントローラ大手のPhisonも、本件で名指しされたため即座に自主検証を実施しました。
- 約4,500時間分のテスト・数千回規模で各種SSDを検証
- 現象の再現には至らず
- 一部ユーザー環境固有の要因やサードパーティ製ソフトとの相互作用も考慮
Phisonは「自社製SSDの故障率が著しく増えた事実は認められない」と強調し、「ユーザー体験を重視し引き続き調査協力に努める」としつつ、万一に備えてSSD用ヒートシンク(放熱パーツ)の装着を推奨しています。
他社製SSDや関連業界の反応
このトラブルはPhisonコントローラだけでなく、DRAMキャッシュのない廉価SSDにも散発的にみられます。他のコントローラ搭載SSD(Samsung、Western Digital、Crucial等)を利用する環境からも、まれに類似症状の報告があるものの、決定的な共通性は今のところ見つかっていません。
発生メカニズムの推察と技術的背景
報告例を総合すると、問題は、
- 50GB以上の大容量ファイルを書き込む時
- ディスクの空き容量が40%未満の状態
に顕著に生じています。これにより、内部バッファやキャッシュ、NVMeプロトコルレイヤー、あるいはWindowsのI/Oキュー処理などで、バッファオーバーフロー/タイミング競合が生じ、ドライブ認識不可状態に陥る可能性が指摘されています。
影響範囲について – どのユーザーが注意すべきか
- 映像制作者、ゲーム開発者、大容量バックアップ用途のユーザー
- SSDの空き容量が少ないPCや、数年利用した旧型SSDを搭載する環境
- Phisonコントローラ搭載SSD、またはDRAMレスSSD
- Windows 11 24H2 / Windows 10 21H2・22H2ユーザー
影響はノートパソコン、デスクトップ、仕事用ワークステーションのいずれにも及んでいます。
ユーザーができること ― 推奨される対策
- KB5063878等、問題が発生したWindows累積更新プログラムを一時的にアンインストール(ロールバック)
- ストレージの空き容量を40%以上に維持し、50GB超の単一ファイル転送を控える
- 重要なデータは他の外部ストレージやクラウドにバックアップする
- PhisonやMicrosoft公式サイトの最新情報を随時チェック
- 放熱対策としてヒートシンク装着を推奨(特に発熱しやすいNVMe SSD)
- 業務利用の現場で致命的障害が想定される場合、修正パッチ提供までアップデートを停止
また、現状では個別環境での再現難度や障害の有無もばらつきがあるため、「異常終了」や「ドライブ消失」を感じた場合は速やかにデータ保全や別環境での検証を行いましょう。
今後の見通しと業界への影響
MicrosoftおよびSSDベンダー各社は、ユーザーから日々寄せられる情報をもとに原因究明を進めており、今後数週間で修正プログラムや対策アナウンスが出る可能性があります。「自分のPCは問題がない」と油断せず、定期的なバックアップと十分な空き容量保持を心がけてください。
まとめ ― 安全・安心なデジタルライフのために
今回明らかになったように、「新機能を早く使いたい」と思っても、アップデートには慎重さが求められます。トラブル時は慌てず、公式情報を第一に、冷静に状況を見守りましょう。何よりも大切なのは、大事なデータを守るための日常的なバックアップです。最新の動向については、引き続き公式発表や信頼できる報道を参考にしてください。
参考元
- Phison Posts Latest Update on SSD Controller Stability
- Microsoft Investigating Reports of SSDs Vanishing After Latest Windows 11 Update
- Phison squashes reports of Windows 11 breaking SSDs — says it was unable to reproduce issues despite 4,500 hours of testing, recommends users deploy heatsinks just in case