Spotifyが米国などで再び値上げ、プレミアム料金が月額12.99ドルに
世界最大級の音楽ストリーミングプラットフォームSpotifyが、米国、エストニア、ラトビアの3市場で個人向け「プレミアム」プランの月額料金を値上げすることを発表しました。米国では月額11.99ドルから12.99ドルへ1ドルの引き上げとなり、2月の請求日から新価格が適用される予定です。
複数のプランで段階的な値上げを実施
今回の値上げは個人向けプレミアムプランだけに留まりません。学生向けプランは月額5.99ドルから6.99ドルへ、Duoプランは16.99ドルから18.99ドルへ、そしてFamilyプランは19.99ドルから21.99ドルへと値上げされます。Familyプランは最大月額2ドルの値上げとなり、個人プランの8%増に対してファミリープランは10%、デュオプランは12%の値上げ率となっています。
値上げの対象となる加入者には、1月15日から1カ月以内にメールで新価格に関する通知が送付される予定です。既存の加入者も段階的に新価格へと移行していくことになります。
米国での値上げは3年間で3度目
Spotifyは米国市場において、2023年以降すでに複数回の値上げを実施しています。今回の値上げは、2024年6月の前回の値上げからわずか約8カ月後のことです。このように短期間での連続的な値上げは、同社の積極的な収益性強化戦略を示しています。
Spotifyの最高財務責任者(CFO)クリスチャン・ルイガ氏は、昨年150カ国以上で値上げを実施したものの、顕著な解約率の上昇は見られなかったと指摘しています。この発言は、ユーザーが価格上昇に対して比較的寛容であることを示唆しており、同社の値上げ戦略に自信を与えています。
サービス価値向上とアーティスト支援が値上げの理由
Spotifyは、今回の価格改定について「優れた体験を提供し続けるため」の取り組みの一環であると説明しています。具体的には、増収分をプラットフォームの改善やクリエイターへの支援に再投資する方針を示唆しており、単なる利益追求ではなくサービス質の向上と音楽アーティストへの貢献を強調しています。
各市場における価格の定期的な見直しについて、Spotifyは「Spotifyが提供する価値を反映し、最高の体験を継続して提供し、アーティストを支援するため」のものであると述べています。音楽ストリーミング業界では、レコードレーベルからのアーティスト報酬増額要求という外部圧力も存在し、こうした背景も値上げを促している要因と考えられます。
市場の反応と経営戦略への影響
価格引き上げの発表後、Spotifyの株価は1月15日終了の取引で3%上昇した模様です。証券会社UBSは、この値上げを受けて同社に対する「買い」評価を維持しており、市場はこの戦略を前向きに評価しています。
アナリストによると、月額1ドルの値上げにより、Spotifyの年間収益は5億ドル増加する可能性があるとされています。現在Spotifyは世界中に2億8100万人以上のプレミアム会員を抱えており、この規模のユーザーベースへの値上げは極めて大きな収益インパクトをもたらすことになります。
昨年の強力な業績と今後の方針
2025年第3・四半期のプレミアム会員数は前年同期比で12%増の2億8100万人に達し、同四半期末の月間アクティブユーザー数は7億1300万人に上っています。昨年11月には比較的堅調な四半期業績を発表していますが、今後の売上高と購読者の増加見通しは市場の期待に届かないという評価も受けていました。
Spotifyは現在、投資の優先事項として売上高の成長、新興市場のユーザー獲得、ポッドキャスト・動画・オーディオブックなどコンテンツの拡充を掲げています。これらの目標達成のためには、安定した収益源が必要であり、今回の値上げはそうした経営戦略の一環として位置付けられます。
グローバルな値上げトレンドの一環
Spotifyが採用している価格引き上げ戦略は、Netflixなどのストリーミングサービスと同様に、インフレ対策としての側面も有しています。デジタルサービス業界全体において、物価上昇に対応するための価格見直しが一般的となってきた中での動きであり、消費者側でもある程度の理解が進んでいる状況です。
参考までに、Spotifyが2011年に米国で初めてサービスを開始した際の価格は月額10ドルでした。約15年間で3ドルの値上げ(30%増)となっており、サービスの拡充やコンテンツの充実に伴う段階的な価格調整が行われてきたことが窺えます。
今後のユーザーへの影響
既存の加入者にとって最も重要な情報は、新価格が2月の請求日から適用されるという点です。値上げの対象となる加入者には事前にメールで通知されるため、突然の請求増加という事態は避けられるでしょう。ただし、継続利用の判断を迫られるユーザーが増える可能性は残されており、今後の解約率の推移が注視される状況です。
一方で、Spotifyの強力なユーザーベースと、音楽ストリーミングサービスの必需性を考えると、大幅な解約者数の増加は起きにくいと予想されます。同社CFOも「顕著な解約率の上昇は見られなかった」と述べており、ユーザーの価格感応度は比較的低いと考えられているのです。
Spotifyの今回の値上げは、成長する経営ニーズと、デジタルコンテンツ業界全体の価格調整トレンドが交差する中での戦略的判断として理解することができます。今後、他のストリーミングサービスも同様の値上げを実施する可能性が高く、デジタルエンターテインメント市場の価格構造が大きく変わろうとしている転換点にあるといえるでしょう。



