スペイン産豚肉の輸入停止が決定――生ハム欠品の可能性と国内市場への影響

日本の食卓に欠かせないスペイン産の豚肉が、11月28日から輸入停止となりました。アフリカ豚熱(ASF)の発生確認が理由です。この措置により、生ハムやベーコン、ソーセージなどの加工品の品薄が懸念されています。私たちの日常生活にどのような影響をもたらすのか、その背景と今後の見通しについて詳しく解説します。

なぜスペイン産豚肉の輸入が停止されたのか

スペインの野生イノシシにおいて、アフリカ豚熱(ASF)の発生が確認されました。これを受けて、農林水産省は令和7年11月28日以降のスペインから輸入される豚肉等について、輸入一時停止措置を講じることを決定しました。

アフリカ豚熱は家畜にとって深刻な伝染病です。感染した豚からの感染拡大を防ぐため、畜産国では厳格な水際対策が取られています。日本もこの脅威に対応するため、スペインからの豚肉輸入を全面停止する判断に至りました。

スペイン産豚肉が日本にもたらしていた役割

スペイン産豚肉は、日本の豚肉市場において極めて重要な位置を占めていました。2024年度のデータによると、スペインからの豚肉輸入量は約16万9000トンで、国別では3番目に多い輸入国だったのです。

さらに、日本が輸入する生ハムの7割近くがスペイン産です。イベリコ豚に代表される高品質な豚肉は、生ハムをはじめ、ベーコンやソーセージなどの加工品に広く活用されていました。スペイン産豚肉は単なる輸入品ではなく、日本の食文化を支える重要な食材だったのです。

国内供給量全体に占めるスペイン産豚肉の割合は約1割。この数字は、輸入停止がもたらす影響の大きさを物語っています。

生ハムやベーコンの欠品リスク

スペイン産豚肉の輸入停止により、最も大きな影響を受ける商品が生ハムです。日本国内で販売されている生ハムの大部分がスペイン産であるため、現在の在庫が底をつけば、品薄や欠品が避けられません。

ベーコンやソーセージなどの加工品についても同様です。スペイン産豚肉は、これらの加工品の原材料として多く使用されていました。輸入停止が続けば、これらの商品の入手が困難になる可能性が高いのです。

食品メーカーや流通業者は既に対応を検討しており、在庫の工夫や他国産への切り替えを進めています。しかし、スペイン産豚肉のような高品質な原材料の代替は容易ではありません。多くの関係者から「品質に違いがあり、すぐ切り替えられるかはわからない」といった懸念の声が上がっています。

価格上昇の懸念

輸入停止に伴う最大の懸念は、豚肉関連商品の価格上昇です。現在供給の約1割を占めるスペイン産豚肉が市場から消えることで、需給バランスに大きな変化が生じます。

特に年末にかけては、生ハムやベーコン、ソーセージなどの需要が急増します。この時期に供給が制限されることで、商品不足と価格の上昇が同時に発生する可能性が高いのです。業界関係者からは、この時期に輸入停止となることへの強い懸念が表明されています。

農林水産省の鈴木憲和大臣も、「豚肉需給に一定程度の影響は当然ある」とのコメントを示しており、政府としても価格上昇のリスクを認識しています。

他国産への切り替えと今後の対応

輸入停止措置が講じられる一方で、農林水産省は今後、他の国の豚肉への切り替え状況などの情報収集を進めるとしています。スペイン以外の主要豚肉輸入国から、代替供給を確保できるかどうかが今後の鍵となります。

しかし、スペイン産豚肉の品質は世界的に認められており、特に生ハムやプレミアム加工品の分野では代替が難しいという課題があります。消費者の期待する品質を維持しながら、他国産への切り替えを進めることは、食品業界にとって大きなチャレンジとなるでしょう。

農水省は、アフリカ豚熱の状況がスペインでどの程度の規模で拡大するのか、いつ頃コントロール下に置かれるのかといった情報の収集も行っています。これらの情報によっては、輸入停止措置の解除時期が決まることになります。

消費者と業界への影響

この輸入停止措置は、単に商品の入手困難さだけでは終わりません。スペイン産豚肉を利用した様々な食品や飲食店のメニューにも波及効果が出てくるでしょう。

現在、市場にある在庫についても、今後状況によっては販売が一時的に停止される可能性があります。食品メーカーや小売業者は、顧客への説明と代替商品の提案を急ぐ必要があります。

消費者としては、今後、生ハムやベーコンなどスペイン産豚肉を使った商品について、品薄や欠品、価格上昇に対する心構えが求められます。

まとめ

スペイン産豚肉の輸入停止は、日本の食卓に大きな変化をもたらします。供給量の約1割を占める重要な食材の喪失は、必然的に価格上昇と品薄につながるでしょう。特に年末の需要期と重なることで、その影響は一層大きくなる可能性があります。

農林水産省の対応と、業界による代替供給体制の構築が急務となっています。今後の情勢によっては、私たちが親しんできたスペイン産豚肉を使った食品が、より貴重で入手困難なものになるかもしれません。アフリカ豚熱がスペインでコントロール下に置かれ、輸入が再開される日まで、全ての関係者が一丸となった対応が求められています。

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