カツオに起きた“旬の逆転現象”――初ガツオと戻りガツオ、驚きの脂質12倍差と2025年の大豊漁を読み解く
はじめに
2025年、カツオの「旬」に異例の現象が起きています。普段あまり獲れない場所で大物が水揚げされる“逆転現象”や、例年以上の大豊漁がニュースを賑わせ、「初ガツオ」と「戻りガツオ」の違い、脂質量の差までもが大きな話題となっています。本記事では、この現象の背景、初ガツオと戻りガツオの違い、今年の漁や価格、味わいについて、できるだけ分かりやすく、かつ丁寧に解説します。
カツオの旬――「初ガツオ」と「戻りガツオ」とは?
カツオは一年で二度「旬」を迎えます。初ガツオは3月〜5月の春季、黒潮に乗って南から北へと移動する際に各地で水揚げされます。一方、戻りガツオは9月〜11月に旬を迎え、秋に北から南へ戻るタイミングで漁獲されます。
- 初ガツオ:主に宮崎、高知、静岡など(黒潮北上ルート)
- 戻りガツオ:主に三陸沖、宮城、千葉など(北から南下ルート)
この回遊ルートと漁獲時期の違いが、カツオの味や脂質を大きく左右します。
初ガツオと戻りガツオの決定的な違いと「脂質12倍差」
初ガツオは、冬を越えて体を絞り、春の海で北へ移動していくため、脂肪分が少なく肉質は締まり、さっぱりとした食感が特徴です。その脂質は1~2%程度とされています。
対して戻りガツオは、夏の間に豊富な餌を取りながら北で過ごし、秋になるとエネルギー(脂肪)を蓄えて南下します。このため、脂がしっかり乗っていてコクがありジューシー。脂質は5~10%、年によっては最大で12倍もの違いが観察されることもあります。
- 初ガツオ:さっぱりした赤身、高タンパク・低脂質でダイエット志向におすすめ
- 戻りガツオ:脂がのって濃厚、DHA・EPAなどの良質な脂も豊富で美容や脳の健康にも◎
食べ比べでは、初ガツオは「香りや新鮮さ、縁起の良さ」が、戻りガツオは「脂のノリとバランス、しっとりした食感」がそれぞれ高く評価されています。
2025年のカツオに何が起きているのか――“逆転現象”と想定外の豊漁
今年のカツオ漁は例年と異なる特徴を見せています。普段カツオがあまり獲れないエリアで大物が頻繁に水揚げされたり、従来の豊漁期以外でも大量のカツオに出会える現象が、各地の漁港で相次いで報告されています(日テレNEWS NNN)。
- 想定外の豊漁:通常の漁場や移動ルートとは異なる所に大きなカツオが出現し、「大物が獲れる時期」「場所」の逆転が起きている
- 市場価格への影響:漁獲量の増加から初ガツオの相場も下落、豊洲市場で1,512円/kg、大阪・本場で1,404~2,484円/kgなど前年より安めに推移
記録的な豊漁の背景には、海水温や黒潮の流れ変化、気候変動など複合的な要素があるとされており、今後のカツオ漁や価格動向にも注目が集まっています。
カツオの“異変”はなぜ?海の変動がもたらす影響
専門家によると、今年の“異変”は主に黒潮の蛇行、海水温変動、豊富な餌環境によるものと見られています。
- 黒潮の流れが例年よりも複雑に蛇行し、新たな海域へカツオが移動した
- 海水温上昇で従来の回遊ルートが微妙に変化した
- 餌となる小魚やプランクトンが豊富に発生したため、カツオが従来よりも早く十分な脂肪を蓄えた
こうした要因が絡み合い、例年通りの「初ガツオ」「戻りガツオ」の旬や特徴に顕著な違いが生じているのです。とくに2025年の初ガツオは例年よりも脂がよく乗っており、「戻りガツオ」に近い個体も多いという指摘もみられます。
食卓で楽しむ“旬のカツオ”――おすすめの食べ方と選び方
旬のカツオはぜひ生食やたたきでその違いを味わいたいもの。ここでは両者のおすすめ食べ方を紹介します。
- 初ガツオ:刺身、たたき、カルパッチョ、漬け
- 戻りガツオ:炙り、ユッケ、ステーキ、照り焼き
買うときのコツは、身に透明感と弾力があり、血合いが鮮やかなものを選ぶこと。戻りガツオは脂ノリに注目し、初ガツオは鮮度重視で選ぶと良いでしょう。
消費者が感じるカツオの魅力と変化――「季節の便り」としての存在
全国のカツオ好きに行った調査では、「季節の変わり目を感じる魚」や「初物としての縁起の良さ」「脂身のとろける旨さ」など、それぞれのカツオの魅力が語られました。
- 初ガツオ:今年も無事旬が巡ってきた実感、さっぱりしてクセが少ない
- 戻りガツオ:しっとりなめらか、脂の旨みを存分に味わえる
カツオが豊漁で手ごろな価格になりやすい年は、自宅でも本格的な味を楽しむ絶好のチャンス。お取り寄せやオンラインショップを活用し、新鮮な季節のカツオをぜひ食卓で堪能してみてください。
2025年の展望――豊漁の今こそ「カツオ文化」を未来につなげて
今年のような「異常気象」が続くと、カツオの行方や市場、私たちの食卓のカレンダーまで変わっていく未来が懸念されます。消費者・漁業者・研究者が連携し、豊かな海と魚文化を次世代へとつないでいく力が一層求められています。
毎年の変化とともに、素材の味わい・季節感を大切に楽しめること――それが日本の魚食文化の魅力です。今年の記録的なカツオの豊漁と“異変”を、ぜひ前向きに味わい、次のカツオの「旬」を心待ちにしたいものです。