ウズベキスタン、日本と歩むインフラ・再エネ革命

ウズベキスタンは今、歴史的なインフラ再構築と再生可能エネルギー導入の大きな転換点を迎えています。双日株式会社による大規模インフラ投資、国際協力銀行(JBIC)やアジア開発銀行(ADB)による協調融資といった日本の官民連携が、資金・技術・ノウハウの側面から支え、新たな未来を形作ろうとしています。

ウズベキスタンの成長・変革の背景

ウズベキスタンは中央アジアの新興国として急速な経済成長を続けていますが、その一方で、老朽化した送配電インフラや慢性的なエネルギー不足という課題を抱えてきました。地震や洪水、気候変動の影響も大きく、より強靭で持続可能なエネルギーシステムへの転換が急務となっています。

  • 電力需要の急増—人口増加や産業発展により電力需要が年率5%以上の高いペースで拡大。
  • インフラの老朽化—かつてソ連時代に整備された施設が中心で、災害リスクへの脆弱性が顕著。
  • エネルギー供給の一極集中—化石燃料依存体質の脱却と、再エネ拡大が不可欠。

双日・植村社長が語る「1500億円インフラ投資」の狙い

2022年、双日株式会社は日本企業として初めてウズベキスタンに本格参入し、「約1500億円」という巨額のインフラ投資を決断しました。同社の植村幸祐社長は、ウズベキスタン国営送電公社と25年間の長期売電契約を締結し、2023年から火力発電所建設を本格化。2026年からの稼働を見込んでいます。この動きを起点に、ウズベキスタン政府との信頼も深まっており、24年にはタシケント駐在員事務所を再設置し、現地事業の加速に拍車をかけています。

  • 売電契約の意義—安定した長期収益基盤を確保し、現地インフラ発展と双方の信頼関係強化に寄与。
  • 先陣による波及効果—日本企業の新規参入第1号として他の日本企業にも大きな影響。
  • 人材や技術の橋渡し—技術移転や現地雇用創出など裨益効果は多岐に及びます。

植村社長は、「政府関係者は非常に柔軟で実務的。着実にプロジェクトを進めてきたことが評価され、日本とウズベキスタンの絆はより強固なものとなった」と語っています。こうした官民連携による地道な実績の積み重ねが、今後の持続可能な発展への基盤となっています。

国際協力銀行(JBIC)、総額2200億円の協調融資で再エネ開発を強力支援

日本の官民連携はさらに発展しています。国際協力銀行(JBIC)は、総額約2200億円の協調融資枠組みを通じて、ウズベキスタンの再生可能エネルギー推進を後押ししています。本支援は、海外インフラ事業の脱炭素化と、現地の脱化石燃料依存に向けた重要な一歩です。特筆すべきは、中国・ロシアといった中央アジアへの影響力が顕在化している国々に対し、日本独自の高付加価値な技術・資金の提供で存在感を示した点にあります。

  • ウズベキスタン初の本格的な再エネ公的融資—JBICではウズベキスタン初の再生可能エネルギー事業への大型ファイナンス。
  • 多国間の協調体制—海外政府系ファンドや現地金融機関と連携した「オールジャパン」体制で展開。
  • エネルギー安全保障・多極化—中ロ両国への過度な依存解消と中央アジアにおける日本影響力の拡大。

この2200億円のファイナンスには、太陽光発電所や蓄電プロジェクト2件が含まれており、日本企業による質の高いインフラ輸出戦略の一環として位置づけられています。

ADB、中央アジア最大級の太陽光・蓄電所に共同融資契約を締結

2025年夏、アジア開発銀行(ADB)はウズベキスタンで中央アジア最大規模の太陽光発電・蓄電プロジェクトに対する融資契約をパートナーとともに締結しました。ADB主導のこの動きは、エネルギー供給の安定化および脱炭素化の流れの加速器として、大きく注目されています。

  • 発電・蓄電容量ともに中央アジア屈指—ウズベキスタン国内のみならず、周辺国への電力融通基盤にも発展。
  • 雇用・教育機会の拡大—現地施工や運用を通じて多数の雇用創出、技術研修の機会も。
  • 長期的なグリーン成長モデルへの転換—再エネ比率向上と持続可能な社会基盤づくりを牽引。

このプロジェクトは、再生可能エネルギー・省エネルギーの技術導入と一体化し、日本の資金・技術力・システム運用ノウハウが効果的に活用されていく基盤となっています。

官民協働で推進されるJCM(二国間クレジット制度)による脱炭素事業

こうした大型投資・融資の裏側には、日・ウズベキスタン間で進展する「二国間クレジット制度(JCM)」の枠組みが存在します。パリ協定第6条に基づき、温室効果ガス排出量を定量的に削減し、双方の温暖化対策・持続的発展目標達成に貢献します。

  • 学校・病院・公共交通機関の効率化—エネルギー効率の高い日本技術の導入により、光熱費削減や快適な生活環境実現が期待。
  • 全国的な支援体制—国連開発計画(UNDP)、ウズベキスタン経済財務省、日本政府ほか多面的な支援が結集。
  • クリーンエネルギー比率25%を目指す挑戦—2030年までに温室効果ガス35%削減とクリーンエネルギー比率25%達成を公式目標としています。

UNDPウズベキスタン・エネルギー効率庁の代表は、「このプロジェクトは環境だけでなく、人々の快適な暮らしや健康、持続可能な未来のための取り組み」と語り、この改革が社会全体の幸福度を高めるものである点を強調しています。

日本・世界銀行によるノウハウ移転と人材交流の広がり

インフラ整備プロジェクトにおける課題の一つは、実践的な強靭化・高度化技術の現地への展開です。日本・世界銀行(WB)は2025年4月、ウズベキスタンの財務省・エネルギー省等からの代表団を日本へ招待し、東京・名古屋・高山などで送電網や中央給電指令所等を視察、先進的ノウハウを直接学ぶナレッジ交流プログラムを開催しました。このような人材交流・研修によって、現地職員のスキルアップ、政策担当者の実務的判断力の底上げが期待されています。

  • 災害・気候リスク対応—地震・洪水等の災害に強い送配電網設計のノウハウが共有されています。
  • 主要官庁・電力会社との面談—日本のエネルギー産業を担う主要プレイヤーによる知識移転。
  • 設計×運用の融合—施設見学やワークショップで理論と実務の両面から強靭化を学習。

インフラ再生・再エネ拡大の今後の展望

ウズベキスタンでは今後も再エネ比率の引き上げに向けた官民の取り組みが拡大し、新たな火力発電・太陽光発電プロジェクトの複数展開が計画されています。日本とウズベキスタン、そして国際機関による協調体制で、「強靭かつ持続可能なエネルギー未来」が着実に現実のものとなりつつあります。

  • 再エネ分野での国家目標の加速—2030年までにクリーンエネルギー比率25%を目指した法整備・制度改正が進展。
  • 今後の官民パートナーシップ強化—地方プロジェクトやIT分野と連携したスマートグリッド開発も期待されています。
  • 雇用創出・生活水準の向上—現地の人々の生活を直接豊かにする社会モデルの拡大。

ウズベキスタンでの官民一体となったインフラ再生・再エネ推進は、中央アジア全体にも好影響を及ぼすと見込まれています。今後も日本の技術・知見・投資が、その持続的発展を下支えしていくことでしょう。

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