SoFi Technologies、第3四半期決算で株価急騰──「AI時代の金融スーパーアプリ」が描く成長戦略

はじめに:

SoFi Technologies(ソーファイ・テクノロジーズ)が2025年第3四半期(Q3)決算を発表しました。この決算は、売上・利益ともに市場予想を大きく上回る好結果となり、株価は発表直後に急騰しました。長らく米国フィンテックの注目企業だったSoFiは、オンライン融資の枠を超え、「銀行×投資×決済×テクノロジー」という総合フィンテック企業への転換を着実に進めています。AIや暗号資産といったテクノロジー領域での新サービスも市場の注目を集めており、その成長性と収益基盤の強化が評価されています。

2025年第3四半期決算のポイント

  • 売上高は四半期過去最高の8.95億ドルを記録。前年同期比で大幅な増収となり、8期連続で黒字を確保しています。
  • 調整後EBITDAは2.49億ドルと高水準を維持し、営業・資本効率も改善しました。
  • 純利益は9,700万ドルで黒字を継続。株式市場ではこの収益の安定性が高評価され、投資家の関心を集めています。

財務健全性と資本効率の向上

SoFiは銀行ライセンスをフル活用した融資・資金調達体制を築き、低リスクなローン構成によってバランスシートを強化しています。Tier1資本比率は20.0%と、規制基準を大きく上回る水準を維持。自己資本比率も16.1%で前年からの改善が見られました。有形純資産(Tangible Book Value)は71.9億ドルに増加し、ROTCE(株主資本利益率)は前年の3.9%から8.5%へ大幅上昇となっています。

非金利収益の拡大と事業多角化

  • カード、投資、決済、APIなど非金利部門が急成長。これが利ザヤ収益(伝統的な銀行の貸出・預金スプレッド)への過度な依存を回避し、収益基盤の安定化に寄与しています。
  • 特にAIによる投資・送金サービスや、暗号資産を活用したグローバル決済「SoFi Pay」などが新たな成長エンジンに。都市部のミレニアル世代やZ世代を中心に支持を広げています。

通期ガイダンスと今後の見通し

  • SoFi経営陣は2025年通期で純利益率13%を目標とし、2026年にさらに拡大させる方針を明らかにしています。
  • CEO Anthony Noto氏は「2026年には10億ドルの純利益を目指す」と宣言。AI・暗号資産・テックプラットフォーム事業を軸に、金融業界における長期的な競争優位性を追求しています。

株価の動向と市場評価

  • 2025年10月28日時点で、SoFiの株価は急騰し、時価総額は359億米ドルに達しています。
  • 1株当たり純利益(EPS)は0.46ドルまで回復し、PER(株価収益率)は65.22倍、PBR(株価純資産倍率)は5.03倍に。これにより、AI株価診断は「割高」と評価されつつも、証券アナリストによる目標株価は18.96ドルで、中立的な見方が大勢を占めています。
  • 比較的大きな株価変動を伴うものの、調整を経て投資家からは成長期待が根強く持たれています。

SoFiが持つ「AI時代の金融スーパーアプリ」構想

SoFiの強みは、金融サービスとテクノロジーの融合モデルです。従来型の銀行にはなかったUX重視、スピード、データ活用を武器に、ミレニアル・Z世代を中心とした新しい金融消費層を取り込んでいます。金融商品をワンストップで利用できる「スーパーアプリ」化を推進し、以下の分野で圧倒的な存在感を発揮しています。

  • パーソナルローンや住宅ローンなど伝統的な金融商品
  • デビットカード、投資口座、暗号資産取引
  • AIによる資産運用ロボアドバイザー
  • APIを生かしたサードパーティ連携の拡充

競争環境と課題

米国フィンテック業界は、銀行・証券・テック企業の競争が過熱中。SoFiもライバルであるRobinhood、Block(旧Square)、Nubankなどと市場シェア獲得競争を展開しています。一方で、サービス多角化に伴う経営資源分散や、規制リスク(銀行業ライセンス維持・健全性規制)にも直面しています。今後は、個人情報・資産保護のAI倫理や、グローバル事業展開にともなう地政学リスクにも注意を払う必要があるでしょう。

今後の投資家注目ポイント

  • 引き続き非金利収益率の推移が注目材料。カード・暗号資産・API分野での収益寄与度がカギ。
  • 新規サービス(AI投資アシスタントやSoFi Pay等)のユーザー獲得ペースと継続率。
  • 財務面では、Tier1資本比率・自己資本比率の健全性維持と、株主還元ポリシーの方針。
  • 株価指標(PER・PBR)の動向と、証券アナリストのコンセンサス予想(引き続き目標株価は18~20ドル台)。

まとめ

2025年第3四半期のSoFi Technologiesは「金融とテクノロジーの理想的な融合」を体現する成長企業として、大きな転換点を迎えたと言えるでしょう。決算の好調さ、財務の健全化、新サービスの台頭がそろい、株価も大きく上昇。今後もミレニアル・Z世代を中心に金融サービスのデジタル化が進む中、SoFiの「AI時代の金融スーパーアプリ」戦略から目が離せません。

参考元