SMBC日興証券、米ジェフリーズと日本株事業を統合へ―グローバル競争力強化と業界変革の最前線
日本証券業界に新たな地殻変動―SMBC日興、ジェフリーズと歴史的提携
SMBC日興証券は2025年9月、米国総合証券大手ジェフリーズ(Jefferies Financial Group Inc.)と戦略的資本・業務提携をより強固なものとし、日本株ビジネスを核とする大規模な統合に乗り出すことを発表しました。この提携は、日本国内だけでなくグローバルな資本市場の競争構造にも大きな影響を与えるとみられ、証券業界や顧客の関心が一気に高まっています。国内証券最大手のひとつであるSMBC日興証券が米国資本市場に強みを持つジェフリーズと本格的に手を組む狙いは何か、本記事ではその全貌と背景、今後の展望に迫ります。
経緯と概要:合弁会社「SMBC日興ジェフリーズ証券」の設立
合弁事業の中核となるのは、「SMBC日興ジェフリーズ証券株式会社」の新設です。2027年1月の開業を目指し、日本国内での日本株ホールセール(機関投資家向け)事業を統合します。SMBC日興証券が過半を出資する連結子会社となり、ECM(株式資本市場)、セールス&トレーディング、エクイティリサーチなど、日本株関連業務が一体的に運営されます。海外における日本株事業もジェフリーズの各拠点に集約され、国際的なネットワークと知見の融合によって、グローバル競争力の大幅な向上が見込まれています。
- 合弁会社「SMBC日興ジェフリーズ証券」を日本に設立
- SMBC日興の海外日本株事業はジェフリーズの現地拠点へ集約
- ECM、セールス&トレーディング、調査(リサーチ)部門などの機能を包括
- SMBC日興が過半を出資する子会社体制
- グループ全体の一体運営確保のため、中間持株会社の設立も検討
統合の業界背景と目的―競争激化する日本株市場での成長戦略
近年、日本株市場は国内外の競争が加速しており、投資家ニーズも多様化。SMBC日興証券にとって、ジェフリーズの持つグローバルな販売力や調査体制、テクノロジー資源は、日本市場だけでなくアジア、北米、欧州を含む広域な顧客基盤の獲得につながると見られています。これまで両社は一部で協働を進めてきましたが、今回の統合でより強固な協働体制が可能となります。
- ジェフリーズのグローバルネットワークを活用することで新たな海外投資家の開拓
- エクイティリサーチの高度化による付加価値の提供
- 多様な証券商品や取引手法による顧客提案力の強化
- 競争の激化に対応し、日本株業務での圧倒的なシェア獲得へ
証券業務のみならず、今後は投資銀行業務全般での統合や協業も視野に入れており、法人向け事業、M&A助言、資金調達(エクイティおよびデット)の各分野でのトップポジション確立も目指します。
体制と資本関係の詳細
今回の統合にともない、SMBCグループはジェフリーズへの経済持分(出資比率)を従来の約14.5%から最大20%へ引き上げ、出資額は約1350億円に上る見通しです。ただし、議決権は従来通り5%未満にとどめられ、グループ経営の独立性も維持されます。利益面では、投資三年目でのROE(自己資本利益率)13%程度、五年目までに協働効果500億円(うち日本株事業100億円)など高い実効性が試算されています。
- ジェフリーズへの経済持分:最大20%(議決権は5%未満)
- 資本出資額:約1350億円(2025年9月の株価基準)
- 中間持株会社の新設でグループの一体運営促進
- 利益貢献:5年目に500億円(日本株事業100億円)を展望
吉岡社長の展望―「日本株事業でトップをめざす」
SMBC日興証券の吉岡秀二社長は、「合弁会社において日本株事業で国内外トップになることを目指す」と意欲を示しています。また、法人向け日本株事業のみならず、将来的には投資銀行業務全般にわたり検討を進めるとコメント。今回の合弁および統合は、単なるスケールメリット追求にとどまらず、多様な専門性・サービスの融合を通じて付加価値の高いソリューションを顧客に届けることが狙いです。
利用者・取引先・業界への影響
- 機関投資家・法人顧客:グローバルIR(投資家向け説明)、M&A案件の発掘、先進的なリサーチや高度なトレーディングサービスなどにおいて、国際水準の金融サービス恩恵を受けることが期待されます。
- 国内企業:海外IR、株式資本調達、事業再編や国際展開を支える多様な金融ソリューションがよりダイナミックに利用可能となります。
- 証券業界全体:今回の事業統合を契機に、グローバルな競争軸やアライアンスの重要性が改めてクローズアップされ、業界全体の再編や新提携の加速も予想されます。
今後の課題と注目ポイント
- 2027年1月開業を目指して準備が進みますが、統合後の円滑なオペレーションや企業文化の融合、シナジー創出の実効性等、着実な実施が問われます。
- 提携・統合の進展状況や、システムインフラの相互活用、国内外の競合他社との一段と厳しい競争も注目点です。
- 投資銀行分野での協業拡大や新サービス開発も、今後の焦点となるでしょう。
本件は、国内証券業界のみならずグローバル資本市場にとっても重要な転換点となる可能性があります。SMBC日興証券とジェフリーズ、両社の今後の展開に引き続き関心が集まっています。