幼稚園と短大が守られた――頌栄短期大学・頌栄幼稚園、閉学・休園を撤回し存続へ

兵庫県神戸市で長年にわたり幼児教育と保育者養成を支えてきた
頌栄短期大学頌栄幼稚園が、一度決まっていた
「募集停止・閉学・休園」の方針を撤回し、存続することになりました。

運営法人である学校法人頌栄保育学院は、
2025年12月2日付で学校法人神戸学園グループに事業を承継したと発表し、これに伴い閉学・休園の方針を取りやめ、
学生・園児募集の早期再開を目指す方針を示しています。

一度は決まっていた「募集停止・閉学・休園」

頌栄短期大学は、現存する日本最古のキリスト教主義の保育者養成校として、
これまでにおよそ9,000人の保育人材を全国に送り出してきた、伝統ある短期大学です。

しかし、ここ数年の少子化による志願者減少の影響は大きく、
2024年12月には、2026年度以降の学生募集停止と閉学が発表されていました。

また、併設の頌栄幼稚園についても、同様に休園が決まっており、
この地域で長く親しまれてきた幼児教育の場が失われるのではないかと、
保護者や卒業生、地域から心配の声が上がっていました。

神戸学園グループが事業承継を発表

そうしたなかで2025年12月、状況が大きく変わりました。
学校法人頌栄保育学院は、2025年12月2日をもって、
学校法人神戸学園グループに事業を承継したと公表しました。

神戸学園グループは、神戸市内で
専門学校高等専修学校などを運営する法人で、
1965年に創設され、職業教育や多様な学びの場を提供してきたグループです。

神戸学園グループ側は、頌栄短期大学・頌栄幼稚園について
兵庫県・神戸市を代表する伝統校であり、その灯を消してはならない」との思いから、
金融機関とも連携しながら存続の道を探ってきたと説明しています。

閉学・休園を「撤回」して存続へ

事業承継により、頌栄保育学院は、それまでに発表していた
頌栄短期大学の閉学および頌栄幼稚園の休園を正式に撤回しました。

公式発表では、「今後、早期の学生・園児募集再開に向けて取り組んで参ります」
と明記されており、短大も幼稚園も名称は変更せず、存続する方針が示されています。

これにより、来年度以降、募集停止や休園によって
「もう通えなくなるかもしれない」と不安を抱いていた
受験希望者や保護者、地域の関係者にとって、大きな安心材料となりました。

頌栄短期大学の歩みと役割

頌栄短期大学のルーツは、1889年
アメリカ人宣教師A.L.ハウ氏が、キリスト教主義の幼稚園を設立するために来日したことにさかのぼります。

以来、頌栄は136年以上にわたり、神戸の地で
幼児教育保育者養成を担ってきました。

  • 現存する日本最古のキリスト教主義保育者養成校であること
  • 全国に約9,000人の保育人材を送り出してきたこと
  • 日本の幼児教育の礎を築いてきたと評価されていること

こうした歴史を背景に、頌栄短期大学では、
「子どもを深く理解し、寄り添える保育者」を育てることを大切にしてきました。
信頼を寄せる卒業生も多く、保育現場で「頌栄出身の先生」として親しまれている例も少なくありません。

頌栄幼稚園が大切にしてきた幼児教育

併設の頌栄幼稚園は、キリスト教の精神に基づき、
「生きる力の根っこを育む」ことをモットーに運営されてきました。

自然とのふれあい、人との関わり、祈りや感謝の心など、
子どもたちが心身ともに健やかに育つことを大切にする教育方針は、
地域の保護者から「心が育つ幼稚園」として長く支持されてきました。

今回の存続決定により、こうした幼児教育の実践と、
それを支える幼稚園教諭・保育士養成の連携が、
これからも継続していくことになります。

教育理念の「引き継がれる思い」

神戸学園グループは、A.L.ハウ氏が掲げた教育理念である
「世界同胞主義」に強い共感を示しています。

その理念は、「世界に住むすべての人間はきょうだいであることを認識し、
互いに愛し合うことができるように」
という考え方で、
人と人が支え合い、違いを超えて尊重し合う社会を目指すものです。

神戸学園グループが進めてきた、外国人材の育成
環境教育・道徳教育などの取り組みと、
頌栄が大切にしてきた自然教育人格教育の考え方には、
高い親和性があるとされています。

つまり今回の事業承継は、単なる「経営の引き継ぎ」ではなく、
教育理念を未来へとつなぐ選択でもあると言えます。

少子化のなかで「幼稚園」と「保育者養成」を守る意味

日本全体で少子化が進むなか、
幼稚園・保育園や大学・短期大学の統廃合、定員割れといったニュースが相次いでいます。
その流れの中で、頌栄短期大学と頌栄幼稚園も大きな決断を迫られました。

しかし、「子どもと向き合える保育者をどう育てていくか」、
「地域で子どもを育てる幼稚園をどう守るか」は、
今後の社会を考えるうえで非常に重要なテーマです。

今回の存続決定は、次のような意味を持ちます。

  • 伝統ある保育者養成校が続くことで、質の高い保育人材を育て続けられる
  • 地域に根ざした幼稚園が残り、家庭と地域をつなぐ役割を果たし続けられる
  • 幼稚園と短大が連携し、実践に根ざした学びを提供しやすくなる

少子化の時代だからこそ、一人ひとりの子どもと丁寧に向き合う
幼児教育と、それを支える養成教育の場をどう守るかが問われています。
頌栄の存続は、その一つの答えを示した事例と言えるでしょう。

今後の予定と注目ポイント

現時点で、頌栄短期大学・頌栄幼稚園は、
閉学・休園の撤回事業承継の完了を公表しており、
これから関係機関との調整を進めながら、
学生・園児の募集再開時期などを詰めていく段階にあります。

神戸学園グループは、「大学と園で子どもを育て、地域を支えるキャンパスとして、
神戸から世界へ教育の新しいモデルを提示していく
」としています。

今後のポイントとしては、次のような点が挙げられます。

  • 学生募集・園児募集の具体的な再開時期と、その広報の仕方
  • 新たなグループ体制のもとでのカリキュラムや連携の強化
  • 地域との協働や、保護者・卒業生を交えた学校づくりの進め方

いずれにしても、突然の閉学・休園の知らせから一転、
存続が正式に決まったことは、
在学生、保護者、卒業生、そして地域にとって
大きな安堵と期待をもたらしています。

幼稚園、そして保育者を育てる短期大学という、
子どもと未来に直結する教育の場がどのように再出発していくのか、
今後も注目されます。

参考元