福祉・介護業界の人手不足を救う新たな担い手 ― 50代~70代向け就職説明会、愛媛で開催
はじめに ― 深刻化する介護人材不足の現状
日本が抱える急速な高齢化は社会全体に大きな影響を与えています。とりわけ福祉・介護の現場では、利用者の増加に対して支える側の「人手不足」が全国で深刻な課題となっています。
愛媛県のみならず全国的に見ても、2025年には「団塊の世代」全員が75歳を迎えることから、2040年にかけて介護ニーズは右肩上がりで増大する見通しです。専門家の推計によると、2025年度末に全国で約245万人の介護人材が必要とされています。2016年度比で約55万人、年6万人程度の人材確保が喫緊の課題です。
愛媛県の介護現場における現実
愛媛県に目を向けると、2021年度時点で約3万1千人の介護職員が在籍していますが、2040年までには約6,000~7,000人が不足するという厳しい推計も報告されています。離職率も全国平均より高めであり、県全体での「職場定着」や「人材のすそ野の拡大」は急務となっています。
高齢者人口の増加と介護需要の拡大
背景には、高齢者人口の劇的な増加があります。2025年には全国で75歳以上の後期高齢者が2180万人、65~74歳の前期高齢者が1497万人に達し、「認知症高齢者」も675万人になると予測されています。これは65歳以上の約5人に1人が認知症という状況です。
介護現場に求められるのは、量だけでなく「質」の高いケア、特に認知症をはじめとする多様なニーズへの対応力です。しかし、現場の多忙や慢性的な人手不足で一人ひとりに十分な時間をかけられない現実があります。
人材不足への新たな一手 ― 50代~70代向け就職説明会の開催
こうした厳しい情勢を打開するため愛媛県内では、福祉・介護の現場で働くことに関心のある50代~70代の方々を対象にした「就職説明会」が開催されています。
これまで主に若年層や現役世代に頼っていた介護現場ですが、今後は健康で意欲のあるシニア層にも広く門戸を開く「新しい働き方の担い手」としての期待が集まっています。人生100年時代、定年後も社会参加を望む人は少なくありません。他者との交流、生きがいづくり、そして”やりがい”を感じられる仕事として福祉分野へチャレンジする方が増加しています。
なぜ50代~70代が注目されるのか?
- 生活経験・人生経験が活きる:利用者さんや同僚への温かい配慮や柔軟な対人対応は、豊かな経験を持つ中高年の方ならではの強みです。
- 「介護助手」としての参画:資格や高度な知識は不要な「介護の周辺業務」など、負担の少ない業務から携われます(例:食事の配膳・シーツ交換・清掃・見守りなど)。
- 社会参加・生きがい・健康づくり:週に数回・短時間勤務で無理なく続けられ、仲間づくりや地域貢献、健康増進につながる。
- 職場が多様性を持つことで環境が活性化:年齢層の幅が広がることで職場内コミュニケーションが豊かになり、世代を超えた学びや支援の輪が広がります。
説明会の内容と目的
説明会では、福祉・介護の仕事が初めての方向けにも分かりやすく業界の現状や働き方、仕事内容を伝えています。実際に現場で働く職員の声を聞く場や、簡単な体験・交流コーナー、個別相談など、参加者が安心して一歩を踏み出せる工夫がなされています。
また、資格取得支援や研修制度、短時間パート・介護助手など、多様な働き方も紹介され、自分のペースや体力、希望に応じて働き方を選択できるのも大きな特徴です。
介護助手とは ― 新しい働き方で業界を支える
愛媛県でも本格的に取り組まれている「介護助手育成事業」は、専門職が担う業務と周辺業務(補助業務)を分けることで、無資格・未経験の方でも安心して就労できる仕組みを整備しています。
● 専門職が専門業務に集中できる
● 過重労働の軽減、離職防止に繋がる
● 定年退職後の第二の人生にもマッチ
介護助手として働くことで、地域社会全体でお年寄りを支える「共助」の輪が大きく広がります。
介護現場からの声 ― 人生経験が活きる現場づくり
「介護助手として就職した60代後半の方の多くが『思っていたより自分にもできることがたくさんあり、職場のみなさんとのコミュニケーションが楽しい』と語っています。
認知症ケア担当の方からは『先輩がいるから職場がほっとします』『利用者さんも年齢の近いスタッフが身近にいるだけで安心されるようです』という声も聞かれます。
行政・地域の後押しと今後の課題
愛媛県をはじめ多くの自治体も主体となり、労働環境の改善、処遇向上、資格取得や研修の支援など積極的な策を講じています。また、離職防止の環境整備、職場定着のためのメンタルサポート、相談窓口の拡充など、「働き続けやすい仕組みづくり」にも注力しています。
一方で、「介護職は体力的負担が大きい」「賃金が低い」などマイナスイメージが先行しがちです。実際には、介護助手など無理のない働き方や、働くことで心身の健康を維持し生きがいを感じるケースも多く、行政や業界団体による正確な情報発信の強化も重要といえるでしょう。
地元で支え合う ― 介護人材の地産地消
愛媛県をはじめ、各地では地域住民自身が「地元福祉」に関わることを奨励しています。地元出身の中高年の方が地域の介護現場で活躍することで、利用者さんの安心感や信頼も自然と高まります。
地域資源の積極活用、顔の見える関係性、多世代交流の促進といった、“地域密着型”の福祉のかたちが今求められています。
まとめ ― あなたにもできる、一歩から広がる「支え合い社会」
超高齢化・人材不足の波が押し寄せる中、福祉・介護の担い手として「50代~70代」の新たな活躍に期待が集まっています。これまでの人生で培った経験や知恵が地域を支える力となり、自らの生きがい・健康づくりにもつながる仕事です。
新たな挑戦に迷う方も「少しだけ話を聞いてみたい」「どんな仕事があるの?」と気軽な気持ちで、ぜひ説明会に足を運んでみてはいかがでしょうか。
地域、家族、社会全体で支え合いの輪を広げていく力強い第一歩となるはずです。