滋賀県の地価調査 ~住宅地17年ぶりに上昇、進む二極化~

はじめに

2025年の滋賀県の地価調査の結果、住宅地の価格が17年ぶりに上昇したことが大きなニュースとなっています。国内の多くの地域で地価の回復傾向が見られる中、滋賀県もついにその波に乗りました。特に草津市や大津市、守山市など主要な都市部では、顕著な地価上昇が確認され、県内での二極化現象も進んでいます。

滋賀県の地価動向と全体傾向

滋賀県の2025年度(令和7年)地価公示価格の平均68,119円/㎡(坪単価225,200円)で、前年比+1.0%の上昇となりました。1995年からの31年間で見ると、2025年の価格は10番目に高く、近年緩やかながらも着実な上昇トレンドが続いています。
直近10年間(2016年~2025年)での年平均成長率はおよそ0.98%となっており、全用途平均も2年連続で上昇するなど、滋賀県の地価市場は安定した投資環境を提供しています。

住宅地が17年ぶりに上昇 その背景と要因

今回特筆すべきは住宅地の地価が17年ぶりに上昇した点です。滋賀県は2008年のリーマン・ショック以降、県全体の住宅地地価が下落傾向にありましたが、2025年の調査でついに上昇に転じました。

  • 新型コロナウイルス感染拡大以降の生活様式の変化・住環境重視の価値観が浸透したこと
  • 都心部への通勤が減少し、 比較的自然が多く広い住環境を求める層が滋賀県に流入
  • 交通インフラや生活利便施設の充実が進行
  • 子育て世代を中心とした新規住民獲得策の成果が表れたこと

など、複合的な要因が影響しています。

市区町村別の地価動向とランキング

2025年1月の市区町村別地価ランキングによると、草津市の地価が県内トップ(165,800円/㎡、前年から+6.08%)となりました。続いて大津市(102,600円/㎡、+2.29%)、守山市(102,600円/㎡、+3.85%)、栗東市(87,000円/㎡、+3.57%)、野洲市(67,700円/㎡、+3.04%)と、都市圏を中心に上昇が目立っています。

  • 草津市:滋賀県内最高値・上昇率共に最大。急速に都市化が進み、県内外からの流入が続く。
  • 大津市:県庁所在地で利便性が高く、地価も安定。比叡山や琵琶湖の景観も人気。
  • 守山市・栗東市:新興住宅地の開発が活発で、一戸建てやマンション供給も積極的。
  • 野洲市・近江八幡市:生活利便性の高さや交通の利便性向上で地価が上昇傾向。

一方で、長浜市や高島市などの北部や山間部では需要減少や人口減が続き、わずかながら下落を記録しています(長浜市-0.27%、高島市-1.49%など)。これにより、滋賀県内での「地価の二極化」がますます鮮明となっています。

商業地も高い伸び 関西圏全体の影響

滋賀県のみならず、2025年の関西圏全体では商業地地価が4府県(滋賀・京都・大阪・兵庫)で上昇幅を拡大し、特に滋賀県の都市部では新しい商業施設や大規模ショッピングモール、オフィスビルの建設が目立ちます。これに伴い、商業地の地価にも好影響が及びました。

  • 草津駅周辺:オフィスビルや駅ビル商業施設の開発が活発。新規テナント進出で地価上昇。
  • 大津駅周辺:観光資源や歴史的な街並み需要。新たな観光戦略との相乗効果。

こうした都市部の活況が、住宅地地価の押し上げ要因にもなっています。

推移と地価上昇の恩恵・影響

ここ数年の地価推移を振り返ると、2023年までは-0.2%、2024年+0.5%、2025年+1.0%と安定した伸びが続いています。比較的堅調な伸長は、不動産事業者や投資家だけでなく既存の地権者や住宅所有者にも恩恵をもたらしています。

  • 資産価値の上昇:住宅や土地の評価額が上がることで、所有者の資産形成につながります。
  • まちづくり・都市基盤強化:自治体も税収増加や投資誘引でまちづくりに再投資が可能。
  • 生活利便性の向上:人口増に伴い、商業施設や公共インフラの充実が進みます。

一方で、都市部の地価上昇は住宅購入希望者の負担増にもつながり、「手に届く住宅」が減ってしまう可能性への懸念も生まれています。「二極化」の進行は地価の地域格差を拡大し、過疎地域の不動産市場の停滞や空き家の増加など、社会問題への波及も指摘されています。

地域格差と今後の展望

地価が顕著に上昇している地域と、そうでない地域との差は拡大傾向にあります。
・草津市・守山市・栗東市といった交通の便や生活環境が優れたエリアは今後もしばらく高値傾向が続くと考えられます。
・対照的に、人口減が進む北部・山間部エリアでは空き地・空き家問題への対応が行政に強く求められるでしょう。

近年、県内各自治体では空き家対策や移住促進施策、地域ブランドの強化など多様なまちづくり戦略が展開されています。地価の上昇による一時的な活況に留まらず、「地域全体の活力」や「住み続けられる環境づくり」をどう実現するかが今後の鍵となります。

まとめ

  • 滋賀県の2025年の住宅地地価は17年ぶりに上昇し、商業地も堅調な伸びとなった。
  • 特に草津市や大津市、守山市など都市部は上昇が顕著で、人口流入・開発が続く。
  • 一方、北部や過疎地では地価が横ばいまたは下落し、二極化の進行が浮き彫りに。
  • 資産価値向上やまちづくりの推進と並び、住民負担増や行政課題も顕在化。
  • 今後は「持続可能な地域社会」のためのバランスある政策が一層求められる。

県民の声と今後の期待

地価上昇を歓迎する声もあれば、住宅購入の難しさや地域格差に悩む声も聞かれます。今後は、若い世代や子育て世代、高齢者、移住者など多様なニーズに応える住みよいまちづくりが必要です。

滋賀県は「琵琶湖を中心とした豊かな自然」と「都市インフラの進化」を両立する強みがあります。地価上昇を一過性の現象と捉えず、県内全体が豊かさを享受できる持続的な成長への道筋を、今後も官民一体で歩んでいくことが期待されます。

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