【三重県】ダイズを襲うカメムシの異常発生―過去10年で最多、緊急注意報発令
三重県内のダイズ生産地で、「ミナミアオカメムシ」など吸実性カメムシ類の発生が過去10年で最も多くなり、農家や関係機関に大きな警戒が広がっています。2025年9月22日、三重県病害虫防除所は、県内全域での急増を受けて「病害虫発生予察注意報(第五号)」を発表し、追加防除を含めた早期対策を強く呼びかけました。この事態の背景や被害、対策について、最新の情報と農業現場の声をもとに詳しくお伝えします。
ここ数年で類を見ないカメムシ被害――誘殺数や寄生率が過去最多
2025年8月下旬から9月中旬にかけて、三重県松阪市などの畑では、予察灯におけるミナミアオカメムシ類の誘殺数が3,419頭に達しました。これは過去10年の平均(1,318頭)の2.6倍となる異常値で、特に9月13日~15日の3日間だけで1,249頭の急増が報告されています。
また、9月のダイズ巡回調査でも、吸実性カメムシ類の寄生株率は4.4%(平年2.0%)、寄生虫数も2.6頭/25株(平年1.2頭/25株)と大きく上回りました。
被害の実態―なぜカメムシが危険なのか?
- カメムシ類は、ダイズの子実(豆)を吸汁することで、しなびや変色、品質低下を引き起こします。
- 斑点米カメムシ類は、米やダイズなど穀物・豆類の被害拡大が指摘されており、食味や流通の評価低下につながります。
- 被害が進行すると、等級の低下や農家の経済的損失となるばかりか、消費者の手に届く製品の品質にも影響します。
なぜこれほど増えたのか?―気象と生態系の変化
今回の異常発生には高温傾向が大きく影響しています。9月18日名古屋地方気象台の気象予報では、9月中も気温が高い日が続き、これがカメムシの活動に非常に適していたと指摘されています。
さらに、カメムシ類は移動性が高く、水稲ほ場からダイズほ場に大規模な移動をすることが観察されています。一度農地に定着すると被害が短期間で広域へ及ぶため、迅速な対応が不可欠になっています。
分布域の拡大:斑点米カメムシの新たな脅威
かつては限定的だった「斑点米カメムシ類」の分布域も拡大しつつあると、農研機構をはじめとした研究機関が報告しています。これにより、これまで影響が少なかった地域でも今後は定期的な注意が必要になっています。
分布が広がることで、防除方法やタイミングも多様化しつつあり、従来型の対応では追いつかなくなる恐れが出てきました。
三重県の対応と農家への呼びかけ
三重県病害虫防除所は、以下の点に特に注意を呼びかけています:
- 吸実性カメムシ類による被害予防のため、ダイズの莢伸長期(開花20日後)と子実肥大期(開花40日後)の2回に分けた防除を徹底すること。
- カメムシは移動範囲が広いため、無人ヘリコプターなどを活用した広域一斉防除が効果的であること。
- 1回目の防除が遅れた圃場や未実施地では、積極的な追加防除が強く推奨されています。
- 品種によって成熟時期が異なるため、早生品種(例:サチユタカA1号)はフクユタカなどより早めの防除が必要です。
- 薬剤抵抗性の発達を防ぐため、異なる系統の農薬をローテーションで使用することが推奨されています。
専門家の声と今後の課題
三重県の研究者や農家からは、「従来の経験則では対応しきれない規模。情報共有や迅速な決断が肝心」との声が多く聞かれます。特に、薬剤に対する抵抗性発達や、環境変動による新たなリスクへの備えが求められています。
農研機構などからは、今後さらに分布が拡大する可能性を指摘し、「発生予察やデータに基づく早期防除」「持続可能な農薬使用」「生態系モニタリングの強化」が今後の重要な課題とされています。
農家・消費者にできること
- 農家は防除のタイミング・内容を地域の予察情報や市町村JA、県の指導に従って柔軟に対応しましょう。
- 消費者は、品質保持のための農家や流通業者の努力に理解を寄せ、地元産ダイズや農産物の応援を続けることも重要です。
- 地域全体で情報共有や連携が進めば、この困難を乗り越えられると期待されています。
今後の見通しと注意喚起
9月後半以降も気温が高めに推移するとの見通しが続いており、カメムシの活動期も長引くことが懸念されています。農家の皆さんには、今後も随時発表される病害虫発生予察情報を注視し、的確な対応に努めるよう重ねて注意が呼びかけられています。
また、被害が深刻化しないためにも「予防的防除」「区域での協同対策」などが今後一層重要になるでしょう。
参考情報
- 三重県病害虫防除所「病害虫発生予察注意報第5号」(2025年9月22日発表)
- 農研機構ほか、斑点米カメムシ分布域拡大に関する報告