スカニア、「NEXT ERA」で中国市場に本格参入 発売前に1000台完売と世界初のスタント成功で存在感
スウェーデンの商用車大手スカニア(Scania)が、中国専用の新型トラック「NEXT ERA(ネクスト・エラ)」を発表し、発売前にもかかわらず1000台を完売したことが明らかになりました。
さらにスカニアは、自動運転トラックを活用した世界初のスタントにも成功し、技術力とブランド力の両面で大きな注目を集めています。
中国専用トラック『NEXT ERA』とは?
「NEXT ERA」シリーズは、スカニアとフォルクスワーゲン・グループの商用車部門であるTRATON(トレイトン)グループが共同で、中国市場向けに開発した新しいトラクタートラックの製品群です。
世界最大のトラック市場である中国のニーズに合わせ、長距離大量輸送に特化した仕様や、プレミアムなカスタマイズにも対応できるラインナップが用意されています。
スカニアは従来から欧州やブラジルなどで高性能トラックを展開してきましたが、「NEXT ERA」は中国専用ブランド/シリーズとしての性格を持ち、現地のデジタルエコシステムや運送事業者のビジネスモデルに最適化されていることが特徴です。
発売前に1000台完売、その背景にある中国市場の期待
レスポンスの報道によると、スカニアとTRATONが発表した中国専用トラック「NEXT ERA」は、正式発売前の段階ですでに1000台分の受注が成立しているとされます。
この数字は、中国の物流企業や輸送事業者が、燃費性能や稼働率、デジタルサービスなどに強みを持つ欧州系プレミアムトラックへの期待を示すものといえます。
中国市場は、コスト重視の車両から、トータルの運行効率や持続可能性を重視する車両へと移行しつつあるとされています。
スカニアは、長距離輸送や大量輸送向けの「NEXT ERA」を投入することで、この変化に応えようとしており、今回の1000台完売は、その戦略が市場に受け入れられつつある証拠と見ることができます。
如皋工場から中国・アジアへ供給 年産5万台体制
「NEXT ERA」を生産するのが、中国・江蘇省如皋(Rugao)に新設されたスカニアの工場です。
この拠点は、スカニアにとって欧州、ブラジルに続く3番目のグローバル生産拠点であり、さらに西側商用車メーカーとしては初の単独出資工場という点でも注目されています。
- 所在地:江蘇省如皋市
- 敷地面積:およそ80万平方メートル
- 年間生産能力:5万台規模
- 新規雇用:およそ3000人を見込む
- 総投資額:約20億ユーロ(約3500億円規模)
この工場で生産されるトラックは、中国国内だけでなく、周辺のアジア諸国など輸出市場にも供給される計画で、中国とアジア全体の物流を支える重要な拠点になると位置づけられています。
生産は、まず既存の大型トラックやトラクターから開始し、その後2026年前半に「NEXT ERA」シリーズの生産・発売が予定事前受注・市場投入フェーズが順調に進んでいることを示していると考えられます。
持続可能性とデジタル化を重視した新拠点
如皋工場について、スカニアは「エネルギー調達から廃棄物管理まで、あらゆる部分で持続可能な事業体制を敷いている」と説明しています。
再生可能エネルギーの活用や効率的な生産ラインの構築などを通じて、環境負荷の低減と高い生産性の両立を目指している点も大きな特徴です。
また、上海の研究開発センターと連携し、中国のパートナー企業との共同開発能力を高める体制も構築されています。
これにより、中国市場で求められるコネクテッドサービスやデジタルフリートマネジメントなどを迅速に商品へ反映させ、「NEXT ERA」をはじめとする製品群の競争力を高めていく狙いがあります。
世界初、自転車で「自動運転トラック2台の間を飛び越える」スタントに成功
スカニアは製品発表にとどまらず、自動運転技術と安全性をアピールする取り組みとして、世界初の挑戦とされるスタントにも成功しました。
それが、「自動運転トラック2台の間を自転車で飛び越える」というものです。(レスポンス報道より)
このスタントでは、
- 自動運転制御されたスカニアのトラック2台が平行して走行
- その2台の間に設けられたスペースを、ライダーが自転車でジャンプして飛び越える
- トラックの速度や車間距離は自動運転システムにより正確に制御される
という構成がとられました。
成功には、ライダーの高度な技術はもちろん、車両側の自動運転システムが極めて精密に速度と位置を制御できることが欠かせません。
このチャレンジは、単なる話題作りにとどまらず、「スカニアの自動運転トラックが、過酷な条件でも安定した挙動を保てる」というメッセージを、視覚的にわかりやすく伝える狙いがあると考えられます。
トラックの自動運転は、隊列走行や高速道路での自動化など、長距離輸送の効率化に直結する技術として期待されており、スカニアがこの分野でも積極的に開発を進めていることを印象づける出来事となりました。
スカニアの戦略:プレミアム×大量輸送で「次の時代」へ
「NEXT ERA」という名称には、文字どおり「次の時代」を切り開くという意味が込められています。
スカニアはこのシリーズを通じて、
- 中国やアジアの長距離大量輸送セグメント向けに最適化した車両を提供すること
- 現地に根ざしたデジタルエコシステムと連携し、運行効率や安全性を高めること
- 将来的には、そこで磨いた技術をグローバル市場にも展開していくこと
といった長期的なビジョンを示しています。
中国専用の新シリーズでありながら、その技術やビジネスモデルは、いずれ世界各地のスカニア車にも反映されていくとみられており、中国はスカニアにとって「実験場」であり「成長エンジン」の両方の役割を果たす市場になりつつあります。
今後の展望
如皋工場はすでに立ち上がり、2025年後半から順次車両納入を開始、その後2026年前半に「NEXT ERA」シリーズの発売が予定されています。
今回の発売前1000台完売と、自動運転トラックを使った世界初のスタント成功は、スカニアが中国市場で存在感を一気に高めるきっかけとなりそうです。
環境性能やデジタル技術、自動運転といった要素が、今後のトラック選びの重要なポイントになっていく中で、スカニアの「NEXT ERA」がどこまで中国・アジアの物流現場に浸透していくのか、引き続き大きな関心が寄せられています。




