「子どもNISA」上限600万円で最終調整 0歳から利用可・12歳から引き出し可能に

政府・与党が検討してきた、18歳未満の子どもも利用できる新たなNISA制度、いわゆる「子どもNISA(こども支援NISA・仮称)」について、非課税で投資できる累計上限額を600万円とする方向で最終調整が進んでいます。0歳から利用開始が可能で、12歳からは運用した資金を引き出せるようにする案が軸となっています。

この記事では、この「子どもNISA」の検討内容をわかりやすく整理するとともに、従来のジュニアNISAとの違い、家計への影響、そしてネット上で話題となっている上西小百合氏のコメントをめぐる賛否について、やさしい言葉で解説します。

子どもNISAとは?検討されている新制度の概要

まず、今回ニュースになっている「子どもNISA」は、現行の新NISAの仕組みをベースにしつつ、18歳未満の子ども名義でも少額投資非課税制度(NISA)を使えるようにしようというものです。

  • 対象:18歳未満の未成年(0歳から利用可能な方向)
  • 非課税で投資できる累計上限:600万円案
  • 利用できる枠:新NISAの「つみたて投資枠」を子どもにも開放
  • 引き出し:金融商品を売却して資金を引き出せるのは12歳からとする方向
  • 制度の位置付け:2026年度税制改正大綱への盛り込みを目指して議論中

現行の新NISAは、成人を対象に、つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて生涯1,800万円まで非課税で投資できる仕組みになっていますが、未成年は対象外です。これに対し、子どもにもつみたて投資枠を開放しつつ、子どもの分については累計600万円で上限を設けることで、親の資金力による極端な差がつきすぎるのを防ごうという狙いがあります。

なぜ上限「600万円」なのか?背景にある格差懸念

新NISAでは、本来つみたて投資枠などを活用すれば、生涯で1,800万円まで非課税投資が可能です。この年齢制限を「そのまま撤廃」してしまうと、子ども名義でも1,800万円まで非課税投資が可能になる計算になります。

しかし、この場合、高所得世帯ほど子ども名義のNISA枠をフル活用しやすくなり、世代間の資産格差がさらに広がる可能性が指摘されていました。そのため政府・与党内では、

  • 将来の教育費や自立資金づくりを支援したい
  • 一方で、親の年収による「有利すぎる節税・資産移転」になりすぎないように抑制したい

というバランスをとる必要があり、累計上限を600万円に抑える案が浮上しました。

また、金融機関の解説などでは、かつてのジュニアNISAとの比較として、非課税保有限度額を400万円から600万円に拡大する代わりに、長期・つみたて・分散投資に特化させる方向性が示されています。

0歳から18歳未満が対象、12歳から引き出し可能に

今回の案では、子どもNISAは0歳から利用できるようにするとされています。つまり、生まれてすぐから親が子ども名義で非課税投資を始められるイメージです。

さらに、資金の引き出し開始年齢を「12歳」とする方向で調整されています。これは、旧ジュニアNISAのように「原則18歳まで引き出し不可」としてしまうと、進学や塾代など、もっと早い時期の教育費には使いづらいという反省があったためです。

  • 0歳〜11歳:原則として運用期間(売却しなければ非課税で運用を続けられる)
  • 12歳以降:必要に応じて売却し、教育費などに柔軟に充てられる方向

このように、「長期で育てる資産形成」と「必要なときに使える教育資金」の両立が意識された設計になってきています。

ジュニアNISAとの違い:より柔軟で長期前提の制度に

すでに終了した「ジュニアNISA」と比べると、子どもNISAは次のような違いがあります。ここでは、金融機関や専門家の解説をもとに、一般的なイメージを整理します。

  • 対象年齢:ジュニアNISAは0〜19歳が対象でしたが、子どもNISAは0歳から18歳未満に焦点を当てる形で議論されています。
  • 引き出し制限:ジュニアNISAでは18歳まで原則引き出し不可でしたが、新制度では12歳から引き出し可能に緩和される方向です。
  • 投資対象:新制度は新NISAの「つみたて投資枠」対象商品に限定される見込みで、長期・積立・分散に向いた投資信託などが中心となります。
  • 非課税期間:ジュニアNISAは最長5年間でしたが、新制度は原則として非課税保有期間が無期限となる方向で検討されています。

このように、短期売買ではなく、コツコツ積み立てて長く持つことに適した制度にシフトしていることが特徴です。

教育費との関係:「600万円」でどこまでカバーできる?

では、累計600万円という枠は、教育費の観点から見てどの程度の意味を持つのでしょうか。家計・教育費の調査では、次のような目安が示されています。

  • 幼稚園〜高校まですべて公立の場合の学費総額:おおよそ約600万円前後
  • 幼稚園〜高校まですべて私立の場合:約2,000万円近くかかるケースも
  • 国公立大学4年間の学費・諸費用:合計約250万円程度
  • 私立大学文系4年間(自宅外)の場合、生活費も含めると600万円を超えることも一般的

こうしてみると、子どもNISAの非課税枠600万円は、「オール公立ルートの幼稚園〜高校分」や「国公立大学+一部私立」の学費をまかなえる規模感と言えます。もちろん、実際には物価や進路、居住地域によって必要額は変わりますが、教育資金づくりの「核」として活用できるレベルと考えられます。

さらに、子どもNISAと親の新NISAを併用することで、家族全体の非課税投資枠を増やし、より多くの教育費や老後資金を資産運用で準備するという考え方も、専門家から紹介されています。

家計へのメリット:長期・つみたて・分散投資で将来に備える

子どもNISAの大きなポイントは、「非課税」であることと、「長期・つみたて・分散」に適した仕組みであることです。

  • 運用益が非課税:通常、株式や投資信託の売却益・分配金には約20%の税金がかかりますが、NISA口座で得た利益はこれがかかりません。
  • 長期で増やしやすい:0歳からコツコツ積み立てることで、時間を味方にした「複利効果」を期待しやすくなります。
  • 家族で資産形成の意識を高めやすい:子どもの名義で口座を持つことで、お金や投資について親子で話し合うきっかけにもなります。

もっとも、元本割れのリスクがある点や、投資先によって値動きの大きさが異なる点は、どの制度を使っても変わりません。専門家は、家族でリスク許容度を話し合い、無理のない範囲で長期投資に取り組むことを勧めています。

ネットで話題に:上西小百合氏「メリットあるやん」「愚痴ってないで投資家側になれ」

今回の「子どもNISA」報道を受けて、SNSなどではさまざまな意見が飛び交っています。その中で注目を集めているのが、元衆議院議員の上西小百合氏による発言です。

上西氏は、子どもNISAをめぐる批判的な声に対し、「メリットあるやん」「愚痴ってないで投資家側になれ」といった趣旨のコメントを発信しました。これは、

  • 制度の恩恵を受けられないと感じている人たちの不満に対し、「制度を活かす側に回ろう」というメッセージ
  • 一方で、所得や生活状況によってはそもそも投資に回す余裕がない層への配慮に欠けるのでは、という批判

という両面から受け止められ、賛否が分かれています。

賛成派からは、

  • 「どうせ金持ち優遇と言うだけで、何も始めないのはもったいない」
  • 「少額からでも積み立てれば将来が変わるかもしれない」

といった反応がある一方で、否定的な意見としては、

  • 「投資に回せるお金がない家庭も多い」
  • 「児童手当をそのまま生活費に充てざるを得ない層への理解が足りない」

といった声が上がっています。

NISA制度全般についても、以前から

  • 「投資余力のある人ほど得をしやすい」
  • 「低所得層への直接的な支援にはなりにくい」

といった指摘がありました。子どもNISAもまた、「資産形成を促す政策」としての側面と、「格差拡大につながらないか」という懸念の間で、引き続き議論が続くテーマと言えるでしょう。

子どもNISAを検討する際に意識しておきたいポイント

最後に、制度の詳細が今後正式に決まっていくことを前提に、利用を検討する際に意識しておきたいポイントを整理します。

  • 1. 生活防衛資金を優先する
    まずは、病気や失業などの備えとして、数か月分〜半年分程度の生活費を現金で確保したうえで、余裕資金を投資に回すのが基本とされています。
  • 2. 教育費の全額を投資で賄おうとしない
    教育費は、貯金・奨学金・給付型支援金・保険など、複数の手段を組み合わせて準備するのが現実的で、NISAはあくまでその一部と考えると安心感が高まります。
  • 3. 積立額は「続けられる金額」に抑える
    児童手当の一部だけを積み立てる、ボーナス時に年数回だけ増額するなど、家庭の状況に合わせた無理のない設定が勧められています。
  • 4. 子どもと一緒に「お金の教育」として活用する
    中学生・高校生になったタイミングで、NISA口座の状況を一緒に確認し、「長期投資」「値動き」「リスクとリターン」について話し合うことは、将来の金融リテラシー向上にもつながります。

子どもNISAは、制度としてはまだ調整段階にあり、与党税制調査会での議論や2026年度税制改正大綱への反映を経て、具体的な中身が固まっていく見通しです。今後発表される正式な内容を確認しつつ、自分の家庭にとって「ちょうどよい距離感」でどう関わるかを考えていくことが大切だと言えるでしょう。

参考元