佐賀県が「ベネッセ校務クラウド」を正式採択

2025年10月10日、佐賀県教育委員会が株式会社ベネッセコーポレーションの提供する「ベネッセ校務クラウド」を次世代型校務支援システムとして正式に採択したことが発表されました。この決定により、佐賀県内の県立学校46校において、2027年4月から本格的な利用が開始される予定です。

対象となるのは、中高一貫校を含む全日制高等学校、通信制高校、特別支援学校など、佐賀県内のすべての県立学校です。この取り組みは、佐賀県が推進する「校務DX計画」の中核を担うものとして位置づけられています。

採択に至った背景と課題

佐賀県教育委員会は、これまでも県立学校における積極的なデジタル活用を推進してきました。学習面では生徒と教師の両方に「Microsoft 365」のアカウントを配布し、日々の教育活動に活用しています。また、校務面でも既存の校務支援システムを導入し、会議のペーパーレス化などを進めてきました。

しかし、現場の教職員からは様々な課題が指摘されていました。特に深刻だったのが、生徒情報の手入力による業務負担の増加です。教職員は日々、膨大な生徒データを手作業で入力する必要があり、これが大きな時間的・精神的負担となっていました。

さらに、校務系と学習系で複数の端末を使い分けなければならないという煩わしさも問題となっていました。教職員は業務内容によって異なる端末やシステムを切り替える必要があり、作業効率の低下を招いていたのです。

次世代型システムへの移行決定

これらの課題を解決するため、佐賀県教育委員会は「校務DX計画」のなかで、クラウド環境下で校務系と学習系が統合された次世代型校務支援システムの導入を検討してきました。そして今回、複数の候補システムの中から「ベネッセ校務クラウド」が選定されることとなりました。

「ベネッセ校務クラウド」の特徴

今回採択された「ベネッセ校務クラウド」は、中高一貫校・併設校を含む高等学校向けに開発された次世代型の校務支援サービスです。このシステムには、現代の教育現場が求める様々な機能が統合されています。

ダッシュボードによる一元管理

最大の特徴は、校内外のデータをダッシュボードで一元管理できる点です。成績情報、出欠状況、保健管理といった様々な校務情報をリアルタイムで可視化することができます。これにより、教職員は必要な情報に素早くアクセスでき、業務効率が大幅に向上することが期待されています。

データ連携機能

ベネッセが高等学校向けに提供している模擬試験などのデータとの連携機能も備えています。この機能により、学校は生徒をより多面的に把握し、一人ひとりに適した指導を行えるようになります。外部データとの連携により、校内データだけでは見えにくかった生徒の学力傾向や成長の過程を詳細に分析することが可能です。

クラウド統合環境

校務系と学習系のシステムがクラウド上で統合されているため、教職員は一つの環境で様々な業務を完結できます。これまでのように複数の端末やシステムを切り替える必要がなくなり、作業の流れがスムーズになります。

期待される効果

「ベネッセ校務クラウド」の導入により、佐賀県の教育現場では様々な改善効果が期待されています。

業務効率の向上

手入力作業の削減やシステムの一元化により、教職員の日々の業務効率が大幅に向上すると見込まれています。これまで入力作業に費やしていた時間を、より本質的な教育活動に充てることができるようになります。

教職員の負担軽減

業務効率化により、教職員の時間的・精神的な負担が軽減されます。佐賀県教育委員会は、このシステム導入を通じて「教職員の働き方改革」の実現を目指しています。負担が軽減されることで、教職員は生徒と向き合う時間を増やすことができ、より質の高い教育を提供できるようになると期待されています。

データ活用の促進

学校が保有・管理する様々な校務データを可視化し、分析・活用するための安心・安全な環境が整備されます。データに基づいた教育施策の立案や、個別最適化された学習指導の実現が可能になります。

子どもの主体的な学びの実現

教職員の業務負担が軽減され、生徒一人ひとりに向き合う時間が増えることで、「子どもの主体的な学び」を支援する環境が整います。これは佐賀県が目指す教育の理想形の一つです。

2027年4月の運用開始に向けて

佐賀県教育委員会とベネッセコーポレーションは、2027年4月の運用開始に向けて、今後約1年半をかけて準備を進めていきます。

ネットワーク環境の整備

クラウドシステムを効果的に活用するため、ネットワークの高速化が進められます。安定した通信環境の整備により、システムの応答速度が向上し、ストレスのない操作が可能になります。

段階的な導入プロセス

46校という多数の学校に一斉導入するため、綿密な導入計画が立てられています。各校の状況に応じた段階的な移行により、混乱を最小限に抑えながらスムーズなシステム切り替えを実現する予定です。

教職員への研修

新しいシステムを効果的に活用するため、教職員向けの研修プログラムも用意される見込みです。システムの基本操作から、データ活用の高度なテクニックまで、段階的な習熟を支援していきます。

ベネッセコーポレーションのコメント

ベネッセコーポレーションは今回の採択について、「佐賀県様の次期教育情報システムでベネッセ校務クラウドをご採用いただき、光栄に存じます」とコメントしています。

同社は、佐賀県の先進的な取り組みに対し、成績管理や出欠管理など主要な校務を一元化するクラウド型校務支援システムの提供を通じて、教職員の業務効率化と負担軽減を支援していく姿勢を示しています。そして最終的には、生徒と向き合う時間を増やす環境づくりに貢献することを目指しています。

全国的な校務DXの動き

佐賀県の取り組みは、全国的な校務DXの流れの中に位置づけられます。デジタル技術を活用した教育現場の業務効率化は、今や全国の自治体が取り組むべき重要な課題となっています。

教職員の働き方改革は教育界全体の喫緊の課題であり、業務のデジタル化による負担軽減は、その実現に向けた重要な施策の一つです。佐賀県の先進的な取り組みは、他の自治体にとっても参考となる事例になることが期待されています。

今後の展望

佐賀県教育委員会は、「ベネッセ校務クラウド」の導入を契機に、さらなる教育DXの推進を図っていく方針です。単にシステムを導入するだけでなく、それを活用した新しい教育実践の創出にも取り組んでいく予定です。

2027年4月の本格運用開始後は、システムの効果検証を行いながら、必要に応じて機能の追加や改善を進めていきます。また、蓄積されたデータの分析を通じて、より効果的な教育施策の立案にも取り組んでいく計画です。

佐賀県の「ベネッセ校務クラウド」導入は、教育現場のデジタル化における重要な一歩として、全国から注目を集めています。この取り組みが成功すれば、他の自治体での同様のシステム導入を後押しする事例となるでしょう。教職員の働き方改革と子どもたちのより良い学びの実現に向けて、佐賀県の挑戦が始まります。

参考元