「RSウイルス」妊婦を対象に定期接種スタートへ 来年4月にも ~赤ちゃんを守る新たな公費ワクチン政策の全貌~

はじめに

RSウイルス(RSV)感染症は、特に新生児や乳幼児がかかると重症化のリスクが高い感染症として知られています。毎年多くの乳幼児がこのウイルスによって入院を余儀なくされ、ご家族にとっても大きな不安の種となってきました。

こうした中、厚生労働省は2026年4月をめどに、妊婦の方向けのRSウイルスワクチンを定期接種として開始する方針を固めました。これにより、日本の感染症対策はまた一歩前進します。本記事では、この新たな政策の背景や意義、ワクチンの効果と安全性、今後の見通しまでをやさしく、かつ詳しく解説します。

RSウイルス感染症とは

  • RSウイルスは、乳幼児に多く発症する呼吸器の感染症です。
  • 主な症状は発熱、咳、鼻水などの風邪に似た症状が多いものの、生後半年以内の赤ちゃんが感染した場合、肺炎や細気管支炎を引き起こしやすく、重症化しやすいと報告されています。
  • 重症例では入院が必要となり、ときに命に関わることもあります。
  • 完全な治療薬はなく、これまでは主に対症療法や予防的な衛生対策が中心でした。

なぜ妊婦へのワクチン定期接種が重要なのか

  • 0歳児、特に生まれて間もない赤ちゃんは自らワクチンを接種することができません。
  • 母親が妊娠後期にワクチン接種を受けることで、母体に作られた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行し、生後すぐの感染症防御となる仕組みが根拠となっています。
  • この方法は“母子免疫”と呼ばれ、日本国内では他のワクチンと比較しても画期的な予防策です。
  • 特にRSウイルス感染症の最大のリスク期間である生後1ヶ月~半年の重症化予防として、医療現場からも強い期待が寄せられていました。

厚生労働省の新方針:定期接種の概要

  • 新しい方針では、妊婦のうち妊娠28週から36週の方を主な対象とし、ワクチン接種を定期接種とします。
  • 2026年4月から厚労省は正式に定期接種制度を導入。現在は自己負担が発生する“任意接種”ですが、定期接種化により原則無料(公費負担)となります。
  • このワクチンは、国内外で安全性と有効性が確認された「アブリスボ®筋注用」(ファイザー社/他)などが採用される予定です。
  • 摂取は1回、筋肉注射にて実施されます。

どんな効果が期待されるのか?

  • ワクチン接種した妊婦の体内で作られたRSウイルスに対する抗体が胎児へ移行し、生まれてから一定期間(主に6か月以内)の赤ちゃんに強力な免疫を与えるとされています。
  • とくに重症化リスクの高い生後1ヶ月未満の新生児の入院や合併症を大幅に減らす期待が高まっています。
  • また、この時期は、赤ちゃん自身にほかのワクチンが未接種または接種できないタイミングと重なるため、唯一の予防策として大きな意義があります。

どんな人が対象?接種時期・方法について

  • 対象は妊娠28週(24週からも一部推奨)~36週の妊婦となります。
  • 「アブリスボ®筋注用」など、1回0.5mLのワクチンを筋肉注射で接種します。
  • 接種は医療機関で行われます。接種後も胎児や妊婦ご本人への安全性が十分確保されていることが確認されています。
  • 接種後の副反応は、他のワクチンと同程度かそれ以下で、重大なリスクが高まる報告は今のところありません。

費用負担と制度面:定期接種化でどう変わる?

  • 従来の任意接種の場合、1回あたりおよそ2万円弱の費用を全額自己負担していました。
  • 定期接種化によって公費負担となり、経済的負担なく接種できるようになります。
  • 妊婦向けワクチンの定期接種への導入は日本では初めてであり、今後ほかの母子感染症予防にも波及効果が期待されます。

日本のワクチン接種政策の新たな一歩

これまで日本では、いくつかのワクチンについて妊婦への接種が推奨されていたものの、定期接種として全国一律に無料で提供されるのは初めてです。これは「百日咳」などのワクチンとも異なり、直接赤ちゃんの重症化リスクを低減する点で画期的な意義を持っています。

なぜ今回、RSウイルス対応の強化が求められたのか

  • RSウイルスは毎年流行し、近年流行時期のズレや感染者の急増などにより医療現場が逼迫することも多く報告されていました。
  • 乳幼児の入院の大きな原因のひとつであることから、「社会全体で赤ちゃんを守る」ための体制整備が求められてきた経緯があります。
  • 医療機関や複数の専門学会からも早期の公費接種化を求める声が相次ぎ、政策決定を後押ししました。

世界と日本:すでに実績のある“母子免疫”

  • アメリカなど一部諸外国では、RSウイルスワクチンの妊婦への接種が先行して開始され、安全性と効果が実証されています。
  • この実績をふまえ、日本でも一定の安全性・有効性のデータが確認され、厚労省・分科会での慎重な議論を重ねて今回の導入が決定しました。

これから妊娠・出産を迎える方へのアドバイス

  • 接種対象となる妊婦の方は、必ずかかりつけの産婦人科医・主治医にご相談のうえ、時期や体調、他のご病気についてもよく話し合ってください。
  • 新型ワクチンへの不安があっても、十分な説明や情報提供を受けた上で判断できる体制が整ってきています。
  • ご自身やご家族の健康を守る第一歩として、正しい情報と安心できるサポートを活用しましょう。

地域社会への波及効果と今後への期待

  • ワクチンの定期接種化は、感染症全体の流行抑制や医療費の軽減にも寄与します。
  • RSウイルスでは、重症例の入院治療コストや家族の負担も大きいため、社会全体が恩恵を受ける政策です。
  • 今後も母子の健康を守る新しい予防策拡充に期待が高まります。

まとめ

日本では、2026年4月から「RSウイルス」感染症予防のため、妊婦さんへの定期接種が全国でスタートします。公費負担のもと、妊娠後期の方がワクチンを受けることで、生まれてくる赤ちゃんの命と健康を守る大切な政策です。

RSウイルスから守られる赤ちゃんたちがより安心して成長できる社会の実現に向けて、今後も柔軟で総合的な対策の拡充が期待されます。

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