習近平主席が推進する中国の特許戦略 ― 米中貿易戦争の新たな局面
2025年10月30日、韓国で行われた米中首脳会談は、習近平中国国家主席とトランプ米大統領によって「一時停戦」ムードが生まれました。長引く米中貿易戦争に一定の区切りがついたものの、その裏側では新たな火種 ― すなわち「特許」をめぐる摩擦がじわじわと表面化しています。この記事では、米中貿易交渉の背景から、習近平主席の強力なイノベーション推進策、そしてアジアを中心とする世界の特許出願動向まで、今まさに話題となっている「特許戦争」の最新事情を分かりやすく解説します。
米中首脳会談:一時停戦と水面下の綱引き
2025年10月の首脳会談では、アメリカが中国に対して加えていた関税が緩和されました。具体的には、中国製品にかけられていた30%の追加関税が20%へと引き下げられ、半導体製造装置等への新たな規制措置も原則1年間凍結されることで合意しました。この結果、貿易戦争そのものは小休止となったものの、両国の経済的な主導権争いは終わったわけではありません。
- 関税率の引き下げや規制の一時凍結により、市場は一時的な安心感を得ました。
- しかし、中国による特許や論文出願の爆発的な増加が新たな摩擦の火種となっています。
「新質生産力」がもたらすイノベーション急加速
習近平主席はここ数年、「新質生産力」をスローガンに掲げ、徹底した技術開発と独自イノベーションの推進を国家規模で進めてきました。その象徴が、「研究者数の急増」や「特許出願数の世界的爆発」です。
- 習近平主席は、先端技術の強化、知的財産権の保護、そして高付加価値産業へのシフトを強く指示。
- 中国全土で研究開発に携わる人材が急激に増え、AIや通信、ロボティクスなど多くの分野で革新的な研究が生まれています。
例えば、「中国製造2025」政策のもと、5Gや先進ロボット、エネルギー自動車等の分野が重点支援され、膨大な研究・開発と特許の出願が一体となって進んでいます。これは単なる数合わせではなく、「世界に通用する知財力」で米国や欧州とも競い合うための本格的な戦略です。
中国の特許出願数、世界を圧倒 ― 2024年も過去最多を更新
中国の特許出願数は、2023年に167万件を超え、圧倒的な数字でアメリカやドイツなどを大きく引き離しました。そして2024年も過去最多をさらに更新しており、世界の知財機関もその勢いに注目しています。また、日本は特許出願数で3位となっています。
- 中国は「世界中で特許」を狙いまくっており、国際特許出願も年々増加。
- 中国の商標や意匠(デザイン)権も近年は厳格化し、知財保護がビジネス上の常識となっています。
- 日本企業やアメリカ企業も、中国との提携時は特許の取得を積極的に勧めるなど、グローバル競争のルールが再編されています。
一部には「使い勝手ゼロのゴミ特許」で数を稼いでいるとの指摘もありますが、全体傾向としてはイノベーションと競争力の裏付けとして実効性のある出願も確実に増えている、と専門家はみています。
アジアが世界の特許戦争を牽引 ― 出願総数の約7割を占有
もう一つ注目すべきは、アジア全体の存在感です。2024年時点で、世界の特許出願総数の約70%がアジア諸国によって占められています。
- 中国・日本・韓国の東アジア3か国が世界全体で圧倒的な特許出願数を記録。
- 特に中国は単独で世界1位の座をキープし続け、アジア勢が知財競争の中心地になっています。
- この状況は、今後さらに加速すると見られ、グローバルビジネスのパワーバランスも変化を続けています。
米中首脳合意の背景と知財戦争の最前線
米中貿易摩擦そのものは、関税や物品貿易額の調整では一旦の「休戦」となりましたが、先端技術や知的財産権をめぐる主導権争いは継続し、より複雑かつ熾烈な局面に入っています。トランプ政権が中国の知的財産権侵害や技術移転問題を重要課題に据えてきた経緯があり、今後もこの分野が両国関係のリスク要因となるのは避けられません。
- 今回の合意で、レアアースやフェンタニル規制など戦略物質・医薬品分野でも協力が進みつつあるものの、知財分野は新たな火種がくすぶり続けています。
- 中国企業がグローバル展開を本格化するなか、「他国の知財を侵害しない」意識も急速に浸透。
- 逆に「どの国でも特許をきっちり取得したうえで、競争を有利に進める」ことが新時代の国際ビジネスルールとなっています。
日本と中国 ― 知財競争の最前線で
日本にとっても、中国企業による特許や商標出願の増加は大きなビジネス環境の変化を意味しています。例えば、中国発のレストランチェーンが日本初進出前から商標登録を済ませるなど、知財管理の意識がグローバル基準に近づきつつあります。
- 日本企業は今や中国企業と対等、あるいはそれ以上のスピードと精度で知財戦略を再構築することが求められています。
- 「まだ進出していないから大丈夫」と思っていると、海賊版や模倣品があっという間に現れるリスクも高まっています。
まとめ:時代を動かす「特許」 ― 習近平体制下の中国と世界の知財新秩序
習近平主席が進めるイノベーション戦略のもと、中国の特許出願数は圧倒的な伸びを見せ、アジア全体が特許競争の中心となっています。米中貿易摩擦は一時的に緩和されつつも、「知財」をめぐる攻防はこれからも激しさを増し、世界のビジネスルールそのものが大きく変わろうとしています。日本を含めた各国企業は、独自の技術と知財戦略をより強固にし、グローバル競争の荒波を乗り越える時代を迎えているのです。




