トランプ大統領のハセット評価転換で市場が揺れる、FRB議長候補の序列が大きく変動
ドナルド・トランプ米大統領が、連邦準備制度理事会(FRB)次期議長候補であるケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長に対する評価を予期せず転換させたことで、金融市場全体に波紋が広がっています。この発言は予測市場での候補者の序列を大きく揺り動かし、トレーダーが2026年の金利引き下げ期待を急速に見直す契機となっています。
ハセット氏の現職留任を示唆したトランプ大統領
16日、ホワイトハウスで開催された医療関連のイベントで、トランプ大統領はハセット氏に対して直接、「実のところ、君には今の場所にいてもらいたい」とコメントしました。この発言は、ハセット氏がテレビ出演でコミュニケーション能力を発揮したことへの称賛の文脈で語られたものです。
大統領はさらに詳しく、「FRBの人間、特に現在の議長はあまり多くを語らない」と述べ、「君を失うことになる。それは私にとって深刻な懸念事項だ」とハセット氏の発信能力を高く評価しました。ハセット氏がNEC委員長からFRB議長に昇進することに対する大統領の慎重な姿勢が明確に示されたのです。
予測市場が大きく動く、ウォーシュ氏が急浮上
トランプ大統領の発言を受けて、FRB議長候補に関する予測市場は劇的に変動しました。これまでハセット氏は次期議長の最有力候補と考えられていましたが、予測市場Polymarketのデータによると、状況は一変しています。
ハセット氏がFRB議長に任命される確率は、かつての最有力候補の地位から15~16%へと急低下しました。一方、ケビン・ウォーシュ氏の指名確率は54~60%以上に跳ね上がり、新たな筆頭候補として浮上しました。クリストファー・ウォーラーも16%と同等の支持を集めています。
ウォーシュ氏の金融政策スタンスに注目集まる
ウォーシュ氏は、タカ派の金融政策者として知られています。彼はインフレを外部要因ではなく、連邦準備制度の政策に起因すると考えており、バランスシート縮小を進める一方で利下げも支持する独特のスタンスを持っています。
さらに、人工知能(AI)や規制緩和を通じた米国経済の成長可能性に楽観的である点が、他の候補者と異なる特徴です。ウォーシュ氏の指名が現実化すれば、米国の金融政策は既存の枠組みから大きく転換する可能性があると市場参加者は予想しています。
株式市場への波及効果と2026年金利引き下げ期待の見直し
トランプ大統領の発言は、ハセット氏の潜在的な任命に関する姿勢の予期せぬ変化をもたらし、これが通貨、金、株式市場に波及しました。特に注目されるのは、トレーダーが2026年の米国金利引き下げに関する期待を急速に見直していることです。
CME FedWatchのデータによると、2026年末までに金利引き下げがまったく行われない確率は11.8%となっています。一方、年間を通じて累積25ベーシスポイントの引き下げの可能性は30.3%、50ベーシスポイントの引き下げは32.1%と予想されており、当初の金利引き下げ期待から相当に下方修正されました。
ハセット氏が議長に就任する可能性が低下することで、「成長重視派」の方針が実現する確率が減り、より厳格な金融引き締めが継続する懸念が市場に広がっています。これは株式市場にとって、配当利回りの相対的な魅力が低下する環境を意味します。
政権の金融政策への介入懸念が顕在化
今回の一連の動きは、トランプ政権がFRBの人事を含めた金融政策に積極的に関与しようとしていることを示唆しています。次期議長が誰になるかで、米国経済全体の政策方向が大きく異なるため、市場参加者にとっては不確実性が増す要因となっています。
インフレ再燃のリスクが高まる中、政権が「通貨の番人」であるFRBの人事に強い関心を持つことは、今後の米国経済運営における政治的な影響力の拡大を意味するかもしれません。
今後の注視点
トランプ大統領は、ハセット氏の潜在的な異動について「どうなるか見守ろう」とも述べており、最終的な人事決定はまだ確定していません。しかし市場はすでに、ウォーシュ氏指名の可能性を高く評価する値動きを示しており、今後のトランプ政権からのFRB議長人事に関する発表が、株式・債券・為替市場全体に大きな影響をもたらす可能性が高いと言えるでしょう。
次期FRB議長の決定は、米国の金融政策の方向性を左右する重要な人事です。予測市場の大きな変動は、市場参加者がこの決定の重要性をいかに真摯に受け止めているかを物語っています。今後の大統領からの発言や人事の正式発表に、金融市場全体が注視しています。



