フィリピンとUAE、CPTPP加盟申請で「トランプ関税」対策へ
2025年11月4日、フィリピンとアラブ首長国連邦(UAE)は、環太平洋パートナーシップに関する包括的かつ先進的な協定(CPTPP)への加盟申請を公式に明らかにしました。これにより、両国はアメリカのトランプ前大統領時代に発動された新たな関税措置、いわゆる「トランプ関税」への対抗策として、新しい経済連携の道を模索していることが分かりました。
CPTPPとは何か?
CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)は、日本、カナダ、オーストラリア、メキシコ、シンガポール、ベトナムなど11カ国が参加する自由貿易協定です。もともとはアメリカが主導したTPP(環太平洋パートナーシップ協定)が前身で、2017年にアメリカが離脱したことで、残る国々がCPTPPとして新たな枠組みを形成しました。
CPTPPは、アジア太平洋地域の幅広い経済圏を包括し、関税削減や規制緩和、投資・サービス分野の自由化、市場アクセス拡大など、広域且つ先進的な自由貿易のルール作りを目指す協定です。
フィリピンとUAEの加盟申請の背景
2020年代半ば、アメリカのトランプ元大統領による政策の影響で域外の国々への輸入関税が強化され、フィリピンやUAEのような新興経済国にとって自国の輸出産業への打撃が懸念されていました。
両国政府は、米国による高関税の影響を緩和し、成長著しいアジア太平洋経済圏における新たな市場アクセスを確保するため、CPTPPへの参加を決断しました。この動きは、日本やオーストラリアなどCPTPP加盟国との協力強化、安定した通商環境の確保という観点からも重要な意思決定と位置付けられています。
- フィリピン:国内経済の輸出促進や農業産業の高度化を目指し、CPTPPを通じて多角的な貿易パートナーを探し求めています。
- UAE:石油依存からの脱却を進め、金融、観光、先端技術分野への投資を積極化し、市場の多様化と経済安定を目指しています。
「トランプ関税」の具体的な影響
「トランプ関税」は、米国が国内産業の保護を狙い2017年以降に実施した関税政策の総称です。鉄鋼やアルミニウム、その他の重要製品に大幅な追加関税が課され、米国以外の主要貿易相手国に大きなコスト増となっています。フィリピンやUAEも同様に、米国市場での競争力低下や、米国経済の影響を受けやすい自国産業のリスクヘッジを迫られていました。
なぜCPTPP加盟が有効なのか
CPTPP加盟国の間では、関税が原則ゼロになるほか、共通の貿易・投資ルールが導入されます。これにより、新たな輸出先や投資先を開拓しやすくなり、米国市場依存のリスクを分散することができます。
また、CPTPPのような多国間枠組みは、個別協議では難しい幅広い連携・市場アクセス拡大が一度に可能となる利点があります。現在も加盟国拡大が進み、イギリスも2023年に正式加盟したことから、経済規模・魅力はさらに増しています。
両国が期待する今後の効果
- 輸出拡大:CPTPP域内の広大な市場に対し、自国製品・サービスの販売強化や多様化が可能となります。
- 投資促進:共通ルール下での投資保護が進み、先進国からの資本流入を促進できます。
- 技術交流・人材育成:加盟各国間の経済協力や人的交流が加速し、国内産業の発展、イノベーション創出が見込まれます。
- 経済安全保障の強化:アメリカとの二国間関係だけに依存せず、多国間の経済ネットワークを構築することで、外部ショックへの耐性を高められます。
主な課題と今後の見通し
一方で、CPTPP加盟には高い水準の経済ルール順守や、各国の制度改革が求められます。特に知的財産、労働基準、政府調達・競争政策分野においては、国内法制度の見直しや体制整備も不可欠です。
フィリピン、UAEともに、自国経済の構造転換や制度改革に取り組む必要があり、正式加盟までには相応の時間と調整が予想されます。しかし、成長著しいアジア太平洋圏へのアクセスや、新市場開拓を視野に入れた上での「戦略的な選択」とも言えます。
国際社会の反応と今後の注目点
日本やオーストラリアをはじめとする既存加盟国は、新興国のCPTPP参入を歓迎する動きと同時に、ルール維持や自由で公正な貿易秩序の維持に留意しつつ、審査や協議を慎重に進めていく方針です。今後は、協定交渉の進展や加盟国拡大がどのようにアジア太平洋経済に影響を及ぼすかが大きな関心事となっています。
まとめ:アジア太平洋経済圏の新たな潮流
今回のフィリピン・UAEのCPTPP加盟申請は、米国関税政策への対応とともに、今後のアジア太平洋経済秩序を揺るがす大きな潮流となりつつあります。CPTPPは、地域の自由貿易推進や、経済連携強化、安定成長を後押しする鍵となるでしょう。
加盟交渉や審査の動向、実際の経済効果、各国の国内改革など、今後の進展に引き続き注目が集まりそうです。




