パナソニック、コンセント不足への新指針を打ち出す

近年、家庭内で使用される電気機器が増加したことでコンセント不足が顕在化しています。パナソニック株式会社とルームクリップ株式会社の調査では、約75%の家庭がコンセントの数や位置に不満を感じているという結果が明らかとなりました。特に新築住宅では、後からコンセントを増設する際に工事コストや作業の煩雑さが負担となり、住まいづくりの段階から十分な計画が求められる状況となっています。

不満の声が増える背景

家庭での電気機器使用が年々増加する理由としては、スマートホーム化やIoT機器の普及、仕事や学習のリモート化などがあります。それに伴い、リビングや寝室だけでなく、キッチンや玄関などにも電源が必要となるケースが増えています。従来の「二隅配置」では、家具や家電が増えることで使い勝手が悪くなり、延長コードやタコ足配線などの安全面でも課題が生じていました。

  • スマートスピーカーやWi-Fiルーター等の設置箇所が増加
  • 在宅勤務によるパソコン、プリンター、充電器などの電源需要が拡大
  • 調理家電や掃除機、エアコン等の多様な使用シーンが生まれている

パナソニックの新方針「四隅配置」とは

こうしたニーズを受けて、パナソニックが全国の住宅会社・施主を対象に提案するのが「四隅配置」「くらしに合わせたアドオン」という新しいコンセント設置指針です。

四隅配置の特徴

  • 各居室の四隅へコンセントを設置し、家具などで隠れるリスクを減少
  • 標準設置数を増やし、ゆとりある電源供給を確保
  • タコ足配線や延長コード使用をなるべく回避

くらしに合わせたアドオン

  • 生活スタイルや使用する家電数を事前に調査し、最適配置を提案
  • 後からの増設を減らし、計画段階で使いやすい場所と高さに追加設置

非居室(廊下・玄関など)については、従来通り「二隅配置」が適用されます。

現代の住まいづくりにおける電気設備の新スタンダード

パナソニックは「でんきの設備でeくらし」プロジェクトを介して、快適な生活環境を実現する電気設備の新スタンダードを提案しています。本活動は電気工事業界とも連携し、住宅会社と施主が後悔のない住まいを作れるようサポートするもの。「電気設備の教科書」の配布や、施主自身が情報を得られるウェブページの開設も進めています。目標は2030年までに新基準を普及させることです。

昭和から続く提案力の進化

パナソニックは昭和30年代から「適正配線運動」や「電気の1・2・3運動(1部屋2あかり3コンセント)」など、時代ごとに住まいの電気設備を進化させてきました。今回発表された新指針は約30年ぶりの住まいづくりへの大型提案であり、時代の変化――在宅ワークの増加や安全意識の高まり、通信環境の充実、防災・防犯機能の拡充など――を踏まえた内容となっています。

新築時の計画が大切

すでに家を建てた後でコンセントを増やすには、壁の穴あけ工事や追加配線工事が必要となり、費用・手間ともに負担が大きくなります。新築時にコンセント数や設置場所、高さを十分に検討することで、快適な生活と安全性が維持できます。
具体的には次のような点を意識することがポイントです。

  • 家族構成やライフスタイルの変化への対応
  • 部屋ごとの電気機器使用状況をシミュレーション
  • 掃除機や充電機器など、一時的に使用するコンセントが必要な場所の選定
  • 将来の機器増加を見越した空配管・空設置スペースの確保
  • 高さの配慮(机や棚の上、キッチンカウンター下など)

パナソニックの提案事例

同社が提案するモデルケースとして、4人家族を想定した住宅では、リビング・ダイニング・小上がり(約33.1㎡)、キッチン(約6.6㎡)に合わせたコンセント配置プランが示されています。これには各居室の四隅、キッチンの使いやすい作業動線への設置など、具体的な位置や数に関するガイドラインが含まれています。

アンケートによると、特にリビング周辺で「スマホ充電用」「家電配置の自由度」「掃除機の使用」「パソコンやゲーム機などの娯楽機器用」など、多様なニーズがあり、不便を感じやすい領域とされています。

設計段階での工夫と施主参加型の情報公開

パナソニックが今回まとめた「電気設備の教科書」や関連ウェブページでは、施主自身が必要な情報を入手しやすくなっています。設計士や建築会社と相談しながら、生活の中で起こりうる「こんな時、困った!」を未然に防ぐ計画を行うことが、より良い住まいづくりの第一歩となります。

  • コンセントのあるべき数と位置に関するアドバイス
  • 使用機器や動線のシミュレーションができるチェックリスト
  • 施主と設計担当者が納得して計画できる提案フロー

安全・快適・将来性のある住まいを目指して

コンセントの不足は延長コードやタコ足配線を招き、火災や感電リスクにつながる可能性があります。また、家具の配置や模様替え時にも支障となるケースが多く報告されています。電気設備の最適化は、単なる利便性の向上だけでなく安全性、将来の拡張性を備えた住環境の確保にも直結しています。

総合的な住宅設備提案へ

今後、パナソニックはコンセント設置だけでなく、照明器具や空調設備などを含めて提案の幅を広げていくとしています。さらには、高度な通信環境の整備や防災・防犯機能の強化によって、家族が安心して過ごせる住まいづくりに貢献していく方針です。電気設備の新スタンダードは、変化し続ける社会と暮らしに寄り添う新しいモデルとして広く普及していくことが期待されています。

まとめ

パナソニックの新しいコンセント設置方針は、住まいの「当たり前」を大きく進化させる提案です。多くの人が感じている「コンセントの不満」を、先進的な発想と技術力で解決し、電気設備の新たな基準として業界全体に影響を及ぼしています。新築住宅の設計を控えた方はもちろん、リフォームを検討する人にも役立つ情報が豊富に提供されており、安心・安全で快適な暮らしを支える住まいづくりの新時代が始まろうとしています。

参考元