大阪・関西万博閉幕後の夢洲、壮大な再開発計画が本格始動

2025年10月に閉幕した大阪・関西万博。会期中は多くの来場者で賑わい、盛況のうちに幕を閉じました。しかし、万博の成功は終わりではなく、むしろ新たな始まりです。万博会場となった大阪市此花区の人工島・夢洲では、閉幕と同時にパビリオンの大半が撤去され、本格的な跡地開発が始動しています。

万博跡地が目指す「未来社会の実現」

大阪府と大阪市が策定した「夢洲まちづくり構想」では、夢洲全体を3つの期間に分けて段階的に開発を進める方針が示されています。万博会場となった約50ヘクタールの敷地は「第2期区域」として位置づけられ、「万博の理念を継承し、国際観光拠点形成を通じて『未来社会』を実現するまちづくり」というコンセプトのもと、再開発が進められる予定です。

第2期区域のまちづくりでは、大きく3つの方針が掲げられています。まず「エンターテイメントシティの創造」として、ここでしか体験できない非日常空間を提供する施設の導入が計画されています。次に「SDGs未来都市の実現」として、持続可能な社会の実現を目指す取り組みが盛り込まれています。そして「最先端技術の実証・実践・実装」として、万博で披露された革新的な技術を実際の都市空間で活用していく方針です。

4つのゾーンで構成される新しい夢洲

夢洲第2期区域は、機能別に4つのゾーンへ再編される計画となっています。

夢洲駅前には「ゲートウェイゾーン」が配置され、夢洲の玄関口として商業施設や宿泊施設、来訪者の交流や回遊の拠点となる広場が整備される予定です。訪れる人々を最初に迎える重要な役割を担うこのゾーンには、夢洲全体の魅力を発信する機能が集約されます。

中央部には「グローバルエンターテイメント・レクリエーションゾーン」が広がります。このゾーンはさらに西側の「スーパーアンカーゾーン」と東側の「交流ゾーン」の2つに分かれています。スーパーアンカーゾーンでは、世界中から人々を惹きつける非日常的なエンターテイメント機能やレクリエーション機能の導入が予定されており、ファミリーで楽しめる空間づくりも重視されています。交流ゾーンは、ゲートウェイゾーンからスーパーアンカーゾーンへ人の流れをつなぐハブ拠点として機能する計画です。

世界最高水準のラグジュアリーリゾート構想

開発の具体的な内容について、関電不動産開発株式会社が提案している計画が注目を集めています。この提案では、世界最高水準のラグジュアリーリゾートの創出が中心テーマとなっており、ラグジュアリーホテルとウォーターパークを核とした複合リゾート施設の配置が想定されています。通年型のアクティビティを充実させることで、季節を問わず安定した集客を実現する狙いです。

駅前のゲートゾーンには、夢洲の玄関口にふさわしい高級ホテルや商業施設などの商業機能を集約し、訪れる人々の利便性を最大限に高める構成が計画されています。大阪府・大阪市は、2025年度の後半に開発事業者の募集を行う予定となっています。

万博レガシーの継承と保存施設

跡地開発において重要な要素となるのが、万博レガシーの継承です。万博会場の象徴的な存在であった「大屋根リング」については、200メートル分を保存する方向で関係機関が合意したと報じられています。また、会場の中心部に位置し、来場者の憩いの場となった「静けさの森」も残地する方針が示されています。

さらに「大阪ヘルスケアパビリオン」も、万博の理念である「いのち輝く未来社会のデザイン」を次世代に伝える重要な遺産として位置づけられています。これらの施設は、単なる建造物の保存にとどまらず、万博で提示された未来社会のビジョンを継承し、発展させていく拠点としての役割が期待されています。

財界からの慎重論と残された課題

一方で、この壮大な跡地利用計画には課題も残されています。活性化の起爆剤として誘致した万博は盛況のうちに終わりましたが、大阪府市が策定した跡地利用計画に対して、財界から慎重な意見が出されているとの報道があります。

特に問題となっているのが、交通インフラの整備です。夢洲へのアクセスを改善するための鉄道延伸には多額の費用が必要とされ、その負担をどのように分担するかが大きな課題となっています。万博開催時には一時的な需要に対応できましたが、恒常的な観光拠点として機能させるためには、より充実した交通網の整備が不可欠です。

統合型リゾート(IR)との連携

夢洲全体の開発を見渡すと、第1期区域では統合型リゾート(IR)を中心としたまちづくりが進められています。日本最大級のオールインワン型MICE施設(国際会議場施設及び展示等施設)、大阪・関西・日本の魅力を発信する魅力増進施設、バス・フェリーターミナルを含む送客施設、宿泊施設、そしてカジノ施設などから構成される大規模な統合型リゾートです。

万博跡地である第2期区域は、この第1期区域のIRと連携しながら、独自の魅力を発信していく計画となっています。「リゾート」と「シティ」の要素を融合させた空間を形成することで、国際観光拠点としての機能を強化し、長期滞在型の観光需要を創出する狙いです。

持続可能な開発への取り組み

夢洲の開発においては、環境面での配慮も重要なテーマとなっています。万博会場予定地の埋立地の環境影響については、関係機関による慎重な検討が行われてきました。跡地開発においても、SDGs未来都市の実現という方針のもと、自然環境との調和を図りながら持続可能な開発を進めていく必要があります。

「夢洲まちづくり基本方針」では、観光施設及び物流施設のそれぞれが最大限に機能を発揮できるようまちづくりを進めるとともに、まちづくりの進展に応じて、地元自治体などを始めとする関係機関の連携が必要であると記載されています。

未来への展望

現在公開されている「夢洲第2期区域マスタープラン」はVer.1.0の段階であり、既存施設の再利用については確定していない部分も残されています。しかし、万博で示された未来社会のビジョンを実現する場として、また大阪・関西の新たな国際観光拠点として、夢洲の再開発は大きな期待を集めています。

万博のプロデューサーたちによるトークセッションでも、大阪万博が「未来を考えるきっかけ」となったことが強調されました。このレガシーを活かし、夢洲が真の意味で「夢と創造に出会える未来都市」として生まれ変わることができるか。パビリオンの解体が進む中、新たな夢洲の姿が徐々に明らかになっていくことでしょう。

大阪府・大阪市、経済界、そして開発事業者が連携し、財源や交通インフラなどの課題を乗り越えながら、万博の理念を継承した持続可能なまちづくりを実現できるか。夢洲の再開発は、日本の万博跡地利用として特異な取り組みとして、今後も注目を集め続けることになりそうです。

参考元