大阪・関西万博が閉幕、成功と課題が浮き彫りに

2025年10月13日、184日間にわたって開催された大阪・関西万博が閉幕しました。4月13日の開幕から半年間、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、161の国と地域、9つの国際機関が参加した大規模な国際イベントは、多くの来場者を集めました。1970年以来55年ぶりとなる大阪での万博開催は、関西だけでなく全国から注目を集め、さまざまな反響を呼んでいます。

「デジタル万博」の理想と現実

今回の万博は「超スマート会場」を目指し、先端デジタル技術を駆使した展示や運営が特徴でした。自動翻訳システムやAIを用いた情報案内アプリなどが提供され、未来社会を体験できる場として期待されていました。NECが提供した分散型ID技術と生体認証技術を組み合わせた「NEC Digital Identity VCs Connect」や、メディアアーティスト落合陽一氏がプロデュースするシグネチャーパビリオン「null2」など、革新的な技術展示が数多く行われました。

しかし、このデジタル重視の運営方針については、課題も指摘されています。一部の来場者からは「高齢者来るな」と感じたという声も上がっており、デジタル技術に不慣れな世代への配慮が十分ではなかったという指摘があります。チケット予約システムや会場内での情報取得において、スマートフォンやインターネットの活用が前提となっていたことが、デジタルデバイドを生んだ可能性が示唆されています。

すべての世代に優しい万博を目指して

万博は本来、あらゆる世代が楽しめる場であるべきです。先端技術の展示と体験は重要ですが、それがある特定の世代を排除する結果になってしまっては、「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマにそぐわないものとなってしまいます。デジタル技術を活用しながらも、アナログな対応も併存させるハイブリッドな運営が求められていたといえるでしょう。

熱心なファンたちの姿

一方で、万博を心から楽しんだ人々の姿も数多く見られました。中でも注目を集めたのが、184日間の会期中、毎日会場に通い続けた「皆勤賞」を達成した来場者の存在です。ある高齢の女性は、チケット代に77万円を費やし、パソコン3台を使って予約を行うなど、万博への情熱を見せました。

この女性は「人の優しさにふれた」と振り返り、会場で出会った人々との交流や、スタッフの対応など、万博での体験を通じて多くの温かさを感じたと語っています。こうした熱心なファンの存在は、万博が単なる展示会ではなく、人と人とのつながりを生み出す場でもあったことを示しています。

万博後の関西経済への影響

万博の成功に沸く一方で、関西経済界では「アフター万博不況」への懸念が広がっています。過去の大規模イベント後には、建設需要の反動減や観光客の減少などによる経済の停滞が見られることがあり、今回も同様の現象が起こる可能性が指摘されています。

試される「民」の力

大阪府知事をはじめとする行政関係者は、万博の成功を強調しながらも、このイベントをどのように関西の持続的な発展につなげていくかが重要な課題となっています。万博開催によって整備されたインフラや、国際的な注目度の向上を、一過性のものに終わらせない取り組みが求められています。

特に注目されているのが、官主導ではなく「民」の力による経済活性化です。万博を通じて培われたノウハウや人的ネットワーク、技術革新の成果を、民間企業や市民が主体となって活用していくことが期待されています。

万博レガシーの行方

万博が残す「レガシー(遺産)」をどう活かすかが、今後の関西の命運を握っています。会場となった夢洲の今後の活用方法、万博で実証された先端技術の社会実装、そして国際的な認知度向上を活かした観光振興など、取り組むべき課題は多岐にわたります。

バーチャル万博の終了

万博では、時間と空間の制約を超えて世界中の人が参加できる「バーチャル万博」も展開されていました。参加者がアバターとして会場に参加できるこの試みは、新たな時代の万博の可能性を示すものでした。バーチャル万博は2025年10月13日23時をもってサービスを終了しましたが、この経験は今後の大規模イベントの在り方に影響を与えることでしょう。

来場者の広がりと経済効果

携帯電話位置情報データによる分析では、万博の開催が関西にとどまらず、国内各地域から多くの来場者を引き寄せていることが明らかになっています。関東から四国まで、人口あたりで見ても広範囲から来場者が訪れており、全国的なイベントとして機能したことがうかがえます。

この人の流れは、関西地域の宿泊業や飲食業、小売業などに大きな経済効果をもたらしました。しかし、万博終了後にこの需要がどのように変化するかが、今後の焦点となります。

持続可能な発展に向けて

万博では「持続可能な社会の実現」を目指したさまざまな取り組みが紹介されました。環境技術、再生可能エネルギー、循環型社会のモデルなど、未来社会の在り方を示す展示が数多く行われました。これらの理念を、万博終了後も継続して実践していくことが重要です。

包摂的な社会の実現

デジタル万博の課題として浮かび上がった、世代間のデジタルデバイドの問題は、現代社会が抱える重要な課題でもあります。先端技術の恩恵を、すべての人が享受できる社会を実現するためには、技術の開発だけでなく、それを使いやすくする工夫や、使い方を学ぶ機会の提供など、包摂的なアプローチが必要です。

大阪府の今後の役割

大阪府知事をはじめとする行政には、万博のレガシーを最大限に活用し、関西経済の持続的な成長を実現する責任があります。民間の創造性と活力を引き出す環境づくり、万博で整備されたインフラの有効活用、そして国際的なネットワークの維持と拡大など、取り組むべき課題は山積しています。

特に重要なのは、万博の経験を活かして、関西を世界に開かれた革新的な地域として発展させていくことです。技術革新、文化交流、観光振興など、多角的なアプローチによって、万博後も持続的な成長を実現することが求められています。

市民の声に耳を傾けて

万博を実際に体験した市民の声は、今後のイベント運営や都市政策を考える上で貴重な資料となります。「高齢者来るな」と感じた人々の声も、「人の優しさにふれた」という感想も、どちらも万博の真実を表しています。これらの多様な声に耳を傾け、より良い社会の実現につなげていくことが重要です。

大阪・関西万博は、成功と課題の両面を残して幕を閉じました。この経験を、関西の、そして日本の未来にどう活かしていくか。それは今を生きる私たちすべてに問われている課題なのです。

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