NVIDIA ジェンスン・フアンCEO「AIは人類史上最大のインフラ投資」ダボス会議で語る

2026年1月、スイス・ダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)年次総会で、エヌビディアの創業者兼CEO、ジェンスン・フアン氏が登壇し、AI産業について「人類史上最大のインフラ構築」と表現する重要な発言を行いました。この発言を受け、世界の半導体株が上昇するなど、市場に大きな影響を与えています。

AI産業を支える「5層構造」とは

フアン氏が示した革新的な概念が、AI産業の「5層構造」です。これは、基盤となるエネルギーと計算資源を第1層として、クラウドインフラ、AIモデル、そして最終的な各産業用途へと階層化された構造を表しています。

フアン氏は、これら全体への投資が「人類史上最大規模」であるとの認識を示し、特にチップ製造やデータセンター建設など「インフラの構築」が進行中であることを強調しました。これは単なる設備投資ではなく、次世代産業革命の基盤形成であると述べられています。

AIバブル論を否定する根拠

市場ではAI産業の過熱を懸念する声もありますが、フアン氏はこの問題に対して明確に反論しています。AI関連のクラウドGPU価格が依然として上昇していることや、製薬企業が実験室からAIシミュレーションへと研究開発予算を移している現状を指摘し、「これはバブルではなく、必要なインフラ投資だ」と強調しました。

つまり、市場が拡大し価格が上昇しているのは、AIへの需要が極めて現実的で緊急性の高いものであることの証左だというわけです。

2025年のAI進展:3つの重要なステージ

フアン氏は、2025年にAI分野で起きた3つの重要な進展を挙げました。

  • エージェンティックAI:自律的に推論・計画するAI
  • オープンモデルの台頭:オープンソースAIモデルの急速な普及
  • フィジカルAI:物理世界を理解・操作するAI

これらの進展は、AIが単なるデジタルツールから、より広範な領域への応用段階に到達したことを示しています。特にフィジカルAIについては、CES2026でのフアン氏の基調講演でも「物理法則を理解するAI」として重点的に解説されており、将来的には10億台の車すべてがAIを搭載し、自律走行するようになると予見されています。

次世代GPUプラットフォーム「Vera Rubin」の正式発表

ダボス会議の直前に行われたCES2026でのフアン氏の基調講演では、Blackwellの後継となる次世代AIプラットフォーム「Vera Rubin」が正式発表されました。

このプラットフォームの特徴は、「エクストリーム・コデザイン」と呼ばれるアプローチにあります。ムーアの法則が鈍化する中、NVIDIAはチップ単体の性能向上だけに依存するのではなく、CPU、GPU、ネットワーク、ソフトウェアのすべてを一新することで、大幅な性能向上を実現しています。

具体的には、トランジスタ数が1.6倍しかないにもかかわらず、NVFP4推論で5倍、NVFP4トレーニングで3.1倍のパフォーマンス向上を実現しています。また、新しいネットワークインターフェース「ConnectX-9 Spectrum-X Super NIC」により、800Gb/sのEthernet接続を提供するなど、ハードウェアレベルでの革新が進んでいます。

新興国と欧州へのメッセージ

フアン氏は、新興国や欧州に向けた発言の中で、AIを電気や道路と同等の「インフラ」と捉えるべきだと提言しました。自国の言語・文化に根ざした「Sovereign AI(自主的AI)」の構築が重要であり、これは技術格差を縮める機会になると述べられています。

特に欧州については、強力な製造業基盤を活かし、ソフトウェア中心の時代を飛び越えてAIと物理世界を統合する「フィジカルAI」分野でリーダーになる機会があるとの見解を示しました。フアン氏は、これをヨーロッパにとって「一生に一度のチャンス」と表現しており、AIが単に雇用を奪うのではなく、電気技師や配管工など、多くの肉体労働を創出し、その賃金は大幅に上昇すると強調しています。

経済効果の最大化は「アプリケーション層」にあり

フアン氏の発言で特に注目すべきは、「最終的には最上位のアプリケーション層で最大の経済効果が生まれる」という言及です。これは、AIモデルの開発だけでなく、それをいかに各産業の深い課題(ドメイン)と結びつけるかが、2026年以降のエンジニアにとって勝機となることを意味しています。

つまり、単なるAIモデルの高性能化ではなく、医療、製造、農業、金融など、各産業の具体的な問題解決にAIをいかに適用するかが、真の価値創造につながるということです。

市場への影響と今後の展望

ダボス会議でのフアン氏の発言を受け、世界の半導体株が上昇するなど、市場は明確に肯定的な反応を示しています。NVIDIAがもはや単なる「半導体メーカー」ではなく、「AIファクトリー(AI工場)」のインフラをCPU、GPU、ネットワーク、ストレージ、ソフトウェアなど全てにおいて提供可能なAIフルスタック企業であるという認識が、投資家の間で広がっています。

フアン氏の「人類史上最大のインフラ投資」という言及は、単なるマーケティング的な表現ではなく、実際のデータセンター建設投資、チップ開発、ソフトウェア整備などの現実的な取り組みに支えられています。今後、AIインフラの構築がどのペースで進むのか、そして各産業への応用がどのように展開されるのか、世界が注視しています。

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