NTT東日本が「Atlassian Cloud」を導入 システム開発と維持管理を一体運用へ
NTT東日本が、アトラシアン社のクラウド型チームワークプラットフォーム「Atlassian Cloud」を導入し、これまで別々の仕組みで運用していたシステム開発業務と維持管理業務を統合的に管理できる体制を整えました。 この導入を支援したのは、アトラシアン製品に強みを持つ日立ソリューションズで、両社が連携して大規模なシステム運用のモダナイズ(近代化)に取り組んでいます。
背景:巨大なプライベートクラウド「Savanna」を支える業務の複雑さ
NTT東日本は、グループの事業基盤を支えるプライベートクラウド基盤「Savanna」を運用しており、ここには数千台の物理サーバーと数百のシステムが稼働しています。 今後もシステムの拡張が計画されていることから、開発プロジェクトの管理やインフラ維持管理の業務は年々複雑化し、次のような課題が生じていました。
- プロジェクトごとに管理方法がバラバラで、全体の業務状況が見えにくい
- システム開発と維持管理が別々のツール・手順で運用され、情報が分断されている
- 問い合わせ対応や障害対応の履歴が十分に活用されず、ナレッジが散在している
- 今後の拡張や人員計画を考えるうえで、業務負荷や工数を正確に把握しづらい
こうした状況を踏まえ、NTT東日本の先端テクノロジー部は、開発と運用・保守をまたいで業務フローを見直し、モダナイズすることを重要なテーマとして掲げていました。 その解決策のひとつとして選ばれたのが、「Atlassian Cloud」の本格導入です。
導入した「Atlassian Cloud」の主なツール
「Atlassian Cloud」は、ソフトウェア開発やITサービス管理の現場で使われる複数のツールをクラウド上で提供するプラットフォームです。 NTT東日本では、主に次の製品を組み合わせて利用しています。
- Jira(ジラ):プロジェクトやタスクの進捗を管理するプロジェクト管理ツール
- Confluence(コンフルエンス):設計書や手順書、会議メモなどを共有するナレッジ・情報共有ツール
- Jira Service Management:問い合わせや障害対応などを扱うITサービスマネジメント(ITSM)ツール
- Atlassian Guard:IPアドレス制限や二段階認証に対応したセキュリティ強化ツール
これらをクラウドサービスとして利用することで、インフラの運用負荷を抑えつつ、社内の多様なチームで共通の基盤として使えるようにしています。
システム開発業務の可視化と効率化
まず取り組んだのは、各プロジェクトの開発進捗管理の統一と可視化です。
- 各プロジェクトのタスクや課題をJiraで一元管理
- JiraとConfluenceを自動連携し、設計資料や議事録、検討メモなどをConfluenceに集約
- 複数部署にまたがるプロジェクトでも、組織横断で業務状況を可視化
この仕組みにより、「どのプロジェクトで、誰が、どの作業を、どこまで進めているのか」といった情報を、共通の画面で確認できるようになりました。 その結果として、
- 業務量の偏りを把握したうえで、担当者やチーム間の負荷を平準化しやすくなった
- 次年度の工数見積もりや、増員・採用の検討にも、実データを基にした判断がしやすくなった
- ナレッジがConfluenceに蓄積されることで、新しいメンバーのキャッチアップもスムーズに
さらに、ワークフローの自動化も進められており、Jira上のステータス変更に応じて通知やドキュメント更新が動くなど、細かな業務の手間を減らす工夫も行われています。
維持管理業務(問い合わせ・運用)の一元管理
次に、サーバーやシステムの運用・保守を担う維持管理業務については、Jira Service Managementを中心に仕組みを整えました。
- 社内の問い合わせポータルからの申請・相談をJira Service Managementで受付
- 問い合わせ内容の記録から、担当者のアサイン、関連部門との連携までを一つのツールで実施
- リクエストに関する情報を一元管理し、履歴も含めて簡単に追跡できる環境を構築
これによって、従来はメールや電話、スプレッドシートなどに分散しがちだった情報が整理され、社内リクエストの見落としや対応漏れの防止につながっています。 また、問い合わせデータを蓄積・分析することで、よくある質問をまとめて改善施策につなげるといった、継続的な運用改善にも役立てられています。
加えて、Jira Service Managementのアセット管理機能も重宝されており、機器やシステム資産の把握・更新状況の管理にも使われていると紹介されています。
セキュリティと認証基盤の強化
クラウドサービスを活用するうえで、NTT東日本はセキュリティの担保「Atlassian Guard」です。
- IPアドレス制限により、アクセス可能なネットワークを制御
- 二段階認証の導入で、不正アクセスリスクを低減
- Microsoft Entra ID(旧Azure AD)と連携し、シングルサインオン(SSO)を実現
これにより、社内の認証基盤とクラウドサービスが連携し、ユーザーは一度のログインで複数のツールを安全に利用できる環境を手に入れました。 セキュリティを確保しつつ、利便性も損なわないバランスの取れた構成になっています。
導入支援を担った日立ソリューションズの役割
今回の「Atlassian Cloud」導入において、NTT東日本はパートナーとして日立ソリューションズを選定しました。 日立ソリューションズは、アトラシアン社から「Service Management Specialization」認定を受けており、Atlassian製品の導入・運用に関する豊富な知見を持っています。
NTT東日本は、日立ソリューションズについて、ドキュメントによる説明だけでなく、実践に基づくナレッジに裏打ちされたアドバイスが得られた点を高く評価しています。 導入時の推奨事項や注意点も具体的に示され、複雑な業務フローをクラウド上に置き換えるうえで、心強いパートナーとなったことがうかがえます。
日立ソリューションズは今後も、「Atlassian Cloud」のさらなる機能拡充に加え、生成AIを活用した業務負荷の軽減など、継続的な支援を行っていくとしています。
導入効果:業務の“見える化”と働きやすさの両立へ
「Atlassian Cloud」の導入により、NTT東日本の先端テクノロジー部では、これまで別々に扱われていたシステム開発業務と維持管理業務を統合的に管理できるようになりました。
- プロジェクト状況や問い合わせ対応状況が、部門をまたいで一目で把握できる
- データに基づいて、業務量の平準化やリソース配分を検討しやすくなった
- ナレッジがConfluenceに蓄積され、属人化の解消や教育コストの削減に寄与
- 問い合わせ履歴や資産情報をもとに、運用改善のサイクルを回しやすくなった
こうした効果は、先端テクノロジー部だけでなく、他部署にも活用範囲が広がりつつあると報じられています。 大規模なICT基盤を抱える企業において、開発と運用をつなぐプラットフォームを整えることは、働く人の負担を減らしながら、安定したサービス提供を続けるうえで大きな意味を持ちます。
NTT東日本は、地域社会のインフラを支える企業として、クラウドや自社基盤「Savanna」を活用しながら、今後もデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めていく考えです。 今回の「Atlassian Cloud」導入は、その取り組みを下支えする業務基盤の強化という位置づけであり、今後どのように活用範囲が広がっていくのかも注目されます。




