NTTデータグループ、脱炭素とAI時代を見据えたデータセンター戦略が本格加速

NTTデータグループが、データセンター事業とエネルギー戦略の両面で、大きな転換点を迎えています。
生成AIの普及で世界的にデータセンター需要が急拡大するなか、同グループは「世界仕様」の大規模データセンターを相次いで立ち上げるとともに、再生可能エネルギーや省エネ技術を組み合わせたインフラ戦略を強化しています。

三鷹データセンターEAST、電力を実質再エネ100%に転換へ

NTTデータグループは、国内の中核拠点のひとつである「三鷹データセンターEAST」の使用電力について、2025年度中に実質再生可能エネルギー100%へ転換する方針を発表しています。
この取り組みにより、三鷹EASTを利用する顧客は、Scope2(購入電力に伴う排出)の実質ゼロに配慮したデータセンターサービスを利用できるようになります。また、データセンター利用による顧客側のScope3(サプライチェーン全体の排出)削減にもつながることが見込まれています。

さらにNTTデータグループは、国内で保有する13拠点すべてのデータセンターについても、2025年度中に自社使用分の電力を再エネ100%に切り替え、Scope2の温室効果ガス排出量を実質ゼロにする計画を掲げています。2030年までには、保有データセンターにおけるScope1・Scope2排出量の実質ゼロを目指しており、国内外で脱炭素に向けた取り組みを加速させています。

「世界仕様」のデータセンターを相次ぎ竣工、大手需要を取り込み

こうした脱炭素の動きと並行して、NTTデータグループは、世界規模でのデータセンター需要を取り込むべく、「世界仕様」の大規模データセンターの整備を進めています。
関東エリアでは、2棟構成で総電力容量が約100MWクラスとなる大型データセンターの建設が進められており、第1棟の開業は2028年度を予定。複数のGPUを搭載した高密度サーバーの収容を想定した設計となっており、クラウド事業者や大手企業、AI関連サービス事業者などの需要を見据えています。

「世界仕様」とされる背景には、高い電力供給能力国際的なセキュリティ基準への準拠、そして生成AIに対応できる高密度・高負荷への対応力があります。海外のハイパースケーラーやグローバル企業が求める要件を満たすことで、国内市場だけでなく、国際的なデータセンター市場での存在感を高める狙いもあります。

AI投資の第2段階へ 焦点は「半導体」から「電力・冷却インフラ」へ

生成AIや大規模言語モデルの開発競争が激しくなる中で、企業の投資対象は徐々に「第2段階」にシフトしていると指摘されています。これまでのAI投資は、主にGPUや専用半導体などの計算資源の確保が中心でしたが、今後はそれらを安定的かつ持続可能に運用するための「電力」と「冷却インフラ」が鍵になりつつあります。

AIサーバーは、従来の一般的なサーバーに比べて消費電力が大きく、1ラックあたり数十kWクラスの高密度な電力供給が必要になるケースも増えています。その結果、データセンター全体の電力負荷が急増し、電力網への影響や、ピーク負荷時の安定供給、冷却に必要なエネルギーの確保など、新たな課題が顕在化しています。

NTTデータグループが再エネ導入や省エネ技術の活用に力を入れている背景には、こうしたAI時代特有の負荷増大に対応しつつ、環境負荷を抑え、長期的に安定運用できるインフラを構築する必要性があります。単に「サーバーを増やす」のではなく、「エネルギーと一体でデータセンターを設計・運用する」段階に移行していると言えます。

LDESとデータセンター電源の「転換点」

このような状況を踏まえ、2026年6月25日(木)には、「データセンター電源の転換点とLDESの展開」と題したセミナーが開催されます。講師を務めるのは、Bayside Energy Insights Partnerの高木裕登氏です。
セミナーでは、データセンターの増加が電力市場に与える影響を俯瞰するとともに、電力の需給バランスを維持するために重要性が高まっている「長時間エネルギー貯蔵(LDES:Long Duration Energy Storage)」の役割などが解説される予定です。

LDESは、数時間から十数時間、あるいはそれ以上にわたって電力を貯蔵・放出できる技術の総称で、再生可能エネルギーの大量導入と相性が良いとされています。太陽光や風力などの電源は出力が変動しやすく、そのままでは需要とのミスマッチが生じやすいため、電力を蓄えて必要なタイミングで放出する仕組みが重要になります。

データセンターは、24時間365日稼働し、高い電力品質が求められる設備です。再エネ電源やLDESと組み合わせることで、脱炭素を進めながら、安定した電力供給を両立させることが、今後の大きなテーマとなります。セミナーでは、こうした観点から、今まさに「転換点」を迎えているデータセンター電源のあり方が議論される見通しです。

NTTファシリティーズによる「地方共生型高効率データセンター」モデル

NTTグループ全体では、データセンターとエネルギー、地域社会を結びつける新たなモデルづくりも進んでいます。NTTファシリティーズは、「地方共生型高効率データセンターモデル」を発表し、生成AI時代の電力・立地課題に対応するコンセプトを示しています。

このモデルでは、データセンターのサーバーから発生する廃熱を、周辺の住宅やオフィス、ビニールハウス、温浴施設などへ供給し、地域のエネルギー循環に活用することを想定しています。これにより、データセンターは単なる「大口電力消費施設」ではなく、地域のエネルギーインフラとしても機能することが期待されています。

NTTデータグループが進める大規模データセンター整備も、こうしたグループ全体の方向性と連動しています。高効率な電源システム、再エネの活用、廃熱利用などを組み合わせることで、AI時代にふさわしい「環境と共生するデータセンター」を実現しようとしています。

直流給電(HVDC)など、省エネ技術の活用も

データセンターの省エネの観点では、給電方式の工夫も重要です。NTTデータ先端技術などが以前から取り組んできたHVDC(高電圧直流給電)は、その代表的な例です。
データセンター内の給配電を直流化することで、交流と直流の変換回数を減らし、その分の変換ロスを低減することができます。シンプルな構成で高効率を目指すことで、サーバーへの電力供給全体の効率向上を図る取り組みが続けられています。

AIサーバーの高負荷化に対応するには、こうした微細な効率改善の積み重ねも欠かせません。再エネの導入、LDESのような蓄電技術、そしてHVDCなどの省エネ技術が組み合わさることで、トータルとしてのエネルギーマネジメント最適化が進んでいきます。

NTTグループ全体の「ネット・ゼロ」目標とNTTデータグループの役割

NTTグループは、2040年までにグループ全体でのカーボンニュートラル(ネット・ゼロ)達成を掲げています。その中で、世界中でデータセンターを構築・運営するNTTは、2030年までに自社運営のデータセンターからのCO2排出量ゼロを目標としています。

NTTデータグループの取り組みは、このグループ目標の中核をなすものです。国内データセンターの再エネ100%化や、Scope1・Scope2排出量の実質ゼロ化はもちろん、顧客企業の脱炭素支援という観点からも重要な意味を持ちます。
顧客は、NTTデータグループのデータセンターを利用することで、自社のサプライチェーンにおける温室効果ガス排出を削減できるため、ESG経営やサステナビリティ戦略の一環としてもメリットがあります。

AI時代のインフラ投資は「長期戦」へ

AI投資が半導体中心の「第1段階」から、電力・冷却インフラを含む「第2段階」に移る中で、データセンターを取り巻く環境は、短期的なブームではなく、長期的なインフラ投資の局面に入っています。
NTTデータグループは、再エネ100%化、LDESのような蓄電技術との連携、直流給電による省エネ、高効率な冷却、高密度GPUサーバー対応など、多面的な取り組みを通じて、この「長期戦」に備えようとしています。

今後も、データセンターは単なる「サーバールーム」ではなく、エネルギーと環境、地域社会、そしてAI技術をつなぐ社会インフラとしての役割を強めていくとみられます。その中心的プレーヤーの一つとして、NTTデータグループの動向は引き続き注目されます。

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