NSグループが東証プライムに新規上場 公開価格を下回るスタートも、機関投資家の需要は堅調

家賃債務保証事業を手がけるNSグループ株式会社(証券コード:471A)が、東証プライム市場に新規上場(IPO)しました。公開価格に対してやや弱い初値形成となりましたが、事前のブックビルディングでは機関投資家を中心に一定の需要が集まったIPOとして注目されています。

上場の概要:東証プライムに大型IPOとして登場

NSグループは、2025年12月16日に東証プライム市場へ上場しました。

  • 上場日:2025年12月16日
  • 市場:東証プライム
  • 証券コード:471A
  • 業種:その他金融業(家賃債務保証関連)
  • 主幹事証券:SMBC日興証券、大和証券、J.P.モルガン証券など

公開価格をベースとした時価総額は約770億円規模とされており、2025年のIPOの中でも大型案件に位置づけられています。

公開価格と初値:公開価格をやや下回る船出

NSグループのIPOにおける仮条件は、1株あたり1,440円〜1,480円に設定され、その上限である1,480円が公開価格として決定されました。

  • 仮条件:1,440円〜1,480円
  • 公開価格(売出価格):1,480円
  • 売買単位:100株

上場初日の取引開始時についた初値は1,406円で、公開価格の1,480円を下回るスタートとなりました。

初値は公開価格比でおおよそ5%弱のマイナスとなり、いわゆる「初値高騰」とはならなかったものの、市場全体の地合いを踏まえると、極端に売り込まれたわけではなく、ある程度妥当な水準でのスタートと見る向きもあります。

「機関投資家の需要はそこそこ」―ブックビルディングの様子

今回のIPOは、すべて売出銘柄で構成されており、新たな資金調達ではなく、既存株主による持分の売却が主目的となりました。

ブックビルディング(需要申告)は、2025年12月2日〜12月5日の期間で行われています。

  • ブックビルディング期間:12月2日(火)〜12月5日(金)
  • 購入申込期間:12月9日(火)〜12月12日(金)

公開価格が仮条件の上限(1,480円)で決定したことから、機関投資家を含む需要は一定程度しっかり入っていたと考えられます。 一方で、上場初日の初値は公開価格を割り込んでおり、需給面ではやや売り優勢となったことがうかがえます。

IPO情報サイトなどでは、NSグループの案件について、「規模が大きく、上値の軽さは期待しにくい」「初値の大幅な上昇はやや厳しい」といった慎重な見方も事前に示されていました。 実際の初値形成もこの見方に沿った結果となった形です。

事業内容:家賃債務保証で業界最大手クラス

NSグループは、賃貸住宅などにおける家賃債務保証事業を展開する子会社を束ねる持株会社的な位置づけの企業です。

  • 事業内容:家賃債務保証事業を展開する子会社の経営管理等
  • 業界ポジション:家賃債務保証の専業企業として業界最大手クラス

家賃債務保証とは、入居者が家賃を支払えなくなった場合に、保証会社がオーナー(大家)に対して代位弁済を行う仕組みで、近年の賃貸住宅市場ではとして広く利用が進んでいます。

NSグループの収益の多くは、契約更新時に発生する更新保証料などのストック型収益に支えられており、これが業績の安定性につながっています。 賃貸住宅市場が急激に縮小しない限り、一定の需要が見込めるビジネスモデルといえるでしょう。

業績と財務指標:高い利益率と安定成長

直近の業績を見ると、NSグループは売上・利益ともに伸びを維持しつつ、利益率も高水準を保っています。

  • 2024年12月期 売上高:約263億円
  • 2025年12月期 予想売上高:約298億円(前期比+13%程度)
  • 2025年12月期 営業利益予想:約92億円、営業利益率は30%超を見込む水準

IPO情報では、仮条件上限価格を前提とした予想PER(株価収益率)は約13.5倍、PBR(株価純資産倍率)は約2.9倍と試算されています。

  • 予想PER:約13.5倍(仮条件上限ベース)
  • 予想PBR:約2.9倍(同)

同業他社と比較しても、営業利益率は30%台前半と高水準にあり、ストック型の収益構造が高収益体質を支えていることが分かります。

配当政策:上場後は「年2回配当・配当性向50%以上」を目標

NSグループは、上場前に大きな特別配当を実施してきた経緯があります。

  • 2023年:大口の特別配当を実施(上場前)
  • 2024年:配当なし
  • 2025年6月:総額約60億円の特別配当を実施

一方、上場後については、配当方針を「年2回配当・配当性向50%以上」とすることを掲げており、通常配当による株主還元を行う姿勢を明確にしています。

直近の1株当たり利益を用いて試算した場合、1株あたり50円台半ばの年間配当が見込まれ、想定価格ベースでは3%台半ばの配当利回りになるという試算も紹介されています。 安定的なストック収益を背景に、今後の増配余地にも期待がかかる構造です。

株主構成と売出し:全株売出しの大型案件

今回のIPOでは、新株発行による資金調達は行わず、全株が既存株主による売出しとなりました。

  • 公募株数:なし(資金調達を伴わない)
  • 売出株数:国内・海外向け合計で大規模な売出し
  • 海外販売比率:約3割超(31.6%)

海外投資家向けにも一定の配分がなされたことで、グローバルな機関投資家からの需要も取り込む形となりました。 それでも初値が公開価格を下回ったことから、需給面では「売り圧力がやや勝った」と解釈することもできます。

投資家から見た評価ポイント

NSグループのIPOについて、投資家が注目したポイントは、大きく次のように整理できます。

  • プラス要因
    • 家賃債務保証で業界最大手クラスという安定したポジション
    • 更新保証料を中心としたストック型ビジネスによる安定収益
    • 営業利益率30%前後という高い収益性
    • 上場後は高めの配当性向(50%以上)を掲げている点
  • 慎重視された要因
    • 時価総額700億円超・吸収金額も大きい大型IPOで、需給面で重さが意識されたこと
    • 全株売出しであり、「成長投資のための資金調達」という色合いが薄い点
    • 事業内容が中長期安定型である一方、短期的な話題性・成長ストーリーは派手ではない点

こうした要素から、複数のIPO情報サイトでは事前に「初値高騰はやや見込みにくい」との評価が示されており、結果として初値は公開価格を割り込む形で着地しています。

今後の注目点:安定成長と株主還元の両立なるか

NSグループのような安定収益型の金融関連ビジネスは、短期の値上がり益を狙うIPO投資家からすると、やや地味に映るかもしれません。その一方で、

  • ストック型ビジネスによる業績の安定性
  • 高い営業利益率
  • 配当性向50%以上を掲げる株主還元方針

といった特徴は、中長期でインカムゲインと安定成長を重視する投資家にとって魅力的な要素となりえます。

今後は、

  • 賃貸住宅市場や家賃保証ニーズの動向
  • 競合他社とのシェア争い
  • 配当政策の実行度合い(増配の有無など)

といった点が、株価評価を左右する材料として意識されていくでしょう。上場初日はやや軟調なスタートとなりましたが、機関投資家を含む一定の需要に支えられたIPOでもあり、今後の業績開示や配当実績を通じて、市場からの評価がどのように変化していくのかが注目されます。

参考元