日産自動車、2025年9月中間決算 ― 大幅赤字の背景と今後の展望
はじめに
日産自動車が2025年11月6日、2025年度上期(4月~9月)の連結決算を発表しました。
今回の決算は多くの注目を集めており、発表された数字は市場にも大きな衝撃をもたらしています。
本記事では、決算の全体像や業績悪化の要因、今後の経営課題についてわかりやすく解説します。
2025年9月中間決算のポイント
- 連結経常損益が赤字転落:2025年度上期(4~9月)の連結経常損益は 779億円の赤字。前年同期の1160億円黒字から大きく落ちこみました。
- 純損益は2219億円の赤字:発表された2025年9月中間決算では、最終利益(純損益)が2219億円の赤字となりました。
- 直近3ヵ月も大幅減益:2025年7~9月期単体では、連結経常利益が前年同期比38.5%減の313億円に落ち込みました。
- 売上営業利益率は改善:営業利益率は前年同期1.1%から1.8%へと、わずかながら改善傾向が見られています。
決算概要と市場の反応
2025年度上期において、日産の業績は期待に反し大幅な赤字に転落しました。
これは、国内外の自動車市場の変動や、原材料価格の高止まり、為替変動などさまざまな外部要因が重なったことによるものです。
特に、半導体不足などのサプライチェーン問題や海外販売の伸び悩みが、従来の業績回復計画に大きな影響を与えました。
その一方で、売上営業利益率が改善するなど、一部指標には前進も見られ、経営効率の向上に努めた痕跡も確認できます。
市場関係者やアナリストの間では、「予想以上の赤字だが、一部で底打ちの兆しも見られる」という冷静な見方もあります。
業績悪化の主な要因
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海外販売の停滞
中国や欧米での新車販売が予想を下回り、グローバルでの販売台数が伸び悩みました。
特に、競合他社の新型電気自動車(EV)やハイブリッド車の攻勢に対し、日産の対応が遅れた部分も業績低迷の一因となっています。 -
為替・原材料コストの上昇
為替の急激な変動により、海外での収益が圧迫されました。また、電池や半導体といった主要部品の調達コストも上昇し、利益を押し下げました。 -
サプライチェーンの混乱
グローバルな物流の遅延や 半導体不足が、自動車の生産計画に大きな影響を与えました。
これにより、一部モデルの納期が大幅に遅れ、販売機会の損失が生じています。 -
研究開発コストの増加
EVや自動運転技術などの次世代車両の開発にかかる投資が重なり、費用増につながっています。
中長期の経営課題
今回の赤字決算を受けて、日産自動車は経営再建に向けて一層の努力を迫られています。
企業価値の向上や持続可能な成長のため、次のような課題解決が求められます。
- EVシフト強化:世界的な脱炭素の流れを受け、競争力ある電気自動車の早期投入が急務となっています。
- グローバル市場での競争力回復:特に中国やアメリカなど主要市場での販売ネットワーク強化、現地ニーズに即した商品開発が不可欠です。
- 固定費構造の見直し:収益力回復のためには規模や効率に応じた固定費の削減、業務プロセスの徹底的な効率化が必要です。
- ブランド力の再構築:ゴーン事件以降のイメージ低下からの信頼回復と、先進技術・安全性に裏付けられたブランド価値の確立が課題です。
厳しい状況下で見える光明
赤字決算ではあるものの、売上営業利益率の向上というポジティブな側面や、コスト効率化策の進展など一定の成果も見られます。
特に、日産独自の電動化技術「e-POWER」や、先進運転支援システムの進歩は国内外で高く評価されています。
さらに、最近は新たな経営再建策「Re:Nissan」も公表されており、企業全体の体質改善に向けた動きが強まっています。
投資家・ユーザーへのメッセージ
2025年上期の厳しい決算は、日産自動車の目指す「変革と成長」の道のりが平坦でないことを示しています。
しかし、創業以来培ってきた技術力と開発力、「人を豊かにするモビリティ」という理念は揺らいでいません。
今後、経営陣の強力なリーダーシップと社員一人ひとりの努力によって、再び世界のトップメーカーとして甦ることができるか、注目が集まります。
変化の激しい自動車業界にあって日産のチャレンジは続きます。
今後の進展から目が離せません。
さいごに
本記事では日産自動車2025年9月中間決算についてわかりやすくまとめました。
未曾有の赤字という試練を受け、同社の改革がどこまで進化できるのか、その動向は業界全体にも大きな影響を与えます。
これからの日産に、真の意味での「再生」の時が訪れるのか、業績の回復とブランド再生の道筋を引き続き丁寧に見守っていきましょう。



