西鉄だけじゃない!企業が内定者確保に苦心する2025年秋の最新事情
就活は売り手市場、企業は内定者確保に全力
2025年秋、日本の就職市場は依然として超売り手市場の様相を呈しています。主要企業は例年以上に多くの学生に内定を出し、採用人数も右肩上がりとなっています。しかし、それと同時に「内定辞退率」という大きな課題に直面しているのが現状です。特に交通インフラを代表する西鉄をはじめ、ANAや地場企業に至るまで、採用現場での対応が話題となっています。
企業が直面する「3人に2人が内定辞退」時代
全国の企業では「せっかく内定を出しても、そのうち3人に2人は辞退してしまう」というシビアな状況が浮き彫りになっています。兵庫県内企業は新卒の確保を最重要課題とし、従来よりも一歩踏み込んだ取り組みを展開しています。例えば、内定者を一足早く社内イベントに招待したり、社員交流会や懇親会を積極的に実施することで、働くイメージを具体的につかんでもらい、定着率アップを目指しています。
- 採用前から内定者同士のネットワークを構築
- 職場見学や仕事体験の場を数多く設定
- 内定者と現役社員のランチ会や座談会を開催
こうした努力にもかかわらず、複数内定を持つ学生が増加している現在、依然として「辞退」は高水準に留まっています。しかし、逆風の中で学生の心を掴もうとする企業側の工夫も日々進化しているのです。
静岡にみる「Uターン就職」への期待と現実
一方、地方都市では別の課題も浮き彫りになっています。静岡県をはじめとする地方では、Uターン就職の促進が長年のテーマ。進学や就職で一度は県外へ出た若者を地元に呼び戻したいという企業の思いが強まっています。しかし、東京や大阪など大都市の企業が高待遇で積極採用を続けていることから、「人材流出」を止めきれない状況です。
- 静岡に戻りたいけれど、首都圏の給与やブランドに魅力を感じる学生が多い
- 企業側は地元愛や家族との時間の充実などをアピールし、Uターン誘致を強化
- 移住・定着支援金や福利厚生の充実、働き方改革の徹底で魅力向上を図る動きも拡大
それでも就職活動生の多くは全国区で選択肢を広げており、地方企業にとって「優秀な人材を呼び戻し、長く働いてもらう」ことは依然高いハードルが続いているのです。
ANAグループの内定式が示すコロナ後の就職回復と新たな課題
2025年10月1日、ANA(全日本空輸)は2026年度入社予定者の内定式を東京ビッグサイトで開催しました。内定者は819人と、コロナ禍前の水準まで大きく回復。式典では井上慎一社長が「よくぞ選んでいただいた」と歓迎の辞を述べ、未来を託せる人材を迎える期待を語りました。
内定者の職種は旧総合職の「グローバルスタッフ職」、自社養成パイロット訓練生の「運航乗務職」、そして最多の「客室乗務職」など多岐に渡ります。客室乗務員に内定した学生は「搭乗されるお客様の1人ひとりに寄り添う客室乗務員になりたい」と意気込み、運航乗務職の内定者は「安全を守り続けたい」と抱負を語りました。
コロナ禍で激減した採用数がついに回復した一方、学生優位の売り手市場による新たな悩みも浮上しています。9月1日現在で大学生の就職内定率は94.8%、2017年以降で過去最高となりました。しかし、内定式後の調査ではおよそ2割の学生が「複数社の内定式に参加」しており、3人に1人以上が「辞退の可能性がある」と回答しています。ANAも「仕事内容への理解を深めてもらうための職場体験や交流会を内定者向けに積極的に企画し、定着率の向上を狙う」と説明しています。
企業の工夫:社内行事や交流イベントで“離脱”防止
こうした難しい状況を乗り切るため、ANAを含む大手企業や地方の中小企業、小売業、製造業などでも社内行事の前倒し招待や多様な職場体験の実施がスタンダードになりつつあります。
- 内定者限定イベント:先輩社員との座談会や社内見学、リーダー研修への特別招待が増加
- 早期ネットワークづくり:同期内定者同士のグループコミュニケーションを強化
- 柔軟なフォロー体制:SNSや専用チャットツールで内定者の不安を早期解消
兵庫県のあるメーカーでは「入社前から社内コミュニティに加わって一緒にイベントに参加すると、仕事のイメージや人間関係の不安が減り、『この会社で頑張りたい』という気持ちが強くなった」とする調査結果も出ています。
しかし、学生側の意識も変化しています。「興味関心がすぐ変わる」「複数社を天秤にかけるのが当たり前」「会社が自分に合うかを本気で見極めたい」といった声が主流になっています。これに伴い、内定者フォローも単なる「ウェルカムイベント」から、「個人の価値観やキャリア観を尊重する」段階へシフトしています。
西鉄、ANA…交通インフラ企業の採用難の実情
社会インフラの根幹を担う西鉄のような企業も、内定者確保に例年以上の努力を続けています。アフターコロナを生き抜くための若手人材確保が会社の命運を分ける時代。鉄道・バスなど公共交通を支える現場では、安全・安心・地域貢献への志を学生にアピールしつつ、働き方改革やワークライフバランスも大きな武器になります。
交通インフラという「やりがい」に加え、デジタル化プロジェクトやダイバーシティ推進などの話題で、さまざまなバックグラウンドを持つ人材を呼び込む施策が進んでいます。「より魅力的な職場」と感じてもらうため、社員が自発的に会社の魅力を発信したり、配属部門から現場の声を届けるなどの工夫も見られます。
今後の展望:本当に求められるのは「ミスマッチ防止」
内定者定着のためには、「なぜこの会社で働きたいのか」「自分のキャリアと会社のビジョンが重なるか」を学生自身が深く考え、企業側もその問いに全力で応える必要があります。ミスマッチによる早期離職リスクを防ぐには、入社前からありのままの職場を伝え合い、双方向で納得感を育てることが重要です。
JPX(日本取引所グループ)や一部上場企業の中には、新入社員の配属を内定段階で相談制にしたり、入社半年後のキャリア相談を義務化する動きもあります。地方自治体も企業向けの人材マッチングセミナーや、若手従業員のライフプランセミナー等を開催し、社会全体で若者の「定着と成長」を支えています。
まとめ:西鉄をはじめとした日本企業の未来に向けた挑戦
交通インフラの西鉄や、全国の大手・中小企業がまさに今、「採用した人材に長く活躍してもらう」ことを目指してさまざまな工夫を続けています。学生側の期待と企業側の本音が複雑に交錯する現場ですが、「魅力的な職場」「人間関係の安心」「地域や社会への貢献」という原点を忘れず、定着に向かう努力は止まりません。2025年秋、まさに日本の就職シーンは大きな転換点を迎えています。