ニュージーランドと世界で広がる日本食市場――料理人たちが紡ぐ食文化の現在

近年、世界各地で日本食の人気が急速に高まり、食文化の多様化と共に新たな展開を見せています。特にニュージーランドをはじめ、台湾、フィンランド、オーストリアなどでは、現地のニーズに応えつつ日本料理人が活躍し、日本食市場が著しい成長を遂げています。本稿では、ニュージーランドを軸に、台湾・台北・台中・高雄、フィンランド、オーストリア・ウィーンの最新動向にも目を向け、料理人たちの取り組みと日本食文化の現状を分かりやすくご紹介します。

ニュージーランドでの日本食事情――多様化する味と料理人の力

ニュージーランド全土では、どの都市でも日本食を楽しむことができると言われています。都市部のショッピングモールやフードコートには、寿司やラーメンなどの日本食店が必ずと言ってよいほど出店し、日本人はもちろん、現地の人々にも広く親しまれています。

スーパーでも醤油や味噌、米など日本食材の入手も容易で、自炊派から外食派まで幅広い層が和食に親しんでいます。現地の人々の嗜好も取り入れた創作和食が多く、例えば「DON(丼)」や「BENTO(弁当)」などは、日本式をベースにローカルテイストや盛り付けでアレンジした楽しいメニューとなっており、食文化の融合が感じられます。

  • DON(丼):日本やアジアのさまざまな具材を載せ、ご飯の上からチリソースなど現地流の味付けがされるなど、ユニークなアレンジが人気です。
  • BENTO(弁当):ご飯・サラダ・漬物・メインがバランス良く盛り付けられ、見映えも楽しい創作弁当が多いです。

また、日本人経営の和食店も大切な役割を担っています。ハミルトンには「どんぶりや」や「ワイカトうどん」、「アイ ジャパニーズ カフェ」などがあり、鮪やサーモンだけでなく、現地で好まれる海老カツにぎりやスパイシーラーメンなどが提供されています。日本人ラグビー選手も通うほどの人気店です。

  • どんぶりや:大きなとんかつやバラエティ豊かな寿司が楽しめる定食屋さん。
  • ワイカトうどん:店内で麺を手打ちし、つるみや腰のある本格うどんとかき揚げセットが絶品。台湾人も太鼓判を押す味。
  • アイ ジャパニーズ カフェ:出汁の効いたお味噌汁や美しい松花堂弁当風ランチボックスが評価されています。

こうした店舗は、日本食をただ輸出するだけでなく、現地の食文化に寄り添いながら伝統と革新を融合し、現地の人々の新しい好みに応える食体験を創出しています。

中でも注目されるのは、オークランドの日本食レストラン「祇園」のオーナーシェフ、久々江義昭氏のような料理人の存在です。彼は20年以上にわたり、日本酒や旬の食材を活用し、繊細な和食を通じて日本文化の架け橋となっています。2025年4月にはその功績が認められ、在外公館長表彰を受賞しました。

  • 祇園・久々江シェフ:京都で修行した本格派、2006年からNZで日本食の魅力を伝え、地域とのつながりも大切にしています。

台湾・台北・台中・高雄で急成長する日本食市場

台湾では、台北・台中・高雄を中心に日本食市場が急速に成長しています。日本の素材や技術が評価されつつ、現地に根付いた料理人の力による支援が進み、現地消費者のニーズを理解した新しいメニュー開発やサービス向上が推進されています。

近年は台湾企業とのコラボレーションや現地の若手料理人育成なども活発で、市場の拡大とともに日本食ブランドの認知度向上につながっている点が特徴です。

フィンランド――北欧独自の食文化との融合

フィンランドにも日本食市場が進出し、北欧の食文化との融合が進んでいます。「和食=健康的、清潔感がある」というイメージも定着しつつあり、フィンランド現地の食材を工夫して使用することで、日本食ならではの美しさと伝統を発信しています。

現在は、寿司や和食カフェを中心に、日本の食文化をアレンジしたメニューの開発や、現地の嗜好に合わせた食材の調達技術が高まっている点も注目です。料理人による現地スタッフへの調理指導や、日本食イベントの開催も盛り上がりを見せています。

オーストリア・ウィーン――伝統と革新を融合する料理人

ウィーン

  • 日本料理人は現地シェフとのマッチングを行い、日本食技術を生かした新たなメニュー開発やコラボレーションが進んでいます。
  • 和食の持つ奥深い魅力や、革新的な調理技法の導入により、ウィーンの日本食レストランは現地食文化に根付いた存在となりつつあります。

料理人が紡ぐ食体験と市場の未来

これらの国々で共通するのは、料理人の努力と技術、現地の食文化への理解を礎に世界へ広がる日本食市場です。単なる味覚の提供を越え、食を通じて伝統・革新・多様性が結びつき、新たな市場やコミュニティが形成されています。

今後も日本食とその担い手である料理人たちが、世界のさまざまな土地でその文化的価値と美味しさを伝えていくことが期待されます。

まとめ――グローバルに広がる日本食と料理人の力

  • ニュージーランド:都市部から地方まで多様な形の日本食が根付き、日本人や現地シェフが市場を牽引。
  • 台湾:現地進出、若手料理人育成や新たなメニュー開発などを通じて市場が成長中。
  • フィンランド:北欧食文化との融合、多様なメニュー展開が進む。
  • オーストリア・ウィーン:伝統と革新を融合する料理人の活躍で、和食が評価を高めている。

この世界的な広がりの中で、食を通じた文化交流、市場拡大、日本食の新スタンダード創出といった動きは、更なる飛躍を予感させます。これからも料理人たちの情熱と創意が世界の食卓を彩っていくことでしょう。

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