旧岐阜県庁舎が生まれ変わる――岐阜市司町で進む「ミュージアム&高級ホテル」計画とは
岐阜県の行政の中心として長年親しまれてきた旧岐阜県庁舎(旧岐阜総合庁舎・岐阜市司町)が、新たな役割を担う施設として動き出しました。県は、公募型プロポーザル方式で進めてきた利活用事業について、ミュージアム機能と高級ホテル機能を併せ持つ複合施設として活用する方針を固め、優先交渉権者を正式に決定しました。
また、国内ゴルフ史を振り返る場として親しまれてきたJGAゴルフミュージアムでは、閉館にあわせてセレモニーが行われ、今後は新たなミュージアムで「ジャンボ尾崎」こと尾崎将司さんのコーナー設置も予定されているといいます。この二つのニュースは、岐阜をはじめとする地域における「歴史と文化の継承」「観光資源の磨き上げ」という共通した流れを象徴する出来事となっています。
旧岐阜県庁舎とは――岐阜の歴史を見つめてきた行政拠点
旧岐阜県庁舎は、岐阜市司町に位置する、かつての岐阜県の行政庁舎です。現在は「旧岐阜総合庁舎」とも呼ばれ、県庁機能の移転後、建物の歴史的価値や立地の良さを生かした新たな利活用が長く検討されてきました。
県は、単なる建物の再利用にとどまらず、「岐阜らしさ」や地域の文化を発信する拠点としての活用を目指し、公募型プロポーザル(事業者から提案を募り、内容を比較・評価して選定する方式)で事業者を募集してきました。
その結果、2025年12月26日、岐阜県は旧庁舎利活用事業の優先交渉権者を決定したと発表しました。今後、県と優先交渉権者との間で具体的な事業計画や契約条件などの協議が進められていきます。
ミュージアムと高級ホテルに――複合施設としての新たな姿
今回の発表で大きなポイントとなったのが、旧岐阜県庁舎を「ミュージアム」と「高級ホテル」として活用するという計画です。県が公開した資料やイメージパースによると、建物の特徴ある外観や歴史性を生かしながら、観光と文化の拠点として再整備する構想が示されています。
詳細な内訳は今後の協議で詰められますが、現時点で示されている活用の方向性としては、次のようなイメージが挙げられます。
- ミュージアム機能:岐阜の歴史・文化・産業などを紹介する展示施設や、市民・来訪者が学び楽しめる空間としての整備
- 高級ホテル機能:県外・海外からの観光客やビジネス客も意識した、質の高い宿泊施設の導入
- 公開性の高い空間づくり:館内の一部を市民が利用しやすいオープンスペースとすることや、イベント利用などへの活用も視野に
岐阜新聞デジタルが報じたところによると、西側から見た外観イメージなども公開されており、歴史的な雰囲気を保ちつつも現代的なデザインを織り交ぜた建物になることがうかがえます。県の発表資料でも、イメージパースを通じて、外観や施設構成の方向性が示されています。
優先交渉権者の決定と今後のスケジュール
旧岐阜県庁舎の利活用事業者は、プロポーザル評価会議での審査を経て選定されました。評価会議では、建物の保存活用の考え方、事業の実現性、地域への波及効果、経済性など、多角的な観点から提案が比較・検討されたとされています。
県の発表によると、評価結果を踏まえ、もっとも優れた提案を行った事業者を「優先交渉権者」として指定し、今後はこの事業者と県が中心となって詳細な協議を進めていくことになります。報道では、2029年の稼働を目指すスケジュール感が示されており、設計・工事・テナント調整などを含め、数年単位での準備期間が見込まれています。
今後の主な流れは、一般的な官民連携事業のプロセスを踏まえると、以下のような段階になると考えられます(ここから先は、県の一般的な事業手順に基づく整理であり、具体的なスケジュールは今後の協議によって確定します)。
- 県と優先交渉権者による基本協定などの締結に向けた協議
- 設計作業や保存・改修の詳細検討、関係法令に基づく手続き
- 改修工事や設備導入
- 運営体制の整備・開業準備
いずれにしても、旧岐阜県庁舎が新たな姿で一般に公開されるまでには、段階を踏みながら丁寧に準備が行われていくことになります。
歴史的建築の保存と活用――岐阜市中心部に新たなにぎわいを
今回の計画で注目されているポイントのひとつが、歴史的な行政建築を壊さずに「生かす」形で再活用していくという点です。旧庁舎のような公共建築は、老朽化や機能更新のタイミングで取り壊されることも多い一方、近年は全国的に「歴史ある建物を保存しながら、新たな用途を与えて再生する」という動きも広がっています。
岐阜でも、旧県庁舎をミュージアムやホテルとして活用することで、次のような効果が期待されています。
- 中心市街地のにぎわい創出:ホテル宿泊者やミュージアム来場者が周辺の商店街や飲食店を利用することで、まち全体の活性化が見込まれる
- 文化・観光拠点の形成:長良川や岐阜城など既存の観光資源と組み合わせることで、滞在型観光の魅力を高める役割が期待される
- 県民の記憶の継承:かつて県庁舎として利用されていた建物を残すことで、「ここで行政が動いていた」という歴史的な記憶を次世代へと伝えることができる
また、建築デザインには、建築家・山下泰樹氏が関わっていると伝えられており、外観だけでなく内装や空間構成においても、「歴史性」と「現代性」を両立させる工夫がなされることが期待されます。
JGAゴルフミュージアム閉館セレモニー――「ジャンボ尾崎コーナー」構想も
一方、スポーツと文化の面からは、JGA(日本ゴルフ協会)ゴルフミュージアムの動きも大きな話題となっています。長年にわたり、日本のゴルフの歴史や名選手の功績を紹介してきた同ミュージアムは、役割を終える節目として閉館セレモニーを開催しました。
閉館は寂しいニュースではありますが、同時に新たな展開も伝えられています。報道などによると、今後整備される新しいミュージアムには、「ジャンボ尾崎」こと尾崎将司さんをテーマにした専用コーナーの設置が予定されているといいます。
尾崎将司さんは、日本男子プロゴルフ界を代表するレジェンド的存在であり、数多くのツアー優勝記録や、その豪快なプレースタイル、独特のキャラクターで広く知られています。新ミュージアムに「ジャンボ尾崎コーナー」が設けられることで、
- ゴルフファンに向けた見応えのある展示の充実
- 若い世代に向けたゴルフの魅力発信
- 日本ゴルフ史の中での尾崎さんの位置づけをわかりやすく伝える教育的役割
といった効果が期待されます。
JGAゴルフミュージアムの閉館と新ミュージアム構想は、岐阜県内に限られた話題ではありませんが、「スポーツ文化をどのように次世代につないでいくか」という点で、旧岐阜県庁舎のミュージアム計画とも通じるものがあります。
岐阜県に広がる「学び」と「体験」の場づくり
今回の二つのニュースを並べて見てみると、岐阜県内外で進む「学び」と「体験」の場づくりという共通テーマが浮かび上がってきます。
旧岐阜県庁舎では、行政拠点としての役割を終えた建物が、ミュージアム機能を通じて地域の歴史や文化を伝える場へと生まれ変わろうとしています。そこに高級ホテルが加わることで、観光客やビジネス客にも「岐阜の物語」に触れてもらう機会が増えることが期待されます。
一方で、JGAゴルフミュージアムの閉館と新ミュージアム構想は、スポーツを通じた文化の継承という面から、ゴルフの歴史や名選手たちの足跡をわかりやすく伝える試みです。ジャンボ尾崎コーナーのように、具体的な人物に焦点を当てることで、来館者が感情移入しやすくなり、「学び」がより深いものになることが期待されます。
こうした流れは、単に展示物を並べるだけではなく、
- 建物そのものの歴史や背景を知る
- 実際にその場に立ち、雰囲気を感じ取る
- スポーツや文化の物語に触れ、自分自身の経験と重ねる
といった、体験型の学びを重視する動きの一環ともいえます。
2029年稼働を目指す旧県庁舎プロジェクトへの期待
旧岐阜県庁舎をミュージアムと高級ホテルへと再生するプロジェクトは、2029年の稼働を目標に掲げているとされています。今後の協議や設計、工事の進捗によってスケジュールは変動する可能性もありますが、中長期的な視点でまちづくりを進めていく姿勢がうかがえます。
岐阜市の中心部に位置するこのエリアは、すでに行政・教育・商業などの機能が集まる場所でもあります。そこに新たな観光・文化拠点が加わることで、
- 昼夜を通じた人の流れの創出
- 近隣エリアの再整備や新たな店舗出店などへの波及効果
- 国内外の観光客に向けた「岐阜ブランド」の発信強化
など、さまざまな波紋が広がっていく可能性があります。
また、岐阜は長良川や金華山、岐阜城、川原町の古い町並みなど、歴史と自然の魅力を備えた地域でもあります。こうした既存の観光資源と、新たに生まれるミュージアム・ホテルがうまく連携することで、滞在型観光の魅力を高め、リピーターや長期滞在者を増やしていくことにもつながるでしょう。
市民に開かれた「新しい県庁舎の記憶」へ
行政庁舎としての役目を終えた建物が、再び光を浴びるのは簡単なことではありません。老朽化対策や耐震性の確保、バリアフリー対応など、クリアしなければならない課題は数多くあります。それでも、岐阜県がプロポーザルを通じて事業者を選定し、ミュージアムと高級ホテルとしての活用を進めている背景には、
- 「壊して建て替える」だけではない選択肢を模索する姿勢
- 歴史ある建物を「資産」として捉え直す視点
- 市民や来訪者に開かれた空間をつくるというまちづくりの方向性
があります。
旧庁舎の利活用が進み、2029年前後に実際の施設が稼働を迎えるころには、かつてここで働いていた人々や、用事で足を運んだ県民にとっても、「懐かしい場所が、新しい形で戻ってきた」と感じられることでしょう。そして、新たに訪れる人にとっては、「岐阜の歴史と今」を同時に感じ取れる特別なスポットとなるかもしれません。
JGAゴルフミュージアムの閉館と新ミュージアムでのジャンボ尾崎コーナー構想、そして旧岐阜県庁舎の再生計画。これらのニュースは、形は違えど、「過去を大切にしながら、未来へとつなげていく」という共通のメッセージを私たちに伝えています。
岐阜県内外で進むこうした取り組みが、子どもから大人まで多くの人にとっての学びの場・出会いの場・思い出の場となっていくことが期待されます。



