NASA、月面に核原子炉の建設を計画 2029年末の稼働目指す
アメリカ航空宇宙局(NASA)のショーン・ダフィー長官代行は、2029年末までに月面に核原子炉を建設し、稼働を開始するよう指示を出しました。この動きは、中国とロシアが2030年代半ばの月面原子炉建設計画を進めていることに対抗し、アメリカが宇宙のエネルギー供給で先行を目指すものです。
なぜ月面に核原子炉が必要なのか
月の一日は約地球の4週間に相当し、昼と夜が約2週間ずつ続きます。このため、昼間の太陽光だけに頼るエネルギー供給が不安定になるという課題があります。太陽光発電の利用が制限される環境下で、安定的かつ持続的に電力を供給できる核原子炉が有望な選択肢として注目されています。
NASAの計画と目標
- 出力は約100キロワットで、これは地球上の約80世帯分の電力需要に相当します。
- 2029年末までに原子炉を稼働状態にすることを求めています。
- 指示後30日以内に担当責任者を任命し、60日以内に民間企業から具体的な計画案を募集する予定です。
- 2027年には有人月着陸を目指す「アルテミス計画」と連携して進められますが、計画は遅延も懸念されています。
国際的な背景と競争
中国とロシアも月面に原子炉を設置するプランを持っており、それぞれ2030年代半ばの建設を目標としています。NASAはアメリカ主体の国際月探査で優位に立つため、原子炉建設を急ぐ姿勢を鮮明にしています。もし中国やロシアが先行すれば、月面の一部区域を「立ち入り禁止区域」として宣言する可能性もあると伝えられています。
今後の展望と課題
原子炉建設は宇宙開発における重要なマイルストーンとなり得ますが、資金や技術面での課題も存在します。また、トランプ前政権がNASA予算の大幅削減を提案したこともあり、計画がスムーズに進むかは不透明です。さらに、2020年代末に運用終了が予定されている国際宇宙ステーションの後継機計画についても、ダフィー氏は検討の加速を指示しています。
まとめ
今回のNASAの方針は、月面での持続可能なエネルギー供給を実現するための一大プロジェクトです。核原子炉の導入は、長期滞在や宇宙基地の建設において極めて重要な基盤となるでしょう。世界の宇宙開発競争の中で、アメリカがどのようにリードを保つか注目が集まっています。