村田製作所社長が語る「AIインフラ投資」のいま 拡大する需要と北陸拠点の役割
世界的な生成AIブームとともに、データセンター向けのAIインフラ投資が急速に拡大し、日本の電子部品産業にも大きな追い風となっています。その中心的なプレーヤーの一社が、京都に本社を置く村田製作所です。
同社はこれまでスマートフォンや自動車向けの電子部品で世界をリードしてきましたが、今はさらにAIサーバー向け電子部品を柱の一つに据え、積極的な投資と供給拡大に動いています。AIインフラの波に「乗らなくてはならない」と語る経営トップの姿勢は、同社の決算や事業計画にも色濃く表れています。
AIサーバー向け電子部品需要がピークに向かう村田製作所
村田製作所の2026年3月期通期業績見通しでは、売上収益は前期比0.2%減の1兆7400億円、営業利益は0.1%増の2800億円とされています。わずかな減収となるものの、減益予想から一転して営業利益は増益に転じており、会社側は各項目を上方修正しています。
背景にあるのは、世界的なAIサーバー投資の継続と、データセンター向け部品の需要拡大です。とくに、
- 積層セラミックコンデンサー(MLCC)
- 電源モジュール
といった村田製作所の主力部品が、データセンター向けAIサーバーで多く搭載されていることが大きな追い風になっています。中島規巨社長は「好調なデータセンター分野に、積層セラミックコンデンサーなどの部品群がヒットした。市場が想定を上回る勢いで成長している」と述べ、AI関連需要の強さを強調しています。
同社は中期経営計画のなかで、2027年度までに売上高2兆円以上、営業利益率18%以上という目標を掲げています。この達成を左右する最大のポイントも、やはりデータセンター・AIサーバー向け市場での成長にあります。
AIバリューチェーン拡大期に入ったエレクトロニクス産業
村田製作所は、2026年年頭の社内向けメッセージの中で、今の事業環境を次のように位置づけています。「我々が立地するエレクトロニクス産業は短期的にAIバリューチェーンの拡大期に突入しており、AIの活用機会は急速に広がっています」とし、巨大データセンターなどの需要拡大に対応していく重要性を示しています。
ここでいうAIバリューチェーンとは、
- AI用半導体やサーバー
- それを支える電子部品・電源モジュール
- データセンター設備
- クラウドサービスや生成AIサービス
など、一連の産業のつながりを指します。村田製作所はその中核部分、すなわちAIサーバー内部の心臓部ともいえる電子部品供給を担っており、AIインフラ投資の拡大は同社にとって極めて重要な成長ドライバーになっています。
「波に乗らなくてはならない」AIインフラ投資と生産能力拡大
AIサーバー向け需要の拡大に対応するため、村田製作所は国内外での設備投資を加速させています。なかでも象徴的なのが、島根県出雲市での電子部品の新工場建設です。AIサーバー向けの積層セラミックコンデンサーなどの供給能力を増強する狙いがあり、AIインフラ投資の「波」を確実にとらえようとしています。
同社の決算資料でも、エレクトロニクス市場全体について「データセンターへの投資が継続しAIサーバーおよび周辺機器の需要が拡大した」と分析しており、その需要に応えるべく、
- インダクタ・EMIフィルタの売上収益が前年同期比9.6%増
- 機能デバイスの売上収益が同6.1%増
- コンピュータ用途の売上収益が同20.1%増
といった形で、特にサーバー・コンピュータ向けの伸びが顕著であることを示しています。コンピュータ用途の増収には、AIサーバーおよび周辺機器向けの部品増加が含まれていると説明されています。
北米AIインフラへの貢献 ― 最大150億ドル規模
AIインフラ投資の「波」は、日本国内だけでなく、北米市場でも勢いを増しています。村田製作所は、日米間の投資に関する共同ファクトシートのなかで、アメリカのAIインフラへの電子部品提供により最大150億ドル(約2兆3000億円)貢献するとしています。
これは、
- 北米の巨大データセンター運営企業
- AI半導体メーカー
- クラウドサービス事業者
などが行うAIサーバー投資に対し、村田製作所が電子部品の面から長期的・大規模に関与していくことを意味します。特に北米市場は、生成AI向けの大規模言語モデルやクラウドAIサービスを提供する企業が集中しており、AIサーバー向けの電子部品需要も最も厚い地域の一つとされています。
平田機工も好調 生成AIに支えられる装置需要
AIインフラ投資の広がりは、村田製作所のような電子部品メーカーだけでなく、その周辺産業にも影響を与えています。その一例が、装置メーカーの平田機工です。
熊本を拠点とする平田機工は、半導体や自動車関連の生産装置で知られていますが、最近は生成AI向けの生産が好調であると、平田雄一郎社長が地元メディアのインタビューで語っています(ニュース内容2)。生成AIに使われる半導体やモジュールの製造には、高度な生産設備が必要となるため、同社の装置への引き合いも増えている状況です。
こうした装置メーカーの動きは、
- AI向け半導体の増産
- それに伴う電子部品の増産
という「二重の需要拡大」が進んでいることを示しており、村田製作所のような部品メーカーにとっても、安定した受注環境を支える要因になっています。
金沢村田・山本社長が語る「AI需要拡大への対応」
村田製作所グループのなかで、北陸地域の生産拠点も重要な役割を担っています。そのひとつが金沢村田製作所です。富山新聞のインタビューで、金沢村田の山本社長は、拡大するAI需要にどう対応していくかについて語っています(ニュース内容3)。
記事では、
- データセンター向けや自動車向け部品の需要が堅調であること
- AI関連の需要拡大に合わせ、生産体制の強化や設備投資を進めていること
などが取り上げられています。北陸の拠点は、
- 村田製作所グループ全体の生産キャパシティ確保
- AIサーバー向け部品の安定供給
において重要な役割を果たしており、地域経済への波及効果も期待されています。
AIサーバー需要と自動車・スマホ市場のバランス
村田製作所の事業は、AIサーバー関連だけでなく、
- スマートフォン向け電子部品
- 自動車(モビリティ)向け電子部品
も大きな柱になっています。同社の2026年3月期第2四半期決算短信によれば、
- 自動車市場は、先進運転支援システム(AD/ADAS)の進展やxEV比率の上昇により堅調に推移
- モビリティ向けのインダクタやセンサなどの需要が伸長
している一方、スマートフォン市場も景気後退懸念の後退により持ち直しつつあるとされています。
そのなかで、AIサーバーおよび周辺機器向けの電子部品は新たな成長エンジンとして位置づけられており、スマホ・自動車という既存分野とのバランスをとりながら、全体の収益性向上を図る戦略が見て取れます。
「AIインフラ投資の波」に挑む日本企業
村田製作所、中核子会社の金沢村田、そして装置メーカーの平田機工といった企業の動きからは、
- 世界的な生成AIブームとデータセンター投資拡大
- それに支えられる電子部品・生産装置への継続的な需要
- 国内拠点の設備投資と生産体制強化
という構図が浮かび上がります。各社トップが口をそろえて語るのは、AIインフラ投資という「大きな波」に、タイミングを逃さず乗ることの重要性です。
村田製作所の中島社長は、AIサーバー関連部品の需要拡大について、2026年や2027年にとどまらず、次の業績のピークを2030年あたりに想定しているとも述べています。これは、AIサーバー・データセンター投資が短期のブームではなく、ある程度長期にわたって継続するとの見方に基づいています。
もちろん、為替や世界景気、地政学リスクなど、不確定要素は少なくありません。それでも、AIインフラ投資の裾野は、電子部品から装置、さらには地域経済にまで広がりつつあり、日本企業にとって大きなチャンスであることは間違いないといえます。
京都発のグローバル企業である村田製作所と、そのグループ会社、さらに関連する装置メーカーなどが、どこまでこの波をとらえ、持続的な成長につなげていけるのか。AI時代の日本のものづくりの行方を占ううえで、今後もその動向から目が離せません。



