物語コーポレーションが拡大する「丸源ラーメン」の深夜営業――市場を牽引する成長戦略とは

はじめに

物語コーポレーションは、日本の外食業界における有力企業として、焼肉・ラーメン・カフェ等多様な業態を手掛けています。特に直近では、自社が運営するラーメンチェーン「丸源ラーメン」の営業時間を深夜25時(翌日1時)まで拡大するという展開で大きな話題を呼んでいます。本記事では、物語コーポレーションの最新の業績、戦略、そして深夜営業拡大の社会的背景や業界への影響について、決算資料や公式発表に基づき詳しく解説します。

物語コーポレーションとは

  • 創業:1949年、設立:1969年。本社は愛知県豊橋市。
  • 資本金:59億円(2024年12月31日現在)。
  • 東京証券取引所プライム市場上場(2022年4月移行)。
  • 国内外に多様な業態の飲食店を展開し、500店舗以上の出店を達成。
  • 主なブランド:焼肉きんぐ、丸源ラーメン、ゆず庵、果実屋珈琲、焼きたてのかるびなど。

その強みは業態開発力と人材力、そして既存事業の着実な成長にあります。国内・海外問わず積極的に新店舗を展開し、地域ニーズや時流の変化に敏感に対応しています

「丸源ラーメン」とは――ブランドの特徴

  • 2001年に一号店をオープン。
  • 看板商品は「熟成醤油ラーメン 肉そば」。醤油の旨味と肉のコクが特徴。
  • ファミリー・個人問わず幅広い層の支持。
  • 地方から都市まで、幅広い立地条件に対応。

「丸源ラーメン」はラーメン市場の中でも独自のポジショニングを確立しており、特に「肉そば」が評価されています。また郊外型店舗として大型駐車場やファミリー対応の客席を備え、「日常使い」の飲食体験を提供しています。

最新決算から見る物語コーポレーションの成長

2025年6月期の決算説明会によると、物語コーポレーションの連結売上高は1,239億2,100万円(前年比115.6%)、営業利益は92億4,200万円(前年比113.1%)と、5期連続の増収増益を達成しました。当期純利益は61億5,700万円(前年比109.1%)、これにより2020年に掲げた「ビジョン2025」の経営目標も1年前倒しで達成しています。

  • 主な増収要因:既存事業の堅調な成長、新規出店効果、業態開発の成功。
  • 営業利益・経常利益の向上は高付加価値商品、効率的な店舗運営の成果。
  • 今後は「物語ビジョン2030」に基づく新規事業や海外展開にも注力していく方針。

「丸源ラーメン」深夜25時までの営業拡大――背景と狙い

「丸源ラーメン」は全国100店舗以上で深夜25時までの営業を本格化。これにより、夜間の新たな顧客ニーズに応えるとともに、既存店舗の売上機会最大化を図っています。

  • 夜型生活者・深夜労働者・若年層等をターゲットにした需要創出。
  • 外食産業における「24時間型」サービスの復権トレンド。
  • 外食チェーン間の競争激化に伴う、新たな付加価値の提供。

外食需要の多様化を受け、コロナ禍からの完全回復・夜間消費の増大が背景にあります。また、他チェーンとの比較優位性確保や人員シフト最適化による効率経営も併せて実現しています。

深夜営業拡大がもたらす社会的・経済的意義

  • 多様な生活スタイルへの対応:
    夜勤や深夜帰宅者など「夜消費」を支えることで、現代生活に寄り添う外食サービスを実現。
  • 雇用創出への貢献:
    シフト時間帯拡大により、パート・アルバイトの雇用機会も拡大。
  • 地域コミュニティとの共生:
    交通インフラの事情や周辺環境への配慮とともに、地域の安全・防犯にも寄与。

一方で、人員確保や働き方改革・ワークライフバランスとの両立、深夜時間帯の治安・安全性確保という課題も伴います。しかし、物語コーポレーションは人材力・地域連携力を活かし、これら課題解決にも積極的に取り組んでいます

「ビジョン2030」――今後の中長期経営戦略

2025年8月発表の中期経営ビジョン「物語ビジョン2030」によれば、中心方針は以下の通りです

  • 既存事業の回復強化: 焼肉・ラーメン・和食など収益性の高い主要ブランドの底上げ。
  • 新規事業の育成: カフェやファストカジュアル等、変化する生活様式に対応した新ブランド展開。
  • 海外展開のさらなる拡大: 中国、インドネシア、香港を中心に現地ニーズを捉えた業態を展開。
  • 人的資本経営、サステナビリティ重視: 働き方の多様化・企業価値創出の両立を図る。

特に、深夜営業など新たなサービス形態の拡充は、「生活者本位」の外食企業としてのブランド発展を目指す戦略と位置づけられています。

飲食業界の現状と物語コーポレーションの競争力

  • 新型コロナウイルスの収束を受けた外食市場全体の回復基調。
  • 少子高齢化や家庭内食志向の高まりなど、業界固有の構造課題。
  • ウィズコロナ・アフターコロナ時代の外食需要に即応可能な事業モデルの構築。

物語コーポレーションは、既存ブランドの深化と並行し、新規事業や海外事業を通じてリスク分散・成長基盤の多角化に成功しています。独自の業態開発力・人材力を活かし、競合他社と差別化された価値を消費者に提供し続けています

外部評価と市場からの期待

2025年6月期決算の発表等に前後して、株式市場やアナリストからも物語コーポレーションの成長性や先見性に対して高い評価・関心が寄せられています。今後も「生活者・地域社会を豊かにする外食インフラ企業」として存在感を発揮していくとみられています

まとめ・今後の展望

物語コーポレーションは「丸源ラーメン」の深夜営業拡大を皮切りに、事業モデルの進化と顧客価値向上を追求しています。飲食業界の激しい競争環境の中、顧客視点に立ったサービス変革と持続的成長に向けた戦略展開は、多くの外食企業にとっても今後の参考事例となるでしょう。

引き続き、物語コーポレーションの動向は、日本の外食産業全体の未来を占ううえで大きな関心事となっていきます。

参考元