総務省「地域力創造アドバイザー」登録の約半数解除へ 地域活性専門家制度を見直し
総務省が進めてきた「地域力創造アドバイザー」制度について、登録されている地域活性化の専門家の約半数を解除する方針が固まったことが分かりました。
長年続いてきたアドバイザー制度ですが、近年は活動実績が乏しい登録者も多く、制度全体の見直しが避けられない状況となっていました。今回の解除方針は、限られた人材と予算を、実際に地域で活動している専門家に重点的に振り向ける狙いがあります。
「地域力創造アドバイザー」とは何か
総務省の「地域力創造アドバイザー」制度は、人口減少や産業の衰退など、さまざまな課題を抱える市町村を支援するために設けられた仕組みです。
この制度では、地域活性化の実務経験や専門的なノウハウを持つ外部人材を「アドバイザー」として総務省のデータベース「地域人材ネット」に登録し、自治体が必要に応じて招へいできるようにしています。
総務省はこの制度について、
「地域独自の魅力や価値の向上に取り組む市町村が、外部専門家を招き、指導・助言を受けながら事業を進める際に、その人材情報の提供や招へいに必要な経費の一部を支援する」制度だと説明しています。
つまり、自治体が自前では確保しにくい専門的な知見を、外部アドバイザーの力を借りて補う仕組みです。
登録の仕組みとアドバイザーの要件
「地域力創造アドバイザー」として登録されるには、一定の要件を満たす必要があります。総務省は、主に次のような点を重視して審査しています。
- 都道府県や市区町村と連携・協力し、地域活性化を推進して高い評価を得ていること
- 地域活性化の先進的な取組において中核的な役割を担った人材、またはその取組を支援した外部専門家であること
- 活動実績や推薦理由などについて、自治体や関係団体からの推薦書に基づき審査を受けていること
登録後は、「地域人材ネット」にプロフィールや専門分野が掲載され、自治体が検索して相談・依頼を行えるようになります。
また、総務省は、アドバイザーの審査・登録、データベース管理、自治体とのマッチング機会の提供なども担ってきました。
制度見直しの背景にある「活動実績の乏しさ」
今回、総務省が登録者の約半数を解除する登録はされているものの、実際の活動につながっていない専門家が多い 政策研究の分析でも、「地域力創造アドバイザー制度」について、2025年5月時点で「地域人材ネット」上の活用実績を検索しても、活動実績の登録がほとんど見られない
また、別の報道では、総務省が2025年度末までに活動がない登録者について、登録解除を進める方針 具体的には、一定期間、自治体からの派遣要請や助言実績が確認できないアドバイザーについて、登録を継続する意義を改めて検証し、基準に満たない場合はデータベースから外す方向で調整が進められているとみられます。
「約半数解除」の意味するところ
今回の「地域活性専門家の半数解除」 総務省は、実際に地域で活動しているアドバイザーを可視化し、マッチングの質を高める
登録者が増えすぎると、自治体側から見ると次のような問題が生じがちです。
- どの専門家が現役で活動しているのかが分かりにくい
- プロフィールはあっても、直近の実績が見えない
- 自治体職員の負担が大きくなり、結果として制度自体が十分に使われない
こうした状況を踏まえ、活動実績のない登録者を整理することで、データベースの鮮度と信頼性を高める さらに、総務省はこれまでも、登録要件に該当しなくなった場合や、公序良俗に反する行為があった場合には、データベースから削除する 今回の見直しは、その運用を一段と強化し、「実際に動いている専門家中心の名簿」へと転換する一歩といえます。
自治体への影響:人材不足と質の向上の両面
登録専門家の「約半数解除」は、自治体にとってプラスとマイナスの両方の側面
プラスの側面
- データベースに残るアドバイザーは、直近まで実際に活動している人材
- 専門分野や実績が整理されることで、マッチングの精度が上がる
- 自治体職員が候補者を探す際の情報検索や調整の負担が軽減
マイナスの側面・懸念
- 特に人口が少ない地域や専門分野によっては、候補となるアドバイザーの数が減り、人材が見つかりにくくなる
- 「活動実績」の定義や評価の仕方によっては、潜在的な有望人材が外れてしまう
総務省としては、単に数を減らすのではなく、他の人材支援制度との連携 例えば、同じく地域活性化を目的とした「地域活性化起業人」制度複数の制度を組み合わせて人材支援の全体像を再構築する
見直し後、何が変わるのか
今回の「半数解除」を含む見直しが進むと、「地域人材ネット」の中身や使われ方
- 登録専門家の数は減る一方で、一人ひとりの活動実績や専門性がより明確
- 自治体側がアドバイザーに相談・依頼する際、事前に把握できる情報の質が高まる
- 総務省によるマッチング機会の提供や優良事例の情報発信
また、活動実績が乏しい登録者に対しても、いきなり排除するのではなく、自己点検や情報更新を促すプロセス その意味で、今回の見直しは、「数の削減」というよりも、制度全体のメンテナンスと再設計
地域にとっての「外部専門家」の意味
少子高齢化や人口減少、産業構造の変化が進む中で、多くの自治体は、職員だけでは対応しきれない課題 観光、移住・定住、デジタル化、産業支援、地域ブランドづくりなど、必要とされる知識やノウハウは高度化・多様化しています。
その中で、「地域力創造アドバイザー」のような外部専門家制度
- 自治体単独では得にくい最新の知見や成功事例
- 他地域の実践者として、現場に即した具体的な助言
- 職員と一緒に計画づくりやプロジェクトの立ち上げを行い、ノウハウを自治体内に移転する
特に、スポット的な支援(年に数回の訪問やオンライン助言など)の場合、外部の専門性を一時的に導入しつつ、徐々に自治体側の力を高めていく 今回の制度見直しも、こうした「外部の力を借りながら、最終的には地域自身の力を高めていく」という本来の目的に立ち返る動きといえます。
今後の課題と展望
「地域活性専門家の半数解除」は、制度としては大きな転換点となりますが、それだけで地域課題が解決するわけではありません。
今後の課題として、次のような点が挙げられます。
- 活動実績の評価方法の明確化:どの程度の活動を「実績あり」とみなすのか、その基準づくりが重要になります。
- 地域側のニーズ把握:自治体がどの分野で外部専門家を必要としているのか、定期的なヒアリングや調査が欠かせません。
- 他制度との連携強化:地域おこし協力隊や地域活性化起業人など、他の人材制度との一体的な運用が求められます。
- 情報発信と事例共有:うまくいった地域の活用事例を分かりやすく紹介し、他自治体でも真似しやすい環境を整えることが大切です。
一方で、登録者が整理された後には、新たな専門家の発掘・登録 地域で活躍する民間プレーヤーやNPO、スタートアップなど、多様な人材がアドバイザーとして参画することで、より幅広いアイデアやノウハウが地域にもたらされる可能性
総務省のアドバイザー制度は、これまでの運用の中でさまざまな課題も抱えてきましたが、今回の「半数解除」と見直しより現場で使いやすく、効果の見えやすい仕組み




