メタ(Meta)、AI投資拡大で株価急落──第3四半期好調も先行きに懸念
米国大手IT企業「Meta Platforms」の株価が、第3四半期決算発表後に10%下落しました。主因は、人工知能(AI)への積極的な投資拡大方針が投資家心理を冷やし、税負担の影響で利益が押し下げられたことです。Metaは広告事業など既存領域で力強い成長を続けている一方、今後の収益圧迫要因が浮上しています。
AI関連投資拡大が将来の利益を圧迫する懸念
- Metaは2025年度の設備投資(CAPEX)を従来予想の660億ドルから700~720億ドルに上方修正し、AI関連分野への投資額を大幅に増額しました。
- オープンソースAIやパーソナル・スーパーインテリジェンスの開発にも注力し、業界トップレベルの人材も積極的に採用しています。
- AI投資のための人材確保、インフラ増強、法務費用増加により、第3四半期の総コストは前年同期比32%増の307億ドルとなっています。
Metaは「Vibes」と呼ばれる動画制作AIツールなど新サービスを展開し、関連ガジェットである「Ray-Ban Metaグラス」も好調です。
広告事業は引き続き好調──AI活用で収益性向上
- FacebookやInstagram、Threadsなど主要SNSサービスの広告表示効率の向上にAIが中心的役割を果たしており、ユーザーの関心分析を通じて収益増加に直接つながっています。
- 動画コンテンツが特に伸長し、Instagramの動画視聴時間は前年比30%以上の増加を記録。Reelsは年間収益500億ドル超と報告されました。
- 2025年7-9月期の売上は512億4000万ドルで前年同期比26%増、1株当たり純利益は1.05ドルに達し、事前予想を大きく上回りました。
この広告事業の成長が、株価の短期的な上昇を支えていましたが、AI投資によるコスト増が一時的に上回り、市場は長期的な利益押し下げを懸念しています。
株価の急落、その背景
- 第3四半期決算発表直後、Metaの株価は10%下落しました。決算発表翌日(7月31日)にも11.25%高の史上最高値をつけましたが、以降は投資負担増への懸念が顕在化。8月1日には米国雇用統計の影響も重なり3.03%安となりました。
- 2025年年初からの株価伸び率は約28.1%高と依然堅調ですが、今後の成長ペース鈍化を示唆する発言などに、市場は警戒感を強めています。
- 同業マイクロソフトもAI投資による支出増で株価が一時急落し、市場全体がAI関連コスト増に敏感になっている様子です。
投資家からは「AIへの巨額投資が持続的な利益成長につながるのか」「短期的な利益圧迫が長期成長の礎となるのか」といった課題意識が高まっています。
一時的な税負担が純利益を押し下げ
- 第3四半期でMetaが受けた一時的な税負担が、報告上の純利益を減額させる要因となりました。
- 会社側は「この税負担は一時的かつ非現金項目」であり、10-12月期以降の現金納税額は大幅に減少する見込みだとしています。
- 一過性の影響に過ぎないとする説明がなされていますが、投資家心理には一定の影響を与えています。
経営陣のコメントと今後の展望
Metaのマーク・ザッカーバーグCEOは決算会見で「AI技術により広告事業がより効率的に発展している」「世界トップレベルのAIラボ構築も順調」と自信を示しました。一方、成長の鈍化や利益率の圧迫については「今後も引き続きコストを見極めながらAIへの投資を続ける」とコメントしています。
- 利用者数は増加傾向。AIレコメンデーションによるサービス利用時間の拡大、広告の最適化などで既存事業の底堅さも示しました。
- AIグラスなど新規事業も話題。発売後即完売の状況で、製造量増強への追加投資が計画されています。
ただし、AI投資の回収力とビジネスモデルの耐久性、さらなる規制リスクが今後の焦点となる見通しです。
まとめ:市場はAI投資の「成果」と「負担」を見極めへ
Metaの第3四半期決算は広告事業など主力サービスの成長と収益性の高さを改めて示しました。しかし、AIを中心とする設備投資急拡大が、短期的な利益率や株価に重しとなる懸念が現実となっています。一時的な税負担やコスト増は、AI分野の「成果」と「負担」を慎重に見極める必要があるとの市場の姿勢を浮き彫りにしました。
Metaは引き続きAIの社会実装、広告事業の最適化、新規事業への挑戦で成長を目指しています。今後は「短期の投資負担」と「中長期の事業成長」のバランスに注目が集まるでしょう。




