丸亀製麺、店長年収最大2000万円へ大幅アップ――トリドールHDが人材新戦略を発表

“うどん好き”なら誰もが知る、コシの強い打ち立て麺が魅力のうどんチェーン「丸亀製麺」。この丸亀製麺を運営するトリドールホールディングス(以下、トリドールHD)が、2025年9月17日、店長の年収を今後3年で最大2000万円へと引き上げる、新しい報酬制度を発表しました。同日には、粟田貴也CEO(最高経営責任者)による「心的資本経営」の本格スタートも宣言され、人材を最大の価値と捉えた経営戦略が注目を集めています。

新報酬制度の内容と狙い

これまでの丸亀製麺では、店長の年収は最大520万円程度が一般的だったとされていますが、新制度ではこれを大きく見直し、最大2000万円まで引き上げます。社長の粟田氏は「最高年収2000万円実現まで、我々はしっかりと持っていきたい」と語りました。

新制度では、店長クラスを4つのグレードに分け、店舗の売上だけでなく、AIを活用した従業員満足度や顧客満足度も総合的に評価。これにより、成果に応じた報酬の仕組みを導入します。3年後には新制度の対象となる店長が300人に拡大し、そのうち最上位グレードで年収2000万円となる店長は10人を目指すとしています。

また、トリドールグループで働く従業員の15歳以下の子どもは、親が勤めるブランドの全国店舗を利用する際、食事が無料となる「家族食堂制度」も新たに導入。子育て世代を応援し、働くモチベーション向上と人材確保を目指す姿勢が盛り込まれています。

店長候補の現場を訪ねて

新報酬制度の発表と同時に、全国から選ばれた「最高年収2000万円候補」となった6人の店長の一人、兵庫県神戸市の店長・原佳奈子さん(36歳、店長歴2年)に取材。昼どきの店内は常にほぼ満席で、社員同士の活発なコミュニケーションや“わっしょい”というかけ声が印象的です。

原さんは「お客さまに美味しいうどんを気持ちよく食べていただくため、笑顔を絶やさず、現場でリーダーとしてチームをまとめています。これからもお客さまの満足度を上げるために頑張りたい」と語ります。

今回の制度改革は、単なる賃金アップだけではなく、「販売」「顧客満足」「従業員満足」の3つを高いレベルで両立できる店長を育てることを目指しています。AIを活用した客観的な評価基準の導入により、評価の透明性も高められるのが特徴です。

外食業界全体の動きとトリドールHDの成長戦略

こうした「人材へ投資する経営」は、外食業界全体で広がりを見せています。例えばファミリーレストランチェーン大手のすかいらーくは、店長の年収を最大1000万円超とすると発表しており、各社とも業績回復と人材獲得を目指した積極的な賃金アップが進んでいます。

トリドールHDの粟田貴也CEOは「人的資本経営をより深めた『心的資本経営』を始動します。従業員の『心』の成長こそが、企業成長の根幹であり、はるかなる未来へと導いてくれる」と述べています。社員の心の充足やエンゲージメント向上を重視し、今後もトリドールHDは人材を中心とした成長エンジンを強く回していく方針です。

今後の展望と期待される効果

今回の制度改革は、優秀な人材の獲得・定着、および質の高いサービス提供を通じて、丸亀製麺のさらなるブランド価値向上を狙うものです。トリドールHDとしては、この制度が「店舗の成長」と「人材の成長」の好循環を生み出すと期待しています。

「最高年収2000万円店長」は、3年後に10人誕生する予定ですが、これまでよりも大規模な売上や顧客満足度の向上が求められるだけでなく、組織の“心”を作り、育てるリーダーシップが一段と重要になります。現場からは「今後も頑張りがきちんと評価される仕組みができて、モチベーションがさらに上がる」といった声も聞かれています。

また、家族食堂制度のような新しい福利厚生も、働きやすい環境づくりや多様な人材の確保につながると期待されています。外食業界の働き方や雇用の在り方にも、大きな影響を与える可能性がある動きです。

まとめ――企業価値と人材価値の両立を目指して

トリドールHDの今回の発表は、単なる賃金アップだけにとどまらず、「企業価値と人材価値の両立」を本格的に目指す画期的な挑戦です。成果と“心”の両面から従業員を評価し、そこで育った人材がさらなる企業成長を支える――そんな好循環を生み出すことが最大の目標です。

丸亀製麺の味の追求と同時に、「人」の成長にも投資し、未来の外食業界の一翼を担う存在を目指すトリドールHDの挑戦に、今後も注目が集まりそうです。

  • 丸亀製麺の店長年収、3年後に最大2000万円へ大幅アップ
  • 成果と従業員満足度をAIで総合評価、評価の透明性向上
  • トリドールHD・粟田貴也CEO、「心的資本経営」の深化を宣言
  • 家族食堂制度など福利厚生も拡充、働きやすい環境を整備
  • 外食業界全体でも、人材重視の経営が加速中

今後の丸亀製麺の店舗運営や、トリドールグループの人材戦略に、大きな影響を与えることは間違いありません。現場から成長する企業の姿を、これからも見守っていきましょう。

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