丸紅、2025年4〜9月期決算 ― 純利益28%増 「非資源」好調で成長路線を鮮明に
はじめに
2025年11月4日、丸紅株式会社が2025年4〜9月期(2026年3月期第2四半期)の決算を発表しました。今回の決算では、最終利益が前年同期比で28.3%増の3054億円となり、市場の注目を集めています。加えて、7〜9月期の3か月では前年同期比58.2%増という大幅増益を達成しました。非資源分野が業績をけん引し、同社の成長が顕著になっています。その詳細と背景について、分かりやすく解説します。
決算内容の詳細
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    2025年4〜9月期(上期)の連結最終利益:3054億円(前年同期比28.3%増)
通期計画5100億円に対する進捗率は59.9%、5年平均50.5%を大きく上回ります。 - 
    7〜9月期(第2四半期)の連結最終利益:1510億円(前年同期比58.2%増)
直近3ヵ月の実績としても非常に高い伸びを見せました。 - 
    売上営業利益率:前年同期2.8%⇒2.0%へやや低下
※利益額自体は大きく増加していますが、売上比の効率はやや低下しています。 
これらの結果、丸紅の業績は引き続き好調に推移していますが、営業利益率が若干低下した点は今後の課題ともいえます。
成長を支える「非資源分野」
今回の好決算を支えたのは、車の販売金融など非資源分野の業績拡大です。「非資源」事業は価格変動の影響を受けづらい分野で、安定した収益源として投資家からも高く評価されています。丸紅は多角的な事業展開で成長を志向してきましたが、製造やエネルギーと並び、サービス業や流通、そして金融事業が構成上大きなウエイトを占めています。
- 車の販売金融:自動車関連のローンやリース事業、海外展開が業績をけん引
 - 生活産業・サービス事業:食品流通、小売、インフラなど生活に密着した分野も伸長
 
これらの分野は資源価格の変動に左右されにくいため、「安定的な利益成長」が可能となっています。
株主への還元強化と今後の見通し
丸紅は業績の好調を反映し、株主還元策を強化しています。過去の決算発表でも配当の増額修正や自社株買いなど株主重視の姿勢が鮮明です。
- 通期最終利益の計画:5100億円(進捗率約60%)
 - 配当の増加、株主還元積極化:これまでも増配傾向を維持し、総合商社の中でも高水準
 
加えて、主要同業である三井物産や三菱商事、伊藤忠などと比較しても、安定的な収益成長と配当政策が投資家から評価されています。
営業利益率の課題と収益構造
一方で、7〜9月期の売上営業利益率は前年同期2.8%から2.0%と低下しました。これは大幅な利益増の一方で販管費や原価上昇の影響などが指摘されています。
- 原材料や物流費の上昇
 - 市場環境の変化によるビジネスモデルの影響
 
会社側は下期(10〜翌3月)には連結最終利益が前年同期比22.8%減少する可能性についても想定し、慎重な計画を据え置きとしています。ただし、中長期的にみて資源と非資源の事業バランスを調整し、安定成長を目指す姿勢に変わりはありません。
第一生命との事業統合がもたらす評価益
今回の決算発表では、第一生命との事業統合による会計上の評価益も業績好調の要因の一つとなっています。これは単なる持分法適用会社の変化ではなく、収益計上のインパクトとして顕著に現れています。
丸紅の戦略的展望
丸紅はグローバルで事業基盤を強化しつつ、非資源分野の拡大や顧客基盤の多角化、新規事業にも積極的です。また社会課題を見据えたサステナビリティ経営・環境投資も進めており、環境規制の厳格化や脱炭素の動きといった中長期トレンドにも適応しています。
- AI・デジタル分野への投資
 - 新興国における消費・サービス産業展開
 - 再生可能エネルギー・グリーン事業へのシフト
 
これらの取り組みが、将来的な企業価値の向上に寄与することが期待されています。
競合他社との比較と丸紅の優位点
丸紅は三井物産、伊藤忠、三菱商事、住友商事、双日など日本を代表する総合商社の一角です。各社とも事業多角化・グローバル展開という特徴を持ちますが、丸紅の強みは「非資源分野での積極的な拡大」「成長領域でのM&Aや提携戦略」などにあります。
| 会社 | 主な成長分野 | 直近決算の特徴 | 
|---|---|---|
| 丸紅 | 自動車金融・生活産業・サービス・環境 | 上期純利益増・非資源好調・還元強化 | 
| 三井物産 | 資源、インフラ、新エネルギー | エネルギー事業が主軸だが非資源も拡大 | 
| 三菱商事 | エネルギー、生活産業、金融 | 総合力と安定収益が強み | 
| 伊藤忠 | 生活・食料・繊維など消費分野 | 消費関連ビジネスが成長ドライバー | 
非資源分野の拡大は、将来的な収益安定化と成長の土台として各社共通の戦略ですが、丸紅の今期決算からはその効果が特に顕著に表れています。
まとめ
丸紅の2025年4〜9月期決算は、非資源分野の業績好調や事業統合による評価益などに支えられ、純利益が前年同期比28%増という大幅な増益を遂げました。営業利益率の低下など課題もあるものの、事業ポートフォリオの多角化と株主還元の強化、さらには成長分野への投資継続など、競合他社との比較でも高い成長性と安定性が強調される内容でした。今後も企業として社会や市場の変化に柔軟に対応し、持続的成長を図っていく姿勢がより注目されます。

            


