ライオン・竹森征之社長、新春に語る「跳躍」の年――より良い習慣づくりと組織変革で“先に仕掛ける会社”へ

日用品やオーラルケア製品などでおなじみのライオン株式会社が、2026年、新たなステージに踏み出そうとしています。
舵取りを担うのは、代表取締役兼社長執行役員の竹森征之(たけもり・まさゆき)社長です。竹森社長は2026年の年頭所感で、本年を象徴する一文字として「跳(ちょう)」を掲げ、「構造改革で固めた足場をもとに、次の成長へ大きく跳躍する年にしたい」と語っています。

この記事では、①人々の「より良い習慣づくり」への思い②「稼ぐ力」を鍛え直す構造改革と新春インタビューのポイント③ビジネスユニット制への組織刷新という3つのテーマから、ライオンの現在地とこれからを、やさしい言葉で整理してお伝えします。

人々の暮らしに寄り添う「より良い習慣づくり」へのこだわり

ライオンはこれまでも、ハミガキや洗剤、ヘルスケア製品などを通じて、日々の生活に深く関わってきました。その中で同社が大切にしているのが、生活者一人ひとりの「より良い習慣づくり」です。

2026年の年頭所感で竹森社長は、ライオンが掲げる中期経営計画「Vision2030 2nd STAGE」の2年目に入り、「心身の健康」と「サステナブルな社会」の実現に向けて、さらに力を入れていく方針を示しました。ここには、製品を売るだけでなく、毎日のケア行動そのものをより良いものに変えていきたいという想いが込められています。

たとえば、ライオンの中核事業であるオーラルヘルスケアの分野では、「ただ歯を磨く」から一歩進んだ、口腔全体の健康を考えたケア習慣を提案しています。2025年9月には、最高価格帯のハミガキ「デントヘルス薬用ハミガキ DXプレミアム」を発売し、初期出荷が計画比1.5倍となる好調なスタートを切りました。これは、生活者が「少し高くても、自分の健康に本当に良いものを選びたい」と考える傾向が強まっていることを示しています。

竹森社長は、こうした変化を踏まえ、「高付加価値消費」にしっかり応えることが大きなビジネスチャンスになると位置付けています。同時に、単に高価格帯にシフトするのではなく、地域ごとの所得水準や生活環境に応じたマーケティングを行い、現状から近未来の変化をていねいに予測しながら、メリハリのある商品・価格戦略を進めるとしています。

こうした取り組みの根底には、「人々の生活に寄り添いながら、心身の健康と環境に配慮した生活文化を共に育てていきたい」という、ライオンらしい視点があります。毎日のハミガキ、手洗い、洗濯、ヘルスケア。何気ない習慣を少しずつ良い方向へ変えていくことで、生活者自身の健康だけでなく、社会全体のサステナビリティにも貢献していこうという考え方です。

「稼ぐ力」を鍛え直す――構造改革と新春トップインタビューのポイント

ライオンは2025年度、海外市場では厳しい環境に直面しながらも、国内事業での付加価値化と価格の適正化によって、業績回復への手応えを得たとしています。国内の家庭用品・OTC医薬品の主要市場では、販売金額が前年を上回る一方、販売数量は減少し、平均販売単価の上昇が金額成長を支えました。これは、単に量を売るのではなく、価値の高い商品を適正な価格で提供する戦略が機能していることを表しています。

こうした状況の中で竹森社長は、新春インタビューで「仕事の仕方を変える」ことを2026年の大きなテーマに掲げました。背景には、ライオングループが抱えていた「機会損失」という構造的な課題があります。これを解消し、真の意味で「稼ぐ力」を確立するために、同社は組織変革を決断しました。

インタビューでは、2024年から2025年にかけて進めてきた事業ポートフォリオ改革にも触れられています。ブランドの売却などを含む事業再編を行い、2027年までにブランドポートフォリオの取捨選択を完了させる方針を明確にしました。これは、限られた経営資源を、将来の成長が見込める分野に集中させる狙いがあります。

2025年は、こうした「収益力の強靭化」をテーマに、聖域なき構造改革を断行した一年でした。その結果として、高収益体質への転換に手応えを得たと竹森社長は振り返っています。そのうえで、2026年はその足場を活かし、「先に仕掛ける会社」へと生まれ変わることを目指すと述べています。

従来のように、環境変化に対応するだけでなく、変化を先取りし、自ら仕掛けていく存在へ。そのためには、単に戦略を掲げるだけでなく、日々の仕事の進め方や意思決定のスピード、現場の自律性を徹底的に見直す必要があります。ここで重要な鍵を握るのが、次にご紹介する組織体制の刷新です。

「ビジネスユニット」制による組織刷新――スピードと一体感を重視

竹森社長は、2026年の年頭所感の中で、「スピード」をこれからのライオンにとって最も重要なキーワードのひとつに挙げています。変化の激しい時代において、どれほど優れた戦略を描いても、実行が遅れれば機会を逃してしまいます。その課題を乗り越えるために、ライオンは組織体制を大きく変えました

同社は、これまでの機能別組織から、バリューチェーンを軸とした新体制へ移行しています。具体的には、企画・購買・研究生産技術・SCM(サプライチェーン・マネジメント)・生産・販売といった機能が、最初の段階から一気通貫で連携する体制に改められました。これにより、

  • 部門間の連携に時間がかかる
  • 責任の所在があいまいになる

といった従来の問題を解消し、市場の変化や生活者の潜在ニーズに即座に対応できる機動力を手に入れたとしています。

あわせて、国内外で「ビジネスユニット」制へと組織を再編し、事業ごとに権限と責任を明確化しながら、開発から生産、販売までを一体的に運営する仕組みづくりを進めています。これにより、バリューチェーン全体を見渡した意思決定がしやすくなり、迅速な判断と実行が可能になることが期待されています。

新体制のねらいは、単なる組織図の書き換えではありません。現場が自律的に動き、失敗を恐れずに挑戦できる風土をつくり、そこからイノベーションを生み出していくことにあります。各ビジネスユニットが、生活者の変化をいち早くとらえ、「このニーズにはこう応えよう」と主体的に動けるようにすることで、ライオン全体のスピードと柔軟性を高めていこうという発想です。

「社会価値」と「経済価値」を結びつけるライオン流の経営

竹森社長は、年頭所感で、社会課題の解決(社会価値)と企業の持続的成長(経済価値)をイコールで結びつける経営こそが、商売の基本だと語っています。ここには、ライオンがこれからも大切にしていきたい経営の軸が表れています。

たとえば、オーラルケアやヘルスケアの領域では、生活者の健康増進という社会価値と、高付加価値市場での成長という経済価値を両立させることができます。また、サステナブルな社会の実現に向けた取り組みは、環境負荷低減や資源循環などの社会的意義を持つと同時に、長期的には企業の信頼やブランド価値を高めることにもつながります。

不確実性の高い時代だからこそ、目先の利益だけを追うのではなく、社会とともに成長していく姿勢を崩さないことが重要だという考え方です。こうした理念と、先に述べた「ビジネスユニット」制やバリューチェーン統合によるスピード経営が掛け合わさることで、ライオンは「先に仕掛ける会社」としての存在感を一層高めていくことが期待されます。

2026年、「跳」の一文字に込められた決意

2025年に構造改革を進め、「収益力の強靭化」に手応えを得たライオンは、2026年を本格的な跳躍の年と位置づけています。竹森社長が選んだ一文字「跳」には、

  • 構造改革で固めた足場を活かし
  • 生活者の変化を先取りしながら新たな価値を提案
  • 心身の健康とサステナブルな社会の実現に向けて力強く前進する

という決意が込められています。

「より良い習慣づくり」を通じて人々の暮らしに寄り添いながら、「ビジネスユニット」制やバリューチェーン一体運営によって組織のスピードと稼ぐ力を高めるライオン。変化のただ中にあっても、社会価値と経済価値を両立させることを軸に据えた同社の取り組みは、今後も多くの注目を集めそうです。

参考元