パソコン値上げの波が本格化?──相次ぐ「メモリ高騰」警告とPCユーザーへの影響
ここ数週間、パソコン業界では「値上げ」に関するニュースが立て続けに出てきています。背景にあるのは、AIブームに伴う半導体メモリ(DRAM・フラッシュメモリ)の価格高騰です。大手PCメーカーのレノボやデルが15〜20%規模の値上げに踏み切る可能性が報じられたほか、日本のマウスコンピューターも「PC購入はできるだけ早めに」と異例の呼びかけを行っています。
この記事では、
- なぜパソコンが値上げされようとしているのか
- 何が「メモリ高騰」を引き起こしているのか
- レノボ・デルなど具体的な値上げの動き
- これからパソコンを買う人が気をつけるポイント
を、できるだけわかりやすく整理してお伝えします。
マウスコンピューターが異例の「早めの購入」呼びかけ
まず注目されたのが、日本のPCメーカーマウスコンピューターによる「PC購入はなるべく早めがオススメ」という発信です。
IT系ニュースサイトの報道によると、PC市場では、生成AIへの需要が増加している影響で、2025年11月ごろからDRAM(メインメモリ)やフラッシュメモリ(SSDなど)の価格が高騰し始めています。その結果として、
- メモリやストレージが品薄になりつつある
- 海外では「PCメーカー各社が今後値上げを予定している」という報道が出ている
といった状況が生まれており、マウスコンピューターはこうした動きを踏まえて、
- 新生活に向けてPC購入を考えている人は、早めの準備を検討してほしい
と注意喚起していると伝えられています。新大学生や新社会人向けの「春モデル」に影響が及ぶ可能性もあることから、同社の呼びかけは大きな反響を呼んでいます。
AI需要が生んだ「メモリ高騰」──半導体メモリ関連株も活況
では、なぜこれほどまでにメモリ価格が急騰しているのでしょうか。その大きな要因として挙げられているのが、
- 生成AI・AIサーバー向けの半導体メモリ需要の急拡大
です。証券情報サイトなどでは、「半導体メモリー」関連株の特集が組まれ、AI需要の拡大により市況が高騰していると紹介されています。市場全体として、
- AIサーバーやデータセンター向けに、これまで以上の大量のDRAM・NANDフラッシュが必要になっている
- 限られた生産能力がAI向けにシフトし、一般向けPC・コンシューマー向けメモリへの供給が逼迫しやすくなっている
といった構図があり、その結果としてメモリ価格が急上昇していると分析されています。
自作PC向けパーツの価格推移を追った記事では、たとえばDDR4やDDR5メモリについて、
- 2025年中頃から価格が上昇し始めた
- 2025年12月時点で、数カ月前の約3倍の価格になっている製品もある
と報告されています。こうしたパーツ市場での急激な値上がりは、完成品PCの価格にも確実に跳ね返っています。
レノボ・デルだけじゃない?大手PCメーカーに広がる「値上げドミノ」
メモリ価格の高騰・供給不足を受けて、海外の大手PCメーカーも一斉に値上げに動きつつあります。
PC業界のニュースでは、世界シェア上位のデル(Dell)やレノボ(Lenovo)、さらにHPといったPC大手が、相次いで製品の値上げを予告していると報じられました。
具体的には、
- デルの幹部が「かつてない速度でメモリコストが上昇している」とコメントし、早ければ12月中旬にも15〜20%の値上げに踏み切る可能性があると伝えられている
- レノボも顧客向けに「現在の見積価格は2026年1月1日にすべて無効になる」と通知し、値上げ前の早期発注を強く推奨している
といった内容です。
別の解説記事でも、デルやレノボが15〜20%規模の値上げを計画しているとの情報が紹介されており、「早ければ12月中旬から価格改定が始まる」「レノボは2026年から新価格を適用する見通し」といった見方が示されています。いずれも、
- メモリとストレージの調達コストが急激に上がっている
- AI向け需要に押され、PC向けの部材確保が難しくなっている
ことが、値上げの主な理由として挙げられています。
「メモリショック」と呼ばれる状況──PC価格は最大20%高騰の見通し
こうした一連の動きは、メディアや専門サイトで「メモリショック」と表現されることもあります。ある解説記事では、
- 2024〜2025年にかけてDRAMやNANDなどメモリ価格が急激に上昇
- その結果として、2025年12月中旬以降、PC価格が最大20%ほど上昇する見込み
- 特にデルやレノボを中心に、一部モデルで価格改定が予定されている
といった見通しが示されています。
要因としては、
- DRAM価格の急騰
- AIサーバー向け需要の拡大
- サプライチェーン全体の調達コスト上昇
など、複数の要素が重なっていると解説されています。短期間での改善は難しいとの見方もあり、2025年冬から2026年前半にかけては、PC価格が不安定な状態が続く可能性が指摘されています。
実際にどれくらい高くなっているのか──メモリパーツの価格例
完成品PCの値上げの裏側で、すでにメモリ単体の価格は大きく跳ね上がっています。自作PC向けのパーツ価格を追った記事では、
- DDR4-3600 16GB×2(計32GB)のキット価格が、2025年6月ごろから上昇し始め、12月時点で値上がり前の約3倍になっている
- DDR5-5600 16GB×2(計32GB)も同様に、2025年9月までは価格が安定していたが、12月時点では3倍以上に値上がりしている
といった具体例が紹介されています。
一般的なゲーミングPCやクリエイター向けPCでは、
- 16GB〜32GBのメモリ
を搭載する構成が主流であるため、メモリ価格の高騰はそのまま本体価格に響きます。あるPCセール紹介記事では、
- 2025年のPC市場ではメモリ価格の高騰が大きなトレンドになっている
- DRAM契約価格の上昇により、年明け以降はゲーミングPC・クリエイターPCで2〜4万円前後の値上げが予想される
と指摘されており、「値上げ前に買える最後の大型セール」といった表現も使われています。
値上げは「PC本体」だけではない?周辺機器やストレージにも波及
今回の「メモリ高騰」の影響は、ノートPCやデスクトップPC本体だけにとどまりません。国内ストレージメーカーのアイ・オー・データ機器は、NASやHDDなど165型番の製品について、2026年1月14日から1.0〜54.8%の価格改定を行うと発表しています。
この背景にも、
- 半導体メモリやストレージ製品のコスト上昇
があるとみられ、
- 外付けHDDやNAS
- SATA/USB接続のSSD
といった周辺機器の価格も、今後上がっていく可能性があります。PC本体だけでなく、
- 「バックアップ用のHDDをそろそろ買い替えようかな」
- 「写真や動画用に大容量のストレージが欲しい」
と考えている方にとっても、購入タイミングを早めに検討する価値が出てきています。
これからPCを買う人が押さえておきたいポイント
では、これからパソコン購入を検討している人は、どのような点に気をつければよいのでしょうか。現在出ている情報を踏まえると、次のようなポイントが挙げられます。
1. 「必要な時期から逆算して、少し早めに動く」
マウスコンピューターが新生活シーズンを見据えて「なるべく早めの購入」を呼びかけているように、
- 入学や就職などで「この時期までにPCが必要」という期限が決まっている人
は、例年より少し早めに購入することを考えた方が安心です。値上げだけでなく、
- メモリやストレージの品薄で、欲しいスペックのモデルが在庫切れになる
といったリスクもあるため、ギリギリまで待つメリットは小さくなりつつあります。
2. メモリ容量は「今後の使い方」から逆算
メモリ価格が高騰しているからといって、必要以上に削りすぎると、
- 複数のアプリを立ち上げると動作が重くなる
- 画像・動画編集やプログラミングが快適に行えなくなる
といった不便が出てきます。
- インターネット閲覧やOffice中心なら8〜16GB
- 写真編集・軽めの動画編集・プログラミングなども視野に入れるなら16〜32GB
- 本格的な動画編集や3D制作、最新ゲームを快適に遊びたいなら32GB以上
を一つの目安に、数年後も見据えた容量選びを心がけると良いでしょう。メモリを増設しやすいデスクトップPCであれば「最低限で買って、後から増設」という選択肢もありますが、現在はメモリ単体の価格も高くなっている点に注意が必要です。
3. セール情報や「値上げ前」のアナウンスに注目
レノボやデルのように、
- 「この日以降、見積価格が無効になる」
- 「12月中旬から値上げする可能性がある」
といった事前アナウンスを出すメーカーも出てきています。また、
- 「値上げ前の最後の大型セール」
と銘打ったキャンペーンも行われています。こうした情報をこまめにチェックし、
- 自分が狙っているメーカー・シリーズの動き
を意識しておくと、損をしにくくなります。
4. ストレージや周辺機器の買い替えも合わせて検討
PC本体だけでなく、
- 外付けHDD・SSD
- NAS
などのストレージ機器も、今後価格改定の影響を受ける可能性があります。特に、
- 写真・動画のバックアップ用途で容量がギリギリになっている
- 古いHDDを長く使っていて、そろそろ不安を感じている
といった方は、PC購入のタイミングに合わせてまとめて見直しをするのも一つの手です。
5. 「待てば下がる」は通用しにくい状況
これまでのPC市場では、
- 新モデルが出るたびに旧モデルが安くなる
- メモリやストレージの価格は、長期的には緩やかに下落する
という流れが一般的でした。しかし、2025年〜2026年にかけては、
- AIサーバー向けの需要が非常に強い
- メモリやストレージの供給が追いつきにくい
といった理由から、専門家の間では「短期的に価格が元通りになる可能性は高くない」との見方も出ています。
もちろん、市況が落ち着けば再び値下がりする局面も訪れますが、
- 「今すぐ必要なのに、安くなるまで待ち続ける」
というのは、あまり現実的ではない状況になりつつあります。必要なタイミングがはっきりしている場合は、
- 必要なときに確実に手に入ること
- 十分な性能・容量を確保できること
を重視して、購入判断をすることが大切です。
ユーザーにとっての「今後の付き合い方」
今回のパソコン値上げの動きは、単なる一時的なセール価格の変動とは違い、
- AIという新しい大きな需要が半導体メモリ市場を押し上げた結果
として起きているものです。そのため、
- 「高くなったから、買うのをあきらめる」
という二者択一ではなく、
- 自分の用途に合ったスペックを丁寧に見極める
- 値上げ前の情報やセールをうまく活用する
- 必要に応じて、メモリ・ストレージの増設や周辺機器の見直しも視野に入れる
といった賢い選び方が、これまで以上に重要になります。
「いつ買うべきか」「どのくらいのスペックが必要か」に正解はありませんが、
- 新生活や仕事でPCが必須な人は、早めの情報収集と準備
- ゲーミングやクリエイティブ用途の人は、メモリ容量とストレージ容量を優先した構成
を意識しておくと、今回の「メモリ高騰」局面でも、後悔の少ない選択がしやすくなるはずです。



